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時の運



「ふっふっふっふっ」
木の葉の里の宝くじ売り場の前で、里の長である五代目綱手は笑っていた。
目が据わっている。
びらっと広げた宝くじが綱手の手にあり、それを見つめて笑っていたのだ。
「綱手さま〜」
傍らで火影の付き人であるシズネが忍豚を抱いて、呆れたように見ている。
「そんなに買って大丈夫なんですか?」
心配そうにしていた。
「大丈夫に決っている!」
綱手は自信満々だ。
「これだけ買えば当たる!」
「もしかして当たるかもしれませんけど・・・」
よくて末等しか当たらないんじゃ、とはシズネは懸命にも口にはしなかった。
五代目火影といえば賭け事好きで有名だ。
しかも賭け事には必ず、負けるということで。
近隣のギャンブラーには知れ渡っている。
「今月のお小遣い、総て宝くじにつぎ込んでるじゃないですか」
シズネが諌めると火影は肩を竦めた。
「それが賭け事というものだ」
変なところで悟りを開いている。
「どうなっても知りませんよ」
「大丈夫だ!」
根拠もないのに自信だけはある綱手。
そんなところへ、誰かが声を掛けてきた。



「火影さま!」
にこにこしながら前方から歩いてきたのは綱手も、よく知るイルカであった。
火影の業務を偶に手伝っているので、シズネとも顔見知りで仲が良い。
「こんにちは!こんなところで、どうされたんですか?」
イルカは里内で用事があったのだろう、手には書類と思しき物を入れた封筒を持っていた。
その横には何故か、カカシがいた。
両手をポケットに突っ込んで猫背気味だ。
無表情で何を考えているのか判らない。
出している片目は、常に眠そうな目をしていた。
カカシはイルカといることが多い。
イルカがいるところにカカシ有りと陰で言われているほどだ。
上忍、中忍と間柄だが年齢が近いこともあり、気が合うのかもしれない。



「ああ、宝くじを買っていたんだ」
綱手が機嫌よく答えて宝くじを、びらっと見せる。
「これだけ買ったんだ、きっと当たるに違いない」
「すごいですね」
イルカは素直に賞賛した。
「きっと当たりますね!」
「そう思うだろう?」
人のいい笑みを浮かべながら綱手と話している。
「当たったらと考えると楽しくなるし、当たったら何に使おうと思うともっと楽しくなるぞ!」
「なるほど、夢がありますね」
「イルカ、いいこと言うな!そうだ、夢なんだ、これは!」
意気投合している。
それをシズネは、やれやれといった風で眺め、カカシは不機嫌そうに目を細めている。
「そうだ」
綱手は名案を思いついたという顔でイルカに言った。
「イルカも買ってみたら、どうだ?当たるかもしれないぞ」
「そうですねえ」
宝くじは一枚は幾らもしない。
大量に買うとお金が掛かる。
「イルカ、夢だぞ夢だ!」
「うーん」
イルカが綱手の言葉に揺れていると隣から怒ったような声がした。
「イルカ先生、おやめなさい。火影さまの口車に乗せられては駄目ですよ」
カカシが止めている。
「買っても当たらないもんですよ、宝くじなんて」
「まあ、余り当たらないかもですよね」
「そうそう」
「でもなあ」
綱手の持っている宝くじが少し羨ましくなったのかもしれない。
「一枚だけ買ってみようかな・・・」
そしてカカシを見て「一枚だけならいいですか?」と尋ねている。
「まあ、一枚だけなら」
渋い顔をしながらもカカシは首を縦に振る。
ここで何ゆえ、カカシに許可を求めるのか。
シズネは疑問に思う。



結局、イルカは一枚だけ宝くじを購入していた。
「ありがとう、カカシさん!」
・・・カカシに買ってもらっていた。
「どういたしまして」
財布を懐に仕舞ったカカシは喜ぶイルカを見て、今度は機嫌良さそうに目を細めている。
「当たるといいですねえ」
「当たらないですよ」
「カカシさんに買ってもらったんだから当たりますよ」
二人の会話を聞いているシズネは居た堪れなくなってきた。
ただの男同士の会話なのに、どこか違うのだ。
強いて言えば言葉の端々に、ほのかな甘さが漂っているような。
聞いている方が恥かしくなるという表現が的確だ。
カカシとイルカの会話を聞いていると、背中がむず痒くなってくるのだ。



「なんだ、一枚だけか」
たった一枚の宝くじしか買わなかったイルカを見て、綱手は意外そうな顔をした。
「一枚だけじゃ当たらんぞ」
「いえ、俺は一枚で充分です」
「そうなのか?」
「一枚だけでも夢がありますから」
「うむむ・・・」
イルカに見事に切り返されて、綱手は唸る。
手の中の大量にある宝くじを見る。
急に何だか、不安になってきた。
自分が買った大量の宝くじよりイルカが買った一枚の宝くじの方が魅力的に思えてきたのだ。
そう思うと、その考えが頭から離れない。
つい、イルカの買った宝くじを、じっと見てしまった。
「火影さま、どうかしましたか?」
イルカが微笑んで優しく聞かれて、綱手は言ってしまう。
「頼む、イルカ!」
綱手はイルカに、はしっと手を合わせた。
「そのイルカの宝くじと私の宝くじの中から一枚、交換してくれ!」
「え・・・」
突然の綱手の申し出のイルカは、きょとんとしている。
「頼む、一生のお願いだ!」
手を合わせて、頭も下げる。
「ほ、火影さま・・・」
里の長に手を合わされて頭も下げられたイルカは、おろおろしてしまう。
「頭を上げてください、困ります、そんな・・・」
「頼む!」
必死の頼んでいる。 その様子を見てシズネは密かに溜め息を吐いた。
綱手の一生のお願いを見るのは、覚えているだけでも二桁になるからだ。
つまり、しょっちゅう、賭け事に関しては綱手は一生のお願いを発動していることになる。



