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15歳 1



「げっ!」
カカシの横で疾走していた暗部の隊長は面の下で顔を顰めた。
「このままじゃ、待ち合わせの時間に確実に遅れるじゃないか!」
「タイチョーの私用で出掛けに遅くなったんでしょ」
隣を走るカカシは冷たく言う。
「時間厳守の相手だって自分で言っていたのにさー、おまけに待ち合わせ場所遠いしー」
「メチャクチャにヤバイじゃないか!」
隊長は非常に慌てている。
「時間厳守絶対の相手なのに。遅れたらお仕置きじゃん、考えただけでも超怖いぜ・・・」
暗部の隊長にしては若いからなのか言葉遣いが砕けている。
「だから、アンタが悪いんでしょーが」
「こうなったら」
隊長がカカシの命令した。
「お前が先に行って相手に謝っていろ」
「はー?」
「隊長は、もうすぐ来ますからお怒りをお鎮めくださいって平身低頭謝っておけ」
「あのねえ」
「駆け足はお前の方が速いだろ。早く行け!」
「足の速さは同じだっつーの」
「いいから行けって!俺はお前がお仕置きされて相手の怒りが収まった頃に登場するから」
「アンタ、ほんとにタイチョー?」
はああ、と一つ大きな溜め息を吐いたカカシは、渋々と隊長命令に従った。
これでも暗部の中では新顔の方だ。
一応、真面目に仕事をしている。
「ちゃんと来てよー」
隊長に一言、言うがいなやカカシの姿は消えてしまう。
走るスピードを俄然、速める。
森の中を走るカカシの姿は誰の目にも留まることはなかった。



現在、暗部在籍中のカカシは15歳。
青春真っ盛りであったが当の本人は、そんなことさっぱり分かっていなかった。
何しろ、任務任務の激務の日々で貴重な青春の日々は消費されていっていたから。
そんな中での楽しみは最近、読み始めたいかがわしさ満載の本だった。
どんな内容の本なのかは公言できないが、本人は好んで読んでいるらしい。
「もー、困っちゃうねえ」
ぜんぜん困ってない口調でカカシは言う。
「全速力で走っても間に合うかどうか、ビミョーだなあ」
焦っているのに、のんびりとしている。
「五分くらいは遅れるかもねえ」
カカシが待ち合わせの場所として目指して走っているのは森の中の人気のない一角だ。
そこで情報の受け渡しが行われるのである。
情報を持ってくるのは長期で潜伏潜入し情報収集を行っている諜報活動中の木の葉の忍だ。
だが、隊長が言うには大変気難しい性質らしかった。
「あいつら、変わり者ばっかりだからな。頭の中身は俺たちとマジで別モンだ」
怒らせたら怖いぞ〜というのは隊長の言い分だ。
「まあ、それくらいでないと諜報なんてもんやってられないだろうがな」
いったい、どんな人物が来るのだろうか?
カカシは、ちょっとだけ興味が沸いていた。
今回は、その諜報をしている人物と会うのは初めてだった。
隊長が一人会うのは頑なに嫌だと言い張り、カカシと同行させたのだ。
「暗部が怖がる人間って、いったいどんなやつよ?」
会ってみたかった。
そして、その人物はカカシの期待を裏切らなかった。



「あー、六分くらい遅れた?」
指定された待ち合わせ場所に到着したのは、やはり待ち合わせの時間を過ぎてからであった。
待ち合わせの場所には誰もいない。
しん、と静まり返っている。
「あっれー、帰っちゃったとか?」
見回しても姿も見えなければ気配もない。
相手は本当に帰ってしまったのか。
帰ったとしたら情報の受け渡しが行えず、大変に困ったことになる。
それは相手も分かっているはずのだが・・・。
「気が短いのかな〜」
だったら俺も帰ろうかなあ、などとカカシが呟いたときだった。
ヒュッ。
何かが面に向かって攻撃を仕掛けてきていた。
反射的に避け、それを掴む。
「足?」
どこから現れたのか靴を履いた人間の足だった。
足を掴まれるのを予測していたのか、足の持ち主はカカシに足を掴まれたまま、空中からクナイを投げてくる。
「わっ!なんだ、こいつ!」
紙一重でカカシは避けた。
相手は掴まれた足を軸に体を揺らし反動を利用して自由になっていた片方の足でカカシの腕を蹴り上げ、力が弱まった一瞬の隙をついて拘束からか抜け出してしまった。
「誰だ」
さすがに頭にきたカカシが武器を手にし身構える。
相手は何も言わない。
目深に被ったキャップのツバが邪魔で顔は見えなかった。
男のくせに髪は肩より長い。
つやつやと光る黒髪が目を惹きつけた。
白い半そでのティシャツに煤けた色のズボンを履いて一般人に装いをしている。
季節は五月始め、初夏といえなくもないが寒くないのか?とカカシは思ったのだが、その思考は瞬時に途切れた。
いつの間にか、相手の手には鞘から抜いていない長刀が持たれていた。
ふざけた真似をしてくれる。
カカシは面の下で、にやりとした。
「殺しちゃってもいい?」
確認ではない宣言だ。
本気のスピードでカカシは相手に向かっていく。
相手は口元は薄っすらと笑っていたようだった。



