そんなとき
イルカ先生が任務から帰ってきた。
会うのは十日ぶりになる。
「お帰りなさい〜」
イルカ先生を待ちわびていた俺は玄関で両手を広げてお出迎え。
「ただいま帰りました」
服が汚れて顔も汚れて、全体的に疲れているらしいイルカ先生は俺を見て微笑んだ。
「カカシさん、お元気でしたか?」
「俺は、もー元気で元気で元気いっぱいです」
イルカ先生が任務で里にいない間、俺は特に任務もなくサ都内で待機状態。
疲れるはずがない。
「そうですか」
大きく息を吐いたイルカ先生は背負っていた荷物を下ろす。
「カカシさんが元気で良かったです」
そう言ったイルカ先生の顔は少し翳があった。
結局。
汚れているから、と玄関で抱きしめるのは叶わず、イルカ先生は風呂に直行してしまった。
タイミングよく風呂が沸いていてよかった。
・・・にしても。
俺は風呂の方を見る。
入ってから、かなりの時間が経っていて一向に風呂から出る気配がない。
元々、長風呂傾向のイルカ先生だけど、いくらなんでも長すぎない?
任務から帰ってきたばかりだし、ちょっと心配。
様子を見ようと立ち上がったところで風呂場の方から音がした。
イルカ先生が、ようやく風呂から出たらしい。
「さっぱりしました」
風呂から出てきてイルカ先生は、ほかほかと湯気を上らせている。
顔も赤みが差して、つやつや。
風呂に入って少しは疲れがとれたのかな?
「あ、飯は?」
「今日はいいです」
「そう・・・」
イルカ先生はお茶だけ飲むと「今日は、もう寝ます」とベッドに向ってしまう。
寝るには早い時間帯だがイルカ先生に後に続いた。
ベッドに入って本でも読もう。
そんでもって久しぶりに会えたイルカ先生とくっ付いていたい。
一緒にいたい、それだけだ。
ベッドに行くとイルカ先生は既にベッドに入って布団を深く被って俺に背を向けていた。
顔が見えないのが残念。
もう寝ちゃったのかな・・・。
顔が見たい、声が聞きたい、話をしたい。
そんな欲求がわきあがってきたけれど、ぐっと堪えた。
疲れているイルカ先生の眠りを妨げてはいけない。
俺だって疲れている時は、すぐ寝ちゃうしな。
俺が任務で疲れて寝てしまった時のイルカ先生の気持ちって、きっとこんなのだろう。
ちょっと寂しい