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尽きない力



任務から帰ってきたカカシさんが玄関に、べたっと倒れこんだ。
「・・・力尽きた」
そんなこと言うカカシさんなんて初めてだ。
よっぽど任務が辛かったに違いない。
俺は慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか、カカシさん!」
怪我してないか、病気になってないか心配だった。
「すぐに寝た方がいいですよ!ああ、それとも病院に行きますか?」
カカシさんが大変なことになっていたら、どうしよう・・・。
心配で胸が潰れそうだ。
「カカシさん、大丈夫ですか」
倒れたカカシさんと起こそうとカカシさんの体に触れる。
肩に手を掛けて起こそうとしたのだが・・・。
重っ!
カカシさんは重かった。
ああ、そうだ、と俺はカカシさんの背負っていたリュックを背中から下ろした。
任務に持って行くリュックって重いんだよね、武器やら暗器やらをいっぱい詰め込んでいくから。



それから倒れているカカシさんのベストも脱がした。
汚れていたから。
任務が過酷だったのか、体中、土や泥で汚れている。
大変だったんだなあ。
カカシさんの任務は、いつも死と隣りあわせだ。
それでもカカシさんは必ず生きて、俺の元へと帰ってきてくれる。
有り難いことだ。
感謝しなくては・・・。
カカシさんが愛しくなり、労いの意味も込めて無性に優しくしたくなる。
「カカシさん・・・」
とりあえず、ベッドに運ぼうとしてカカシさんの身を起こした。
カカシさんの腕を自分の肩に回して、よっこらしょと立ち上がる。
よろっとよろけた。
洒落ではない。
「おっとっと・・・」
倒れたカカシさんを抱えて再び、倒れる訳にはいかない。
俺は必死でバランスを保った。
ここまでカカシさんはかなり疲れているのか、ぴくりともしない。
しかし、あれだ。
動かない人を運ぶのって大変だ〜。
カカシさんと俺は同じくらいの体重だと思うんだけど、倍以上に感じられた。
ベッドまでの道のりも遠く感じる。



ようやく、ベッドに辿り着いた。
「はあはあはあ・・・」
息切れしてしまう。
玄関からの、ほんの短い距離なのに。
カカシさんを運んだだけで力が尽きそうな俺。
・・・体力作りを改めて真剣に考えねば。
そう決意した。
まあ、俺の決意は置いといて。
「カカシさん、ベッドに着きました」
反応はない。
「まずは寝ましょう」
運んでいたカカシさんを、なるべく静かにベッドに横たわらせる。
しかし、あれだ。
動かない人を思い通りに動かすって難しい〜。
とにかく、重いんだもん!
思ってから後悔した、激しく。
二十歳超えてから数年経っているのに、もんって何だ?
鳥肌が立つ。
自分で思ったことに自分で薄ら寒い思いをしている。
バカなことを考えている間にカカシさんをベッドに横たわらせることに成功した。
カカシさんは目を閉じたままだ。
やっぱり動かないので、どうやら寝てしまったらしい。
寝ているカカシさんに布団を掛けて俺は、そっと離れようとした。
眠っているカカシさんの邪魔をしないように、と。



ところが。
離れようとして、がっと手首を掴まれた。
「え?あっ・・・」
俺の手首を掴んでいたのはカカシさんだった。
さっきまで確かに寝ていたのに上半身を起き上がらせている。
見たところ元気そうだった。
よかった〜。
安心する。
なのにカカシさんは、ちょっと怒っているようだった。
「イルカ先生」
低い声で俺の名を呼ぶと意味不明なことを言った。
「それだけ?」
「え・・・」
それだけ、って何のこと?
意味が解らない。
「それだけって何でしょう?」
訊いてみるとカカシさんは驚くべき事を述べた。
「疲れている俺に元気になるキスをするとかないんですか!」
「・・・は?」
「俺、わくわくして待っていたのに!」
恨みがましく言われても。
恨みがましい目で見られても。
えーっと、俺はどうしたら・・・。
「そんなこと言われても」
困ってしまった。



「だってキスして元気になるなんて」
そんなことあるのかなあ。
するとカカシさんは力説した。
「今日は疲れて帰ってきて、玄関で力尽きてしまったんですがイルカ先生が俺に駆け寄ってきてくれたことで、いっぺんに疲れはとれました」
カカシさんは熱く語る。
「ああ、イルカ先生、俺のことを心配してくれるんだ〜、俺って愛されているなあ〜って幸せな気持ちになって」
俺は黙って聞いていた。
「それからイルカ先生が俺をベッドまで運んでくれて何をしてくれるのか、ドキドキして待っていたのに」
滔々とカカシさんは夢物語を俺に聞かせてくれる。
ようやく、一区切りついたところで俺は言った。
「つまり、カカシさんは任務で怪我もせず病気もせずに疲れて帰ってきたってことですね?」
「え?ええ、まあ」
「力尽きたけど、俺が駆け寄ったら疲れがとれたってことは・・・」
それって、あれだ。
「余力があったってことじゃないですか?」
底力は残っていたっていうか、なんというか。
そういうことじゃないかな。
俺に指摘されてカカシさんは「う・・・」と黙り込んだ。
罰が悪そうな顔をしている。
「でもですねえ」
ちっちゃい声。
「玄関で一旦、力が尽きたのは本当なんですよ」
その後、元気になりましたがって、ごにょごにょ、もぞもぞ言っている。



俺としてはカカシさんが無事で元気なら、それでいいんだけどね。
力が尽きたって言って倒れこんだから、本当に心配したんだ。
キスで元気が出るなんて思いもつかなかったけど。
元気なるなら栄養と睡眠。
これに勝るものはない。
なんだか、しゅんとしてしまったカカシさんが可愛くなって俺はカカシさんの頭を撫でた。
よしよしと。
「無事に帰ってきてくれるなら、それだけいいんですよ、俺は」
これは本心だ。
任務に行くかかしさんの無事を、いつも心から祈っている。
カカシさん、危険な任務が多いから。
だから、まあ、その・・・。
柄にもないことを言ってみた。
「今度、無事で帰ってきたら・・・。えっと、お帰りなさいのキスをしますね」
自分で言っていて恥かしくなる。
かーっと顔が熱くなってきた。
ああ、言わなきゃよかった。
自分の発言に後悔して俯いていると、掴まれたままだった手首を強い力でカカシさんに引っ張られた。
「わっ!」
カカシさんの胸の中に、すっぽりと収まる。
ぴったり密着しているカカシさんと俺。
それだけ力を込めて抱きしめられていた。
「イルカ先生、ありがとう。嬉しいです」
カカシさんの声が耳元で聞こえる。
「俺、力尽きても疲れていてもイルカ先生がいると元気になるんですね、きっと」
それから俺を見て微笑んだ。
「キスなら俺からすればいいんですよね」
軽くキスされる。
「あと、それと」
甘い囁きが聞こえた。
「行ってらっしゃいのキスもお願いします」って。
出来るだけカカシさんの希望に添えるようにしたい。
「なんとか頑張ります」
そう言うと、もう一回、強く抱きしめられて、またキスされた。
さっきみたく軽いのじゃなくて、もっと、こう、えーと・・・。
軽いキスの反対は何て言うんだろう。
重いキス?濃いキスとか?
カカシさんに、そんなキスされながら、ぼーっとした頭で俺は考えていたのだった。





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