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クリスマスプレゼント



カカシはイルカがクリスマス当日にアカデミーでやる劇に出ることを知っていた。
この劇はクリスマスのイベントの出し物で子供たちのためのものだ。
よって参加者は子供が多い。
その子供たちのためにアカデミーの子供たちは劇をやるのだ。
それはいい。
だけどもね、とカカシは考えた。
イルカ先生も、その劇に特別出演するんだよなねえ。
劇の内容は知らないがイルカが何の役をするのかは知っている。
イルカ自身が言っていたから。
十二月に入って仕事から帰ってきたイルカはカカシとの夕飯の席で恥ずかしそうに報告したのだ。
「俺、クリスマスの劇に出ることになっちゃいました」
恥ずかしそうだったが嬉しそうであった。
「へえ、劇にねえ」
「はい、そうなんです」
にこっと笑うイルカは魅力的だ。
「もちろん、劇の主体は子供たちで俺は脇役のチョイ役なんですが」なんて言いつつもイルカは楽しげだ。
「劇なんて、実は俺、初めてで緊張します」
イルカはアカデミーの先生なので劇の指導はしたことがあっても出演なんてしたことはなかったらしい。
「まるで子供に返ったみたいです」
「ふーん、面白そうですねえ」
カカシは俄然、興味が沸いてきた。
「で、イルカ先生の役どころは何なんですか?」
「えーっと、それは」
ちょっとイルカが俯いて上目遣いでカカシを見つめてくる。
・・・かわいいなあ、イルカ先生。
今すぐ押し倒してキスしたい、いやいや今すぐキスして押し倒したいなどと邪まな考えをしていたらイルカの発言が耳に入った。
「笑わないでくださいね、トナカイなんです」
「トナカイ!」
「あ、はい」
イルカは照れ照れっになっている。
「トナカイの着ぐるみを着て劇に出るんですよ〜」
「着ぐるみ・・・」
トナカイの着ぐるみを着たイルカ。
見てみたい、絶対に。
これはもう劇を見るしか選択肢はない。
子供が多いだろうけど構うものか。
イルカ先生のトナカイ姿!
カカシの頭は、そのことだけで頭がいっぱいになってしまった。



その日はクリスマスだがカカシの指導する下忍の子供たちたちの任務はあった。
しかし早めに終わらせた。
夕方から始まるというアカデミーのクリスマス会に行くためだ。
任務が終わると下忍の子供たちは、わいわいと賑やかに話していた。
「今日のアカデミーのクリスマス会行くってばよ!」
「そうね、イルカ先生に誘われているしね!」
「行くか!」
「木の葉丸たちが劇やるって言ってたってば!」
「それにイルカ先生も出るんですって!」
「行くしかないな!」
盛り上がった子供たちは今にも駆け出そうとしていたがカカシは呼び止めた。
「あー、ちょっと待ちなさい」
そうやって観劇するか思案していたのだが、これに便乗しない手はない。
「何だってば?」
「なーに、カカシ先生?」
「急いでいるんだが」
不可解そうな顔の子供たちにカカシは宣言した。
「俺も一緒に行くから、付き添いで」
子供たちから一斉に抗議の声が上がったがカカシは華麗に聞こえない振りを決め込んだ。



クリスマス会を行うという会場についてみると子供も大勢いたが大人も結構いて賑わっていた。
カカシは、その人ごみの中で見知った顔を見つけた。
「よう、カカシ」
「あら、こんなところで珍しい」
同じ上忍のアスマと紅である。
見ると周辺にアスマと紅が指導している下忍の子供たちの姿も見えた。
どうやら、カカシと同じく子供たちの付き添いで来たらしかった。
「カカシも劇を見に来たの?」
紅が興味深そうにカカシの顔を覗き込んでくる。
「いいでしょ、別に」
「そう?私たちは劇を見に来たのよねえ」
意味深な視線を紅はカカシに投げかける。
「今回はイルカ先生が出演するから面白そうだから」
そう言って隣のアスマに「ねー」と同意を求めていた。
アスマは面倒くさそうに「まあな」と頷いている。
「面白そうって何が?どういう風に?」
何となく自分が知らないのが面白くなくてカカシは思わず尋ねてみたが紅は人差し指を唇に当てて言った。
「ひ、み、つ」
教えてくれなかった。



そうこうするうちにクリスマス会は始まり、アカデミーの生徒がする劇の順番が来た。
イルカも出演するという劇だ。
会場内は暗くなり照明は舞台のみを照らした。
劇の内容は、どうでもいいカカシは、ぼんやりと舞台を見つめ、ひたすらイルカの登場を待っていた。
イルカ先生のトナカイ姿。
頭の中は、ただそれだけ。
周りで笑いがしても悲鳴がしても特に何もカカシはアクションを起こさない。
そんなもんかと大人の余裕で観ていたのだが・・・。
次の瞬間、カカシは大声を出して座っていた席から立ち上がった。
「あああっ!」
カカシの視線は舞台に釘付けだ。
「イルカ先生!」
とことことこっと歩いて出てきたのは全身が茶色の塊。
もふもふの茶色の色した着ぐるみを着たトナカイである。
顔の部分は出ていて、頭には角と耳が生えた茶色の被り物。
そして何よりイルカの体は変化したのか、小さくなっていて子供になっていた。
最高に可愛かった。



