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雪の夜



その夜。 もう二月だというのに木の葉の里は大雪に見舞われていた。
外は風が強く雪が舞っている。
カーテンの隙間から外の様子を見たイルカは寒そうに、ぶるっと震えた。
「猛吹雪ですよ、視界が真っ白で何も見えません」
「相当、積もりますねえ」
心なしか部屋も室温が低いような気がする。
カカシとイルカの二人は熱い風呂にも入り、寝るだけになっていた。
「イルカ先生、もう寝ましょうよ」
部屋の明かりを消したカカシがベッドに潜り込む。
ベッドの脇の電気スタンドの明かりを点けた。
「寒いから抱き合って寝ないとね」
まだカーテンの隙間から外を見ているイルカの手を引っ張った。
イルカは苦笑しながらも大人しくカカシに従い、ベッドに滑り込んできた。
そのイルカの体をカカシは抱きこむ。
「イルカ先生、体が冷たくなっている」
「気のせいですよ」
「いいええ、本当ですって」
カカシはイルカを強く抱きこんだ。
「俺があっためてあげますからね」
「何を言っているんですか」と言いつつ、イルカもカカシの体に腕を回す。
ちょうど抱き合う形になった。
「もう寝ましょうか」
カカシは電気スタンドのスイッチを切った。



その時である。
風の音に混じって窓を叩く音がした。
コンコン。
「ん?」
ベッドに入ったばっかりのイルカがベッドから抜け出す。
「なんだろ」
カーテンを開くと吹雪きに塗れて式がひらひらと飛んでいるのが見えた。
薄く窓を開くと雪と共に式が部屋に舞い込んできた。
「もしかして任務ですか?」
カカシが嫌そうな顔をする。
このような式での呼び出しは大抵任務で、大抵カカシ宛てであった。
「いえ、カカシさん宛てではないですよ」
式に目を通したイルカが言う。
「任務は任務ですけど俺宛てです」
「えっ、イルカ先生に!」
こんな吹雪の晩にイルカが任務とは・・・。
カカシは気が重くなった。
もう寝ようと思っていたのに、暖かいベッドの中で。
眉を顰めた。
どうせなら自分が任務の方が良かったのに。
「で、何の任務ですか?」
カカシが聞くとイルカは、あっさり答えた。
「ああ、簡単に言うと雪かきです」
「雪?」
「ええ、除雪と排雪ってやつですね」
積もった雪を取り除いて、他の場所へ移す作業だ。
「これから?」
「あ、はい」
既にイルカは寝間着を脱いで忍服、防寒着に着替え始めている。
「外は寒いのに」
カカシが愚痴っぽく言うとイルカが笑った。
「そうですね、雪が降っているので寒いでしょうね」
「降っているって言うよりも吹雪いて遭難しそうな勢いですよ」
「大丈夫ですよ、里で遭難はしません」
イルカはマフラーをして手袋をし、頭に帽子を被った。
「じゃ、行って来まーす」
意外にも嫌そうではなかった。
「イルカ先生、寒いのに行くの嫌じゃないの?」
「任務ですから」
しかし、声は弾んでいる。
「楽しそうだけど」
カカシが指摘するとイルカは「ばれちゃいました?」と、はにかんだ。
「雪って、わくわくするんですよね」
任務ですけど任務じゃないみたいで、と。
「あ、これじゃ駄目ですね。しっかり任務に励んできます」
それじゃあ、とイルカは行ってしまった。
吹雪の中へ。
カカシは残念な気分になる。
イルカと寝るのが出来なかったことと、なんだか雪に負けたみたいで。
それに。
「どーして上忍の俺には雪かきの任務が来ないんだ?」
雪かきの任務は中忍のイルカだけ。
理由はあるのかもしれないけれど。
「平等に扱ってくれてもいいのになあ」
ぶつくさ言いながらイルカの温もりが残るベッドへ戻る。
「イルカ先生、早く帰ってこないかなあ」
イルカのことを思いながら眠りに就いた。



目が覚めたのは朝で。
イルカは、まだ帰ってきていない。
外を見ると吹雪は止み、太陽が出ていた。
白い雪が反射して眩しい。
「イルカ先生・・・」
部屋が広く寒く感じられた。
カカシは部屋を温めて、ついでに風呂も沸かした。
イルカが帰ってきたら、すぐに体を温められるようにとの配慮だ。
朝食の支度もしてみる。
あったかいものを用意した。
部屋中があたたかい空気と空腹を刺激するようないい匂いに包まれる。
「イルカ先生、早く帰ってこないかな」
カカシは、そわそわとしてしまう。
時計を見て、玄関を見てを繰り返している。
「もしかして帰ってこないのかな?今日は普通に出勤だから一度、家に帰ってくるだろうと思うんだけど」
一晩、帰ってこないイルカは徹夜明けで仕事になるのだろう。
急な任務が入ったからといって通常の仕事が休みにはならない。
徹夜して疲れていても仕事は待ってくれない。
「あー、もう」
カカシはイライラとしていた。
「なーんで中忍だけ呼び出すかな?上忍も使えばいいのに」
全く持って、その通りであったのだが。