結果だけ言えば、カカシは見も知らぬ相手にコテンパに熨された。
これ以上の負けはないくらい見事に敗北を帰した。
カカシの攻撃を総て避け、攻撃を仕掛けてきたのだが、それを避けることは難しかった。
相手は刀を鞘から出さなかったのが悔しい。
息切れしているカカシを前に相手の呼吸は平常だ。
「ア、アンタ・・・」
草むらに寝転がって相手を見上げた。
「アンタ、何者?」
そこで相手は、やっと言葉を発した。
「暗部なのに弱くないか?」
「なにいっ!」
いきり立ったカカシが半身を起こしたところで隊長の声がした。
「いやあ、遅れてすみません」
面をしたまま、頭を下げている。
「こいつを連絡係りとして先に行かせたんですが間に合わなかったようで」
妙に下手に出ていた。
「五分四十四秒ほど送れた」
「そりゃあ、申し訳なかったですね」
「ほんとにね」
「こいつの足がもう少し速ければねえ」
何だかカカシが悪いようなことになっている。
「ちょっと!悪いのは俺じゃなくてアンタだろ!」
カカシは隊長を指差して主張したが華麗に無視される。
「で、いつものやつなんだけど」
「ああ、はい」
相手は薄着のどこかからか、巻物を二本出してきて隊長に渡している。
さっき持っていた長刀は見えなくなっていた。
薄着のどこに仕舞ったのだろうか?
そして隊長と相手は二言三言口頭で何かを伝え合っていた。
カカシをコテンパに熨した相手こそが諜報を担当している忍だったのだ。
「了解、伝えておく」
「・・・よろしく」
カカシを取り残して二人は会話をしているのがカカシは気にいらない。
悔し紛れにカカシは訊いた。
「アンタ、何て名乗っているのさ」
ようやく立ち上がったカカシは相手の傍まで行くと、わずかに相手の方が背が高いことが分かった。
少しばかり見上げる形になるのが、これまた気に入らない。
相手は戸惑ったようだった。
本名は名乗れないのは分かっている。
せめて任務で使われている通称名だけでも知りたかった。
詰め寄ると相手は少しだけ怯んだ。
さきほどコテンパにされたお返しとカカシは間合いを詰めていく。
「名乗るくらいできるでしょ。仲間なんだから教えてよ」
「・・・・・・コジカ」
「へ?コジカって小鹿?」
「あー、違う違う。小鹿じゃなくて子供の方の鹿ね」
横で聞いていた隊長が口を出してきた。
つまり『仔鹿』なのだろう。
仔鹿ちゃん、なんて呼んでガスッと仔鹿に蹴られている。
照れているのか、意外に可愛い一面もあるのかもしれない。
そう思って見ると『仔鹿』はカカシより少し背は高いが全体的に細身で雰囲気が幼い気がした。
年下のかもしれない。
顔は?と視線を向けたところでキャップを深くされてしまい、顔を見ることができなかった。
「また三ヵ月後に」
慌てたように、それだけ言い残すと仔鹿は去っていった。



「なーに、あいつ」
仔鹿を見送ったカカシが面の下で目を細めた。
「すっごい強いくせに何か変」
「まー、潜入諜報のやつらなんてそんな感じだなあ、極めて独特だから」
隊長は、のほほんとした答えた。
「しっかし、えらくやられていたなあ」
面白そうにカカシを見る。
「俺が現れたら地面に転がっていたもんなあ」
「ほっといてよ、これでも落ち込んでいるんだから」
仔鹿が強かったのは真実ではある。
「いやあ、分かる分かる」
隊長が慰めるようにカカシの肩を叩いた。
「俺も最初の頃に別のヤツにやられたことがあるからな」
「えっ、タイチョーも」
「まあなあ、あいつらさ、戦闘のときは相手の出方を百通り考えてを攻撃を百くらい先まで平気で読むからな。あるヤツに聞いた話じゃ頭の中に、ぱぱっと映像となって出るらしい」
「へー」
「潜入でも言葉一つから、ありとあらゆることを予測して頭が高速回転するんだと。だから、お前の攻撃も総て読まれていたんだろ」
「それでも、あそこまでやるのはヒドクない?」
「そうだな、俺たちを態のいい実験台にしている可能性はあるかもな、ほら俺たち、べらぼうに強いし」
ちょっと自慢げに言って、暗部の隊長は腕組みする。
「ま、自分の悪い部分を見直すいい機会だと思えばいいんでない?」
弱さを自覚させられたんだからさ、と事も無げに言う。
「暗部なんて、ただでさえ命張っているんだから。死なないためにも弱さを克服しろっていう忠告と思えばいいんじゃないの」
そんなもんかな・・・。
カカシは納得しかけたが。
「仔鹿に限っては遊ばれて感が否めないがなあ」
「遊び・・・」
「さてと、帰るか」
三ヵ月後に仔鹿には、また会える。
そのときまでに今よりも強くなっていよう。
密かにカカシは決意した。
仔鹿め、見ていろ!と。



15歳 2

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