十年後 1
中忍試験に合格して初めての戦地だった。
戦地だけど。
俺は中忍に成り立ての下っ端だから、パシリを含む雑用が主な仕事だ。
戦地に来て日が浅い俺は、今、水を汲みに水場に来ていた。
両腕に持ったバケツに水を汲む。
バケツを水につけた時に、どんと後ろから誰かが背中に乗っかってきた。
重い!
「わっ。」
危うく水に落ちそうになったところで、乗っかってきた誰かが後ろから俺を支えてくれる。
だったら、最初から乗っかるんじゃないっての。
ちょっと怒って振り返ると、いつもの奴がいた。
銀色の髪に顔を半分隠した忍。
若くて、顔の造作が綺麗で、俺より年下みたいに見える。
こいつは俺が戦地に来てから、何かとくっ付いてきて邪魔をしていた。
妙に懐かれているといった感じかな。
最初の出会いがアレだったからなあ。
最初に会った時、元気がなかったからさ、景気をつけるつもりで背中をバンバン叩いて「飯食って元気出せ。」と言ったら。
その後。
ずっと俺にくっ付いている。
こいつが俺にくっ付いてきても、他の上忍の方達は何も言わないし。
幼いから大目に見てる、のかな?
となると、まだ中忍?
俺より先に戦地に来ていたけど、もしかして中忍になったばっかとかで不安なのかな?
俺と同じで。
だから、年の近そうな俺にくっ付いてくるんだろうか。
だから「くっつくな。」とか怒ってやろうと思ったけど。
いつも先に、にこりと笑われて。
俺はその先を言えなくなってしまう。
悪気がないのが一番悪いんじゃなかろうか。
俺は怒るのを諦めて、バケツに水を汲み直した。
すると水の入ったバケツを一個持ってくれた。
「ありがと。」
礼を言えば、またもや、にこりとされる。
可愛い笑顔だ。
可愛い笑顔だけど。
こいつって男、だよね?
確認してみたいけど、失礼なような気もするし。
それくらい分からないのかと馬鹿にされそうだし。
なにより、こいつは口数少ないし。
色々詮索するのはいけない、よね。
そう考えると聞かなくてもいいかと云う気持ちになった。
俺が水を汲んで野営地に戻ると、ぎょっとしたように他の上忍が俺を見た。
いや、俺じゃなくて隣にいる、もう一人の方。
「カ、カカシ。水汲みに行っていたのか。」
それから俺の方を見る。
「大丈夫か、海野。」
大丈夫って、水汲みに行っただけなんで。
「はい。」と返事をすると、その上忍はほっとしたように頷いて。
「なら、いい。じゃ、じゃあ、俺はあっちに行ってるからな。」
どことなく怯えた風で離れていった。
「どうしたのかな?」
後ろを振り向くとカカシに、にこりと返された。
「ま、気にしなくていいか。」
相手は上忍、用事があるなら遠慮なく言ってくるだろうしね。
そうそう。
それから、カカシってのが、こいつの名前だ。
名字は知らない。
だから俺は「カカシ。」って呼び捨てにしている。
だって年下みたいだしねえ。
カカシも俺のこと「イルカ。」って呼び捨てだし。
まるで仲がいいみたいに。
戦地でのほんの少しの間だから。
そう呼んでもいいよね。
十年後 2
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