その時、玄関に人の気配がした。
冷気と共に入ってきた人物はイルカであった。
「ただいま!」
寒いところにいた所為か頬が紅潮している。
「あ、カカシさん。起きていたんですか?」
今日は早いですね、と言いながらイルカは防寒靴を脱ぎ捨てた。
部屋に入り、暖かい空気に触れると笑顔になる。
「わー、あったかいなあ。ほっとしますね」
手袋、帽子、防寒着を脱いでいく。
着膨れしてたイルカは細くなっていった。
「お帰りなさい、イルカ先生」
カカシはイルカを抱きしめた。
外から帰ってきたばかりの体は冷たい。
頬と頬を合わせると芯から冷えたような冷たさが伝わってきた。
「わ!くすぐったい」
イルカは身を捩らせる。
「あんまり、引っ付くとカカシさんが冷たくなっちゃいますよ」
「引っ付いていたいんです」
ひし、とカカシはイルカを抱きしめる。
「イルカ先生がいなくて寂しくて」
抱きしめたまま、イルカの顔を見つめた。
「寒い中、お疲れさまでした。吹雪いて大変だったでしょ?」
「いやー、そうでも」
イルカは首を横に振る。
「吹雪も明け方近くには止んだので大丈夫でしたよ」
それよりカカシさん、ちゃんと寝てないのでは?と逆に心配されてしまった。
「一応、寝ましたよ」
「なら、いいんですけど」
顔を見合わせた二人は引き合うように唇を重ねた。
「イルカ先生の唇、冷たいですね」
「カカシさんのはあったかいです」
二人して微笑んだ。



「あ、そうだ!お風呂、沸かしてあるから入ってください。あったまりますよ」
「わー、嬉しいです」
「朝ご飯も作っておきましたから」
「お腹、ぺこぺこです」
「今日も仕事なんでしょ?」
「はい。そうですね」
じゃ、風呂行って来まーすと徹夜明けなのにイルカは妙に元気であった。
程なくして風呂から上がったイルカは体から、ほかほかと湯気を上らせていた。
「はー、気持ちよかった!」
次にカカシが用意した朝ご飯を、これまた嬉しそうに食べる。
「すっごく美味いです!」
お代わりまでしていた。
元気溌剌といった様子のイルカにカカシは首を傾げる。
「イルカ先生、徹夜で作業して疲れてないの?これから、また仕事なのに」
「え、ああ。疲れてますけどね、雪かきを皆でやって寒くて冷たかったんですけど何か楽しくて」
「へー」
「任務で楽しいってのも、ちょっと不真面目ですね。いつも、やらない任務を皆でやったのと雪って個人的にわくわくしてしまう要素満載なんですよね」
確かに雪かきと言うのは冬しかしない。
雪も冬しか降らない。
「五代目も怪力生かして雪かきを、ものすごく頑張ってらっしゃいましたよ。他の上忍の方も手伝ってくださって・・・」
そこまで聞いたカカシは、くわっと目を見開いた。
びっくりして。
「ええっ!火影さまも上忍も来ていたの?」
五代目とは里の長、火影のことだ。
「え?ええ、降った雪がすごいから積もった雪の量も多いだろうって自主的に雪かきに参加してくださったんです」
「・・・そうだったの」
どーんと意気消沈してしまったカカシだ。
呼ばれなくてもイルカと共に任務に行けばよかったと心底、後悔してしまった。
「俺も行けばよかったなあ」
ぽつり、と漏らしてしまった言葉にイルカは苦笑する。
「いいんですよ、召集が掛かっていなかったんですから」
そんなに落ち込まないでください、とイルカに頭を撫でられて慰められた。
「でも、なあ」
「いいじゃないですか」
カカシの作ってくれた朝食を平らげながらイルカは、ほくほくした顔になった。
「俺はカカシさんが家にいてくれたお陰で、あったかい風呂と飯にあり付けたのでカカシさんに感謝感謝ですよ」
「イルカ先生にそう言われるなら。ま、いいんですけど」
柄にもなく照れたカカシは頭を、がしがしと掻く。
「今日は俺は通常の仕事ですけど手の空いている人、みんな雪かきに借り出されますよ」
五代目も張り切っていましたから。
「あの人も元気ですねえ」
カカシが呆れたように言うとイルカが笑った。



その日の夕方。
里の中の雪かきも一段落し、徹夜の疲れが出てくる者が続出した。
イルカも漏れなく、その中に入っていた。
眠そうなイルカを連れて帰ってきたカカシは、その夜は早々にベッドに入り、しっかりとイルカを抱きしめて眠ったのだった。




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