ずっと一緒
「イルカ先生。」
受付けに行く途中で紅先生に呼び止められた。
紅先生は上忍のくの一で現在、下忍の指導をしておられる。
「なんでしょうか?」
立ち止まると紅先生から「これ。」と小さめの缶を渡される。
小さめの缶は白地に細かい花の模様が描かれてあって大変に可愛らしい。
「これは?」
・・・どうしろというのだろうか。
可愛らしい缶は男の俺が持つに全く相応しくない。
紅先生は、さらりと言った。
「カカシに渡しておいてほしいの。」
「カカシさんに・・・。」
なんでもない場面で脈絡なく、突如、恋人の名を聞いたり口に出すのは不意打ちの攻撃を受けたような感覚に陥ってしまう。
要するに動揺してしまうのだ。
俺は手の平の可愛い缶を見詰めた。
不覚にも顔は、きっと熱を帯びて、ほんのり赤くなっているだろう。
紅先生は、そんな俺を見て「ふふふふ。」と意味深に笑う。
まるで面白がっているみたいだ。
「それね。」と俺の手の平の缶を指差す。
「紅茶よ。」
「紅茶?」
「そう。この前、任務で紅茶の名産地に赴いた時に女の子たちに頼まれて買ってきたの。」
女の子ってヒナタやサクラやいののことかな?
みんな、俺の元教え子だけど。
紅先生は俺の顔色を読んだように「そうよ。」と答えた。
「ヒナタたちに頼まれたの。だって、その紅茶ね。」
紅茶が、どうしたというんだろうか。
「美容効果の他に、アロマ効果でリラックスもできるんですって。」
「へええ。」
「それにね。」
紅先生は悪戯っぽく笑う。
「その紅茶は片思いをしている人と飲むと両思いになり結ばれて、恋人のいる人は恋人と飲むと一生傍にいられるっていう噂があるのよ。」
「へ、へええ。」
女の子たちの間では、すごいものが流行っているんだなあ。
ってか、流行に敏感なのか。
「女の子たちが私にそれを買ってくれるように頼みに来た時、何故かカカシが混じっていたのが面白かったわ。」
それも違和感なくね、と付け足した。
「じゃ、よろしくね。イルカ先生。」
最後に、にっこり美しく笑うと紅先生は俺を見て、とどめの一言を言った。
「イルカ先生、顔、真っ赤よ。」
そうして紅先生は去って行った。
誰にも言ってないけど。
紅先生、カカシさんと俺の関係、絶対に知っていると思う。
それを敢えて表面に出さないことで色々と楽しんでいるような・・・。
とりあえず俺は、ほっと息を吐くを手の平の紅茶の缶を見詰めた。
紅茶の缶は、ただただ可愛らしい。
「こんなの飲まなくても俺なら、ずっと一生、傍にいるのなあ。」
カカシさんの傍に。
そんな言葉が、思わず俺の口から漏れた。
自分の言葉に、かっと全身が熱くなる。
なんてこと言うんだ、俺。
いや、カカシさんのことは大好きだけどね、でも口に出すなんて。
余りの恥ずかしさに廊下のど真ん中、心の中で身悶えしてしまった。
受付けに向かって俺は、すごい勢いで歩き始めた。
もちろん、紅茶の缶を大事に持って。
今夜、これをカカシさんと二人で仲良く飲んだりするんだろうな。
その時、さっき言った言葉をカカシさんに言ってみようかな、どんな反応するんだろう。
なんて顔して、どんなこと言うかな・・・。
何故か胸がドキドキしてくる。
そんなことを考えて俺の中の熱は暫く、収まりそうになかったのだった。
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