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月の欠片



長い任務から帰って来たカカシとイルカは、のんびりと縁側に座って冷茶を飲んでいた。
外は晴れていて、陽射しが強く気温も高い。
二人は涼しげな浴衣を羽織っていたが、じんわりと額に汗が滲み出始めていた。
まさに夏という感じである。

任務で長いこと会えなかったカカシと二人だけで過ごすなんて久しぶりで、縁側で並んで座っているだけでもイルカは嬉しく、心は満ち足りていた。
カカシも同じようで、時々イルカの顔を見ては、にっこりと笑っている。
二人は、二人だけの空間の和やかな雰囲気に満足していた。



冷茶を一口飲んだカカシが、ふと話し出した。
「実は俺、任務先で隕石を見たんですよ。」
「隕石って、あの?」
「そうですよ、あの宇宙から落ちてきたっていう石です。隕石が落ちてきたのを目撃したのではなく、博物館に展示されてあったのを見たんですけどね。」
「へええ、隕石ってどんなものですか?」
興味が出たのか、イルカがカカシの方へ体を寄せてきた。
面白げにカカシの話に耳を傾ける。



「どんなのって、俺の小指の先ほどの真っ黒い小さい石でした。」
「隕石って真っ黒なんですねえ。」
イルカは隕石なるものを見たことがなかったので、想像しては楽しそうな顔をする。
「真っ黒なものばかりではないようですが、俺の見たのは黒く小さかったですよ。」
カカシは説明する。
「でも、そんなに小さいのに重さは五十キロだと書いてありました。」
「小さいのに重さは五十キロ!すごいですね。」
目をキラキラさせてイルカは少し興奮している。
宇宙の神秘の片鱗に触れて喜んでいるのであろうか。
「その隕石はどこの星のものなんでしょうねえ。」と、うっとりとしている。



「ああ、それは月から落ちてきたみたいだ、と解説がありました。」
「月から!」
イルカは月が見えない昼間の空を思わず見上げた。
「あんな遠いところから落ちてきたなんて。本当にすごいですね。」
素直にイルカは感心している。
そしてカカシを見て微笑んだ。
「その月の欠片をカカシさんは見たんですね、いいなあ。」
少し羨ましげだ。
「そうですかねえ。」とカカシは興味が薄そうだ。
「隕石だって言われなければ、ただの重い石ですよ。」
「でも。」
「それにです。」



カカシは、ここが重要だとばかりにイルカに告げた。
「月の欠片なんて、俺たちの愛の欠片に比べたら、ぜーんぜん軽いと思いませんか?」
「・・・え?」
「俺のイルカ先生への愛の重さなんて、欠片だけでも無限大で永遠で永久ですよ!」
「そ、そうなんですか。」
急に熱く語りだしたカカシは、結構、外の夏の暑さに負けていなかった。
イルカはカカシの熱弁に少し腰が引けている。
「そうですよ。俺のイルカ先生への愛の重さはいつでもどこでも誰にも負けません!」
「ありがとうございます。」
丁寧にイルカは礼を述べた。
「ちょっとびっくりしましたが。」と苦笑して付け加えるとカカシが、がしっとイルカの肩を掴んできた。



「もしかして、俺の愛って重すぎましたか?」
「いえ、そうじゃなくて。」
益々、イルカは腰が引けてきた。
「俺、カカシさんって、もっとこう、ふわふわして甘い感じの愛が好きなのかな、って思っていましたから。」
「え!」
カカシが、物凄く驚いた顔になる。
「俺の愛を軽いと思っていたんですか?」
「あの、そうじゃなくて。」
「俺の愛が伝わっていなかったなんて!」
「カカシさん、少し落ち着いてください。」
その場凌ぎに、とりあえずイルカは冷茶を飲むように勧めてみた。



イルカの勧めに従って冷茶を飲んだカカシは少し落ち着いたようだ。
そこを見計らってイルカは、カカシの手の甲の上に自分の手を重ねて置いて話し出した。
「カカシさんの愛が重いとか軽いとかなんて考えたことありませんよ。」
大きく息を吸い込んだイルカは、カカシの眼を真っ直ぐと見た。
「俺にとっては、カカシさんの愛、だということが一番大切なんです。」
ね?そうでしょう?とイルカは重ねた手に力を入れてカカシに笑いかけた。
「一番大切なのは、俺にとってはカカシさんで、そして。」
ふう、と息と共に、決心したようにイルカは一緒に言葉も吐き出した。


「カカシさんが大好きだってことですから。」


そこまで言ってカカシに、にっこりとしたイルカであったが、その顔が見る見るうちに朱色に染まる。
そこで限界だったらしい。
ばっと立ち上がったイルカはカカシに、くるりと背を向けると、だーっと一目散に部屋を出て行ってしまった。
最後に見た後姿の首筋は朱色だったので、きっと相当恥ずかしかったのだろう。



一人取り残されたカカシは、うーんと両手を上に、上げて伸びをした。
「なあーんだ。」と楽しげに呟く。
「離れている間、愛が薄まったのか心配していたけど違ったみたい。」
よっこらしょ、と立ち上がる。
勿論、イルカを追いかけるためだ。
きっとイルカはカカシが来るのを待っているはずである。
長い任務の時もカカシが帰ってくるのを、ずっと待っていてくれた。


「嬉しいなあ。」とカカシは顔を綻ばせると、愛しい人を追いかけるために足早に部屋を出たのであった。







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