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年の瀬



「今年も一年、無事に終わりそうですね」
イルカが一年を振り返って、しみじみとしている。
二人は食後、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
「今年も色々ありましたねえ」
「色々ありましたけど、平穏無事で何よりです」
「そうですねえ」
カカシとイルカはイルカ宅の炬燵に入って喋っている。
イルカが炬燵を購入してから、すっかり炬燵の国の住人になってしまった。
一度、入ると出たくなくなるのが炬燵の魔力だ。
「来年も無事に過ごせたらいいですね」
「本当ですね」
そこでイルカが、にこっと笑った。
「なので、ぜひ初詣に行きましょうね」
「えー」
カカシが炬燵に潜り込み抗議の声を上げた。
「寒いから、あったかくなってから行きましょ」
「それはもう初詣じゃないですよ」
「初めて詣でたら、いつでも初詣になります」
屁理屈のような、そうでないような切り返しをカカシはしてくる。
「正月は寒いし混むし、家でじっとしていたいですよー」
「・・・気持ちは解りますけど」
イルカも炬燵に潜り込んだ。



「年の初めにお願いしたいこともありますし行きたいです、初詣」
「お願いって?」
イルカに関することには大いに興味があるカカシだ。
「お願いって何をお願いするんですか?」
「それは内緒です」
つ、と立てた人差し指を唇に当てる。
「お願い事は神様だけに言うものです」
「ふーん」
少しカカシは不満顔だ。
割と独占欲が強いカカシはイルカのことなら何だって知りたがる。
「イルカ先生のお願いなら俺が叶えてあげるのに」
「それは無理ですよ」
冗談を言われたとばかりにイルカが笑う。
「カカシさんにだって出来ることと出来ないことがあるでしょう」
「そんなことないですよ!イルカ先生のお願いなら全部、俺が全力で叶えますから」
「まあまあ。そんなにムキにならないで」
アカデミーの生徒を嗜めるようにイルカは炬燵から出ていたカカシの手を、ぽんぽんと叩いた。
「もう、子供扱いして」
俺の方が年上なのに〜とカカシは口を尖らせた。
「本当のことしか言ってないのに〜」
「はいはい、解りました」
イルカは苦笑する。
「カカシさんの愛はしっかりと受け止めましたから」
「それなら・・・。まあ、いいですけど」
珍しくカカシの顔がほのかに赤くなった。



「まあ、そうですねえ」
少し思案したイルカが言った。
「カカシさんに叶えてもらうお願いがあるとしたら、たった一つだけですね」
「え!なになに?」
カカシは炬燵から身を乗り出した。
イルカに期待されると嬉しい。
「簡単なことです」
さらりとイルカは言った。
「俺より長生きしてください」
「・・・・・・・・・え」
「それだけです」
長生き。
つまり長く生きるということだ。
「初詣でも毎年お願いしてますが」
あ、お願い事がばれちゃいましたね、とイルカは肩を竦めた。
「あとは平凡ですけど里が平和でありますようにって」
何でもないことのように言ったイルカが炬燵から抜け出た。
大きな欠伸をする。
「さて、そろそろ寝ましょう、カカシさん」
「え・・・。あ、うん」
「明日はカカシさん、忘年会でしたっけ?」
「そうです、上忍の。イルカ先生もでしたよね?」
「俺は中忍の、です」
年末は忘年会で忙しい。
「二人の忘年会もしましょうね」
カカシはイルカの好きなお酒を手に入れていた。
ついでにイルカの好きな酒の肴も。
「いいですね、大晦日は予定がないので俺は大丈夫です」
「俺も。除夜の鐘を聞きながら二人で忘年会ですね」
「一晩中起きていたら、そのまま新年会突入ですね」
それも悪くない。
楽しそうだ。
イルカと一緒なら何でも楽しい。



「イルカ先生」
すっとカカシはイルカを腕に絡め取った。
「今年も一年ありがとうございました」
イルカの額にカカシの唇が触れる。
「来年もよろしくね」
来年だけじゃなくて、その先もずっと。
「はい、こちらこそ」
カカシの腕に閉じ込められたイルカは照れたように笑う。
「俺の方こそ、今年一年お世話になりました。来年もよろしくお願いしますね」
「任せてください!目茶苦茶よろしくしますから!」
気合を入れたカカシの返事だ。
「それと初詣、やっぱり行きましょうね」
「ほんとですか?」
「うん」
嬉しいなあ、とイルカが顔を綻ばせた。
「新年のお参りに好きな人と行くのっていいですよね」
「そうですね」
イルカの嬉しそうな顔を見てカカシも嬉しくなる。
それに。
「俺も初詣でお願いしなきゃいけないことが出来ましたから」
「お願い?カカシさんの?」
「そう」
「なんですか?」
イルカが聞くと先ほどのイルカの真似をしてカカシが唇に人差し指を立てた。
「内緒です〜」
「えー、ずるいです。俺は言ったのに」
「あはははは〜」
抗議するイルカの口を唇で塞ぐと、すぐに静かになった。
唇を離した時にはイルカの顔は真っ赤で。
「イルカ先生、可愛い〜」
カカシにからかわれて、ぷいと顔を横に向けるイルカ。
「そんなことしても可愛いだけですよ」
向けられた頬にキスをする。
「イルカ先生大好き」
大好き、イルカ先生。
だから俺もお願いしますよ・・・。
カカシは心の中で呟く。
一緒に長く生きられますようにって。
一人で長生きしても、そんなの嫌だ。
一人でなんて生きられない。
イルカのいない人生なんて考えられないから。
いつまでも一緒にいられたらいいね、イルカ先生。
カカシの願いは、ささやかだった。




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