「イルカ先生、相手にしなくていいですよ」
行きましょ、とカカシは当然のようにイルカの肩を抱いて、綱手から離れようとする。
「で、でも・・・」
「気にしなくていいんですよ」
「火影さまがあんなに頼んでいるのに」
「いつものことです」
カカシは一蹴するが、イルカは違った。
「俺は別に交換してもいいかなと思うんですが・・・」
カカシに買ってもらった手前、イルカは控えめに申し出た。
「カカシさんも当たらないって言っていたじゃないですか」
だったら、どの宝くじも同じということで。
「駄目ですか?」
小首を傾げたイルカの至近距離から見つめられたカカシは、ふうと息を吐いた。
「今まで俺がイルカ先生に駄目なんて言ったことないでしょ」
「ごめんなさい」
「謝らなくていいですよ」
「ありがとう、カカシさん!」
ぱあっと笑顔が顔に広がったイルカを見て、カカシの出ている片目の目元がほんのりと染まり眼光が和らいだ。
よくよく、見なければ解らないほどに。
・・・だが、シズネは至近距離にした所為もあり、無駄に視力も良かったのでカカシの変化に気がついてしまった。
気がつくと共に二人の関係も、なんとなく理解する。
ああ、そうなんだと。
そういうことなんだと。
ちょっと羨ましい。



「火影さま」
イルカはカカシの買ってもらった宝くじを綱手に差し出した。
「交換しましょう」
「いいのか?」
イルカが頷くと綱手は持っていた宝くじからランダムに選んだ宝くじをイルカに差し出す。
交換は終了した。
「ありがとう、イルカ!恩に切る!」
「いいえ、お気になさらないでください」
にこやかにイルカは答えるとカカシの元へと戻る。
「もう、イルカ先生は人がいいんだから」
「そんなことないですよ」
カカシとイルカは楽しそうに話しながら去って行く。
肩を寄せ合いながら、仲睦まじく話している。
「宝くじ当たるといいですね、楽しみです」
「そうだねえ、楽しみだね」
「当たったら、カカシさんの欲しいもの買いましょうね!」
「俺はイルカ先生だけがいれば、いいですよ」
「・・・何を言っているんですか」
「だって、本当のことですもん」
最後の方の会話は、かなり遠ざかってからの会話だ。
忍の耳には、ばっちり聞こえてしまった。
シズネの耳に。
綱手は手にした宝くじを見て、目をきらきらとさせていた。



後日、宝くじの当選番号が発表された。
「・・・・・全部、外れた」
綱手は惨敗だった。
外れた宝くじが手を離れて、ひらひらと床に落ちていく。
「何てことだ」
呆然となっている。
「だから言ったじゃないですか」
慣れっこになっているシズネは溜め息を吐く。
「外れたものはしょうがないです。さっさと忘れて、仕事に励みましょう!」
どんと綱手の机の書類の束を置く。
どん、どん、どん、と。
「こんなに仕事が溜まっていますよ、明日の朝まで片付けないと。頑張りましょうね!」
容赦なかった。



一方、イルカはというと。
自分の家で、ばたばたしていた。
「カカシさん!カカシさん!」
「はいはい、どうしたの?」
「当たっています!」
宝くじを持った手が震えている。
「一等じゃないですけど、結構な金額が当たっています!」
初めてです、と興奮のためか顔が紅潮している。
「ど、どうしましょう?」
「別にどうもしなくていいんじゃない」
「あ!火影さまに言った方がいいですか?」
「言わなくていいから」
「宝くじ返した方がいいですか?」
「返さなくていいから」
「火影さまと賞金半分こした方がいいですか?」
「しなくていいから」
落ち着いて、とカカシはイルカに深呼吸させる。
「その宝くじはイルカ先生のものなんだから賞金については、誰にも言わなくていいし、返さなくていいし、半分こしなくてもいいの」
ゆっくりと言い聞かせた。
「イルカ先生の自由にしていいものなの」
カカシの説明にイルカは落ち着きを取り戻す。
「解った?」
「はい」と頷く。
それから嬉しそうにカカシに提案した。
「このお金で何か美味しいもの食べに行きませんか」
「それはデートのお誘い?」
からかうように言うカカシにイルカは照れたように赤くなる。
が、はっきりと言った。
「そうです、デートです」
だって好きな人とはデートしたいじゃないですか。
その言葉にカカシは何と返したのか。
「かーわいい」とにやけるとカカシはイルカを抱き寄せて。
イルカの耳元でカカシは何事か囁いて。
そしてイルカにキスをする。
返事はカカシにキスをされたイルカにしか聞こえなかった。





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