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若さゆえ 2



里に帰ってきた俺は、やれやれと肩の力を抜いた。
後ろからついて来た部下を振り返り「茶でも飲んで、一息ついていかないか?」と誘う。
長期任務をこなして帰ってきたんだ。
報告書を出さないければいけないのは分かっているが、ちょっとぐらいいいだろう。
若い部下の男は「いいっすね。」とニヤッと笑った。



里の大門近くにあった茶屋に入った。
抹茶を注文する。
外にある椅子に座って飲んだ。
「隊長、、抹茶なんて渋いですね。」
部下が俺の飲んでいる抹茶を珍しそうに見ている。
「ん?美味いぞ。」
一口飲むかと差し出すと首を振る。
「いや〜。俺、こっちのがいいっす。」
緑色の炭酸水にアイスが浮かんでいる。
別々に口に入れた方がが美味いと思うが、若い部下は美味そうに食べていた。
まあ、あれだ、世代の違いってやつだな。
この前「おじさん。」言われたばかりだし。
俺も年を取ったに違いない。
年相応の生き方ってのがあるから、仕方がないよな。
でも「おじさん。」てのは結構パンチが効いたぞ。
かなりショックだった。
「カカシのやつめ。」
思い出して言葉が出てしまった。
「え?」
部下が驚いて俺を見る。
「カカシがどうかしましたか?」
「いや、その。この前の任務で一緒になったんでな。」
「ああ、そういえばいましたね。」
部下は訳知り顔で言う。
そういや、こいつも任務が一緒だったっけ。
「いっつも、イルカと一緒で仲良かったですよね〜。」
部下の発言を聞いた俺は抹茶を噴きそうになった。
ちょ、ちょっと待て。
「何だって?カカシがイルカと仲が良かったって?」
「ええ。だって、いつも一緒にいて、じゃれあっていたじゃないですか。」
「じゃ、じゃれあう?喧嘩してたじゃないか?」
「ええ〜。やだな〜隊長。あいつら恋人同士だし、喧嘩なわけないじゃないですか。」
「恋人って・・・。」
「あんなに仲がいんじゃ気づきますって。」
部下がすらすらと語る事実に俺はクラクラとしてきた。
何だって!
皆知っていたのか、二人が恋人同士だってことを!
「見てれば分かりますって。」
俺は分からなかったよ、全然。
そんなこと考えもしなかった。
これが俺が「おじさん。」と呼ばれる由縁なのか。
どっと落ち込んだ。
「隊長、どうかしましたか?」
「いや、何でもない。」
力なく手を振って、気にするなと示した。






「だーかーらー、外出時は帽子を被るように、あれほど言ったでしょうか。」
「何だよ、たまたま忘れただけじゃんか。そんなにガミガミ言うなよ。」
「言うよ。日射しが強くなってきてるのに、それ以上頭が馬鹿になったらどうするのさ。」
「馬鹿じゃないもん。頭悪くないもん。」
「もー。今年の夏用にって帽子五つも買ってあげたのに。被ったところが見たかったのに。」
どこからか、聞き覚えのある声とやり取りが聞こえてきた。
嫌な予感がする。
もしかして、あいつらか。
知らないふりしよう、そうしよう。
あいつらに関わるとろくな事にならないからな。
これ以上ダメージは食らいたくない。
なのに、災いは歩いてやってきた。
「あー、隊長だ。」
俺に気づいたイルカが駆け寄ってきた。
イルカが来ると、当然カカシもついて来る。
「こんにちは。お久しぶりです。」
イルカは礼儀正しく頭を下げて挨拶した。
「こんちは。」
カカシは不機嫌丸出しで頭も下げない。
「行こう、イルカ。」
俺の前から一刻も早く立ち去りたいらしく、イルカの手を引っ張っている。
「もー。ちょっとくらい、話したっていいだろ。」
イルカがカカシの手を振り払った。
振り払われたが気に障ったのか、カカシに火がついたらしい。
「よくないよ。俺の言うことが聞けないの?」
「聞けないよ。」
つんとイルカがそっぽを向く。
カカシは、むかっとしたのだろう。
イルカの腕を掴むと力任せに自分の方に引き寄せた。
「そんなの許さない。絶対認めないからね。」
「ちょっとカカシ。痛いって。やめろよ、離せって。」
イルカが暴れてもカカシの手は外れない。
なんだ、この展開は。
痴話喧嘩?
此処は店の真ん前で、道の真ん中なんだけど。
少しは人目をきにするとかしないのか。
ついていけない展開だ。
でも、だから俺はおじさんなのか。



だが、とりあえず仲裁しないといけないよな、大人として。
俺が声をかけようとしたとき、カカシがぼそっと言った。
「ほら、もうちょっと行った先の店でソフトクリーム買ってあげるから。」
ぴたりとイルカの動きが止まる。
「ほんと?」
目が輝いている。
「うん。」
「やった!」
さっきの騒ぎもどこへやら、にこにこしている。
「早く行こう、カカシ。」
逆に自分からカカシの手を引っ張っている。
「はいはい。」
「じゃあ、失礼します。」
イルカがぴょんと頭を下げた。
そして、続けて出た言葉に俺は固まった。
所謂フリーズってやつだ。



「お父さん。」



お父さん!
イルカは確かにそう言った。
お父さん・・・・・・て?
カカシは肘でイルカを突っついて「言ったら駄目じゃん。」と注意している。
「隊長の愛称は秘密でしょ。」
「やべ。」
イルカは舌を出してもう一度ぴょんと頭を下げた。
「ごめんなさい。隊長。」
そのまま、だーっと走って少し離れた所から
「カカシー、先に店に行ってるからな。」
と叫んできた。
カカシは手を振って了解の合図をすると、俺の方を見る。
なんか睨んでいるような気がするけど、気のせいか?
「気のせいじゃないよ。」
カカシはゆっくりと挑戦的に言葉を投げつけてきた。
「隊長が、イルカにお父さんて呼ばれるなんて、認めない。」
認めないって、さっき「お父さん」は愛称って言っていただろうが。
「俺はイルカの恋人だけど。でも、イルカの父であり母であり兄であり弟であり姉であり妹であり・・・。」
「ストップ。」
長くなってきたので俺は止めた。
「結局何なんだ?」
「俺はイルカの総てになりたいの。イルカのために、地球上に存在する総てのものになりたいの。」
・・・あ、そー。
「だから、隊長。」
カカシがぴしりと俺を指差した。
「ある意味、隊長はライバルだから。」
それだけ言うとカカシはイルカを追いかけて行ってしまった。






お父さんになったり、ライバルになったり。
俺って忙しいな。
少し涙目になりながら抹茶を飲み干すと、一部始終を見ていた部下が一言。
「大変っすね。」と言った。
ああ、大変だよ。
すっごい大変だよ。
もう俺は若くないんだ。
あいつらみたいに若さだけでは突っ走れないさ。
俺も若さがほしい。
見かねた部下が慰めてくれた。
「隊長、まだ二十五じゃないですか。充分若いっすよ。」


ちょっと慰められた。



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