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青春真っ盛り





「しーぃんでーぇやーぁるーぅーーぅ。」
訳すと『死んでやる。』である。
そう叫んでいるのは学ランを着ている高校生くらいの少年。
叫んでいる場所は超高層ビルの屋上の手すりの上。
一歩間違うと落ちて死んでしまう。
因みに屋上はビル風がビュウビュウと吹きすさび、少年の銀髪がはためいてしまうほど強い。
いつビルから落下してもおかしくない。





そんな若者を手すりから下りるように説得しているのは、ビルがある所轄の警察署の刑事たちである。
「君は若いんだああー、君の未来はこれからだああー。」
と言っているのは署内で熱血漢と言われているサラサラストレートの髪のおかっぱ刑事であるが、
「うっせー、若いのなんか見て分かるだろうがっ。バーカ。」
と言い返されている。
「俺に任せろ。」
そう言って次に、出張ってきたのは髭がトレードマークの大柄な刑事。
「おーいい、お前。そこから、落ちたらなあ・・・。落ちたらなあ・・・。」
その先を考えていなかったので、つい口から出てしまったのは
「落ちたら、下の通行人に迷惑だろうがあ。」
なんて言葉だった。
「俺の心配より、下の通行人か〜。どうせ、俺なんか、俺なんかー!」
事態は深刻化し始めた。
「もう、アスマったら。私に任せなさいよ。」
三番手は派手な化粧が似合う黒髪の美女。
「ちょっと、何でこんな事しているのか、理由を言いなさいよ。悩みでもあるの?」
「悩みぃ、あるに決まってんだろっ。青春真っ盛りなんだから!」
どうやら、若いが故の青春のラビリンスにでも落ちたらしい。
女刑事はイラッときたが根気強く聞いた。
「悩みがあるなら聞くわよ。お姉さんに言ってごらんなさい。」
「ババアに俺の悩みなんて分かるかよ、好きな子が何も言わずに引っ越しちゃった俺の気持ちが!」
どうやら、好きな子に気持ちを伝えられないうちに、その子が引っ越してしまったらしい。
そう推察できたが、
「ババアですって!巫山戯るんじゃないわよ!まだ30前よ!お肌もピチピチでハリがあるのよ!次の日仕事でも朝の四時まで深酒して出勤できるくらい体力あるのよ!」
「ババアはババアじゃねーかよ!俺なんて徹夜しても次の日楽勝だぜ!おまけにお肌なんてなあ、つるつるピカピカなの!」
だんだん、説得は趣旨から逸れつつあった。





「おい、最終兵器はまだか?」
アスマと呼ばれた髭の刑事は傍らの楊子を銜えた刑事にそっと聞く。
「もう少しで到着します。」
「そっか、紅がうまく時間を稼いでくれるといいんだが・・・。」
どう見ても口喧嘩としか見えない言い合いをしている若者と紅と呼んだ女刑事を見る。
「早く来ねえかな。」
アスマはジリジリと待つ。




「来ました!」 最終兵器として呼ばれた刑事が現れた。
署で『最強エンジェル』『癒し系bP』、落としの笑顔』とか密かに呼ばれている新人刑事である。
「イルカ、よく来た。待っていたぞ。あいつを、あそこから下りるように説得してくれ。」
先輩刑事のアスマの指差す方向を見て、イルカと呼ばれた刑事は息をのむ。
「カ、カカシ、くん。」
「知り合いか?」
「はあ、前に住んでいた実家の隣の子です。」
「そういや、最近、寮に移ったんだっけ?」
横から、楊子の刑事が口を挟む。
「じゃあ、あいつの好きな子って・・・。」
「まさか、イルカ・・・?」
アスマと楊子の刑事は一瞬、絶句したものの切り替えは早かった。
「なら、話が早いぜ。」
「そうそう。イルカ、説得頼むぜ。」
「え、でも俺なんかが。」
戸惑うイルカの背を押す二人。 「大丈夫大丈夫。何を聞かれても言われても『うん、そうだ。』って答えろ。」
「分からなければ、支持はこちらで出すから言う通りにしろよ。」




とにかくと決死の覚悟で、イルカはカカシの前に行く。
「カカシくん!」
イルカが呼びかけると、カカシという少年はすごい勢いで声のする方を振り返った。
「イルカ!」
ピョーンとビルの手すりから軽やかに飛び降りて、駆け寄るとイルカに抱きつく。
「イルカイルカイルカ!」
ギュウギュウと抱きしめる腕に力を込めてきた。
二人は同じくらいの身長だ。
「逢いたかった!逢いたかったよー!」
「カ、カカシくん・・・。」




あいつ、あっさりと下りやがったぜ。俺達の苦労って一体・・・?
名を呼ばれるほど、イルカはこのカカシというガキンチョと仲がいいのか・・・。
さすが、イルカ、ガキンチョまで虜にするとは。
刑事達は一瞬遠い目をしたが、緊張が解れると同時にどっと疲れが押し寄せた。




「急に何も言わずにいなくなっちゃって、どれだけ心配したか。解ってる?イルカ。」
「う、うん。」
「俺がイルカを好きなの知っていたんでしょう?」
「そう、そうだね。」
「イルカも俺を好きでしょう?」
「う、うん。まあ。」
イルカの頭の中ではまだ、カカシを説得している最中になっている。
そして、先輩の言われたことは絶対だ。
返答は『うん、そうだ。』だけ。
「ひと目会った、その日から恋の花咲くことはあるって言うけど。俺、イルカにひと目惚れだったんだよ。」
「うん、そ、そう。」
「今日、再会したのは運命だよ。ねえ、恋人になってよ。」
「え。」



これはさすがに返答に詰まった。
だって、カカシは年下高校生。
自分は年上社会人。
カカシが自分を好きだなんて、たった今知ったばっかり。
そして君は男性、僕も男性。
同性同士。
二人を阻むものはたくさん有り過ぎた。




黙っているイルカに痺れを切らしたのか、カカシがまたまた迫ってきた。
「今ここで恋人になってくれなきゃ・・・。」
不穏な空気を感じ取り、イルカは慌てて言う。
「い、いいよ。なるから、なるよ・・・恋人に。」
「本当?本当だね!」
「・・・うん。」
カカシは、にこにことして、そこいらに笑顔を撒き散らした。



「やったー!イルカが恋人になったよ!サンキュー、警察のおじさん、おばさんたち。」
「おばさんじゃないわ!」
紅は熱り立ったが他の刑事は成り行きを見て、とっとと撤収準備を開始していた。
「何だよ、もしかして確信犯か?」
「学校と親に連絡して厳重注意させなきゃな。」
「報告書、書かんと。」
まあ、後始末はイルカが適任だろう。
最近のガキンチョは恐ろしい、恋のためには何でもするんだな・・・。
若いっていいな・・・。
少ーしだけ、若いカカシを羨ましく思ってしまう。



未だ、屋上で抱き合っている二人を残して刑事達はいなくなった。
「うふふふふふ〜。」
上機嫌のカカシ。
青くなっているイルカ。
若い二人には多分、薔薇色の未来が待っているはず。
特にカカシには確実に!







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