うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子
番外篇 光る俺のセンス
ある日。
任務と修行とでイルカが疲れて家に帰ると、にこにこと笑うカカシが待っていた。
ちょっと・・・。
ちょっとだけイルカは嫌な予感がした。
「お帰り、イルカ。」
にこやかに出迎えてくれるカカシにイルカは「ただいま。」と返す。
そして顔と手を洗い、部屋に戻るとカカシが、やはり、にこにこしながら手に持っていた何かをイルカに差し出した。
何か、コップに入った何か、だ。
「これ・・・は?」
やっぱり嫌な予感がしてイルカは恐る恐る訊く。
今までの経験からして、これはアレに違いない。
「俺の手作りジュースだよ。」
カカシは、あっさりと答えた。
「元気が出るジュースです。」
イルカの予感は、ずばり的中した。
「げ、元気の出る・・・。」
いったい、何が入っているのだろう。
カカシは何の食材、このジュースを作ったのだろうか?
いや、そもそも食べれる物で作ったのか・・・。
ジュースの色は複雑怪奇で、なんとも形容しがたい色彩である。
色からでは、材料に何が使われたのか全く判断できなかった。
「ほら。イルカ、最近、疲れて帰ってくること多いでしょう。だから・・・。」
カカシはイルカのために作ってくれたらしい。
「スタミナがつくように配合したスタミナジュースだよ。」と笑顔で言う。
「今度は野菜より果物の比率を多くしたから、今までのより飲みやすいよ。」
イルカの体を思い遣って作ってくれたことには間違いないらしい。
「ど、どうもありがとうございます・・・。」
イルカは意を決してコップを受け取った。
今まではカカシがジュースを作ってくれても、ジュースが不気味で何かと理由をつけ断っていたのだが、何回も断るのは失礼だろう。
なによりもカカシはイルカのことを想って作ってくれているのだ。
一度くらい飲まないと・・・。
ジュースの入ったコップを前にしてイルカは、ごくりと唾を飲む。
手に持ったコップから、そこはかとなく刺激臭的なものが漂ってきている。
イルカはコップに口を付けた。
飲んでも死なない飲んでも死なない、と自分に言い聞かせながら・・・。
一口だけ、ジュースを口に含んだイルカは、その味に硬直した。
直立不動になる。
今までの人生経験の中で経験したことのない味だった。
飲みこめない・・・。
イルカは思ったのだが目の前のカカシは、ジュースを口に含んだイルカを嬉しそうに見ている。
カ、カカシさん、あんなに嬉しそうにしている・・・。
口の中のジュース、飲まないと・・・。
この口の中に入っているジュースを飲み干すことは過酷で厳しい修行のようだ。
目を、ぎゅっと閉じたイルカは心頭滅却した。
これを飲んでも俺は生きている、大丈夫だから飲むんだ、俺・・・。
・・・でないと、この苦しみは永遠に続くんだ。
まさに死ぬ気でイルカは口の中にあった液体を飲み込んだ。
一口飲んだイルカを見てカカシが嬉しげに訊いてきた。
「どう?美味しい?」
「・・・う、うん。美味しい・・・よ。」
頑張って、そう答えたイルカは、まだ残っていたジュースをコップごとカカシに返した。
「も、もう、すっごく元気でから大丈夫!俺、ご飯食べたい!」
そう主張した。
「うん、分かった。」
カカシはイルカの言っていることを特に疑わず「ご飯にしようね。」とイルカの頭を撫でた。
そしてイルカから返されたコップの中味を、いともたやすく、こくっと飲み干してしまった。
「カカシさん・・・。」
「ん、なに?」
「そのジュースって何が入っているの?」
「えーとねえ。」
カカシが思い出すように指を折る。
「韮でしょ、大蒜でしょ、生姜でしょ・・・。」
すごいものがジュースに入っていた。
確かにスタミナはつくかもしれない。
「あと臭い消しにレモンとライム、それに林檎とパイナップルとオレンジ。」
イルカが刺激臭的と感じたものは韮やら大蒜だったらしい。
そしてイルカは以前から、不思議に思っていたことをカカシに訊いてみた。
「カカシさんて、野菜や果物に好き嫌いないの?」
「ないよ。」
カカシは爽やかな顔で言う。
「だって任務に行くと調理する時間がなくて生で野菜を食べることもあるし、好き嫌いなんて言っていられないよ。」
すごく大人な発言をした。
「そうなんだ〜。」
イルカは尊敬の眼差しでカカシを見つめる。
自分は、まだまだ修行が足りないと思い直した。
「すごいね、カカシさん!」
「それほどでもないけどね。」
イルカにウインクしたカカシは「さ、ご飯ご飯。」とイルカを食卓に誘った。
イルカは・・・。
いつか、カカシさんの手作りジュースを飲めるようになるぞ、と心に密かに誓っていたのだった。
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