うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子
番外篇 俺の愛読書
カカシが風呂から上がった時。
イルカがテーブルにあった、ある物を見つめていた。
ある物とは。
カカシの愛読書の本だ。
因みに十八禁で、十八歳以下は読むことができない。
その本の裏表紙を表にしてカカシはテーブルの上に置いていたのだ。
数字で書かれた十八には禁止を意味するマークが上から書かれている。
いつもはイルカの目の届かない場所に本を保管してあるのだが、その日に限って忘れてしまっていた。
それをイルカは、じっと見ている。
現在のイルカの年齢は十六歳、勿論、その本を読むことはできない。
カカシは十八歳の年齢に達し、二十歳になっていたので読むことが出来る。
もしや、俺が風呂に入っている間に読んだとか・・・。
テーブルの上の本は、子供が読む内容ではないことは明白だ。
もし、読んでいたら。
風呂上りのカカシの額に冷や汗が浮かぶ。
多分、十八禁の意味は分かっていると思うけど。
十八禁のホラービデオを所持しているイルカだ、意味も理解しているはずだ。
でも。
十八禁の意味が根本的に違うような気がする・・・。
カカシの愛読書とイルカのホラービデオの十八禁では内容も差異があると思うし。
その時、イルカが振り向いた。
「あ、カカシさん。」
先に風呂に入って上がっていたイルカの髪は、まだ濡れている。
「お風呂、上がったの?さっぱりした?」
無邪気に微笑んでいる。
「あ、うん。さっぱりしたよ〜。」
何事もないように振舞ってカカシは、テーブルの上の本に近寄り、さり気なく本と手に取った。
このまま、仕舞ってしまえば大丈夫・・・。
幸い、イルカは中味を見ていないようだし。
カカシが、ほっと安堵した時、やはり無邪気なイルカの声がした。
「ねえ、カカシさん。」
「なに。」
「その本。」
イルカはカカシが手に持っていた本を指差した。
「十八禁なの?」
そう訊いてきた。
「・・・そうだけど。」
イルカに見られないように、本を背に隠しながらカカシは答える。
「それが何か?」
動揺してしまったら負けだ。
何でもないことのように極めて普通にカカシは言った。
「十八歳にならないと読めない本だけど、何か?」
「ふーん、そうなんだ〜。」
興味深そうな目をイルカはしている。
「カカシさん、その本、読んでいるんだよね?」
「ま、まあね。」
「面白い?」
ずばっとイルカは訊いていた。
「いっつも肌身離さず、暇さえあれば読んでいて、同じ本を繰り返し繰り返し何回も読んでいるよねえ。」
「う、うん。」
「すっごく面白いからでしょ?」
面白いから読んでいるのは当たっている。
だが、しかし。
この本の内容をイルカが知れば・・・。
知ったら、どうなるかな〜。
それを想像してカカシの顔は軽く引き攣った。
この本の内容的なことをイルカは余り興味ないように思える。
今日だって買い物行ったら、新発売の菓子やらジュースやらに目がいっていたし。
男の子なんだから、多少はこういうこと・・・。
知っていてもいいんじゃないか、とカカシは思ったのだが途中で、その考えを打ち消した。
十六歳って思春期、真っ只中の人生で一番、不安定なお年頃。
不用意に話して嫌悪感でも持たれて、もしも嫌われたら嫌だ。
イルカに嫌われたくない!
そっちの思いが先にきた。
「どこが面白いの?」
重ねてイルカは訊いてきた。
その瞳は好奇心いっぱいだ。
無垢な瞳は語っていた。
知りたい、教えてほしい、と。
「え、えっとね。」
その瞳に押されてカカシは、とてもではないが真実を告げることは憚られた。
いずれはイルカも知ることかもしれないが、今、告げる必要はないと思う。
カカシは苦肉の策に出た。
それは・・・。
「ひ、み、つ。」
一言、言うと目にも止まらぬ早業で本を、あっという間に隠してしまった。
暗部ならではの早業及び、思いもよらぬ隠し場所でイルカには見つけることができないであろう。
あとはカカシが話さなければいいだけだ。
そしてイルカの気を逸らせばいい。
それは、とても簡単なことだ。
「ね〜え、イルカ。」
「はい?」
「今日、買ってきた新発売のアイスでも食べようか。」
すると立ち所にイルカの目は輝きだす。
「食べる!」
すぐさま、返事が返ってきた。
「はい、どうぞ。」
冷凍庫からカップ型のアイスを出してやりイルカに手渡す。
ついでにスプーンも。
カカシは甘いものは苦手なので食べることはしない。
ぱくっと一口、アイスを食べたイルカが歓声をあげた。
「美味しい〜。」
どうやら気に入ったようだ。
「カカシさんも一口、どうぞ。」
スプーンで掬ったアイスをカカシの口元に持ってくる。
「ありがと。」
お礼を言って、イルカにアイスを食べさせてもらう。
「冷たくて美味しい。」
そう言うとイルカは嬉しそうに笑う。
「よかった〜。」
「もう一口、ちょうだい。」
そう言うとイルカは、再びアイスを掬ってカカシに食べさせてくれた。
それは、なんというか・・・。
とっても甘い味がしたのであった。
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