カカシの目は舞台のイルカから逸らされることはない。
立ち上がっていたのは両脇に座っていたアスマと紅に腕を引っ張られて強制的に座らせられた。
「イルカ先生・・・」
カカシの目はキラキラッと輝いている。
「さいっこうに可愛いです」
両手を祈るように握り締めて舞台を見続けている。
舞台のイルカといえば、ただ出てきただけのようで特に台詞もなく間もなく引っ込んでしまった。
「ああ〜、もったいない〜、イルカ先生〜」
カカシが心底から惜しむような声を出した。
「もっと観ていたかったのに〜」
隣に座っていた紅が呆れたように言う。
「ほんと〜にイルカ先生のこと大好きなのねえ」
「うん、ほんとに大好きだ〜よ」
「羨ましいわ、ちょっとだけ」
「え?」
こんなことを言われたのは初めてでカカシは戸惑ってしまう。
紅が未だ嘗てカカシのことを羨ましいと一度たりとも言ったことはなかった。
驚いて聞き返す。
「俺って、そんなに人徳者?」
「違うわよ」
バカねえ、と紅は訂正した。
「人徳者なんて、これぽっちも思ってないから安心して。羨ましいってのは好きな人のことを外面憚らず、堂々と好きだって言えるとこよ」
「えー、そう?」
「そうよ」
「好きな人に好きっていうのが、そんなに難しい?」
「時と場合によってはね」
「ふーん」
そんなもんか、とカカシは思ったのだがカカシの隣にいたアスマがタバコも吸っていないのに盛大に咳き込んでいた。



最後にカカシの願いが叶ったのか、子供の姿のトナカイの着ぐるみがイルカが舞台挨拶で出てきた。
子供たちと手を繋いで礼をしている。
このチャンスを逃すカカシではない。
上忍の力を遺憾なく発揮した目にも止まらぬ早業で、舞台にいたイルカを掻っ攫っていたのだ。
その早業はアカデミーの子供たちは捕らえられなかった。
クリスマス会に訪れた大多数の人間の目にも映らなかった。
カカシの早業を感知したのはアスマ、紅を含む少数の上忍だけで。
それを見たアスマと紅は溜め息を吐く。
「あんのバカ・・・」
「ほんとにバカね」
「まあ、あれだ。クリスマスだからな、今日くらいは見逃すか」
「そうね、クリスマスだしね」
アスマと紅は顔を見合わせて微笑んだ。



突然のことにイルカは「きゃー!」とか「わー!」とか子供特有の甲高い声で叫んでいた。
さっきまで人の熱気で蒸していたクリスマス会場にいたのに、一瞬で寒い外にいたからだ。
「ここ、どこ!」
叫ぶのも無理はない。
もこもこの着ぐるみを着ていたので、それほど寒くはなかったが何が何だか分からない。
誰かに、ぎゅーっと抱っこされているのは分かる。
その人物は程なくして判明した。
「カカシさん!」
判明したときには家の中にいた。
自分の家ではないのだからカカシの家だろう。
何回か来たことがあるので内装は覚えている。
「イルカ先生、すっごく可愛いです!」
家の中なので人目はない。
カカシは遠慮なく、イルカを抱きしめてきた。
頬擦りもしてくる。
「小さいイルカ先生が着ぐるみを着ると破壊的に可愛いです」
よく分からないことも言い始めた。
「俺の心をこれ以上虜にしてどうするんですか〜」
イルカを、ぎゅうぎゅうに抱きしめて離さない。
「あーもう!大好きイルカ先生、愛してます」
こんなイルカ先生が見れて最高のクリスマスプレゼントになりました、なんて言っちゃって。
イルカに、めろめろになっている。
そうなるとイルカは何となくカカシが怒れなくなってしまう。
「片付けもしてないのに。おまけに急に俺が消えたら皆、びっくりするでしょうに」
「大丈夫ですよ〜」
カカシはイルカを抱きしめたままだ。
「片づけをしなかったのは俺の所為ですから、ちゃああんと責任もって明日、俺が謝りますから」
それと、と付け加える。
「あそこにはアスマも紅も、他の上忍がいましたから俺がイルカ先生を連れ去ったのは分かっているはずですよ」
だから大丈夫です、と言うとイルカは溜め息を吐いた。
「何が大丈夫なんですか・・・」
全然、大丈夫ではない。
だけども・・・。
カカシが、とっても嬉しそうに自分を抱きしめてくるものだからイルカは諦めた。
昨夜、クリスマスイブだから言った言葉を、もう一度言う。
「メリークリスマス、カカシさん」
「メリークリスマス、イルカ先生」
ちゅっとカカシは子供の姿のイルカの頬にキスをする。
それから。
大人に姿に戻ったイルカにカカシは大人のキスをしたのであった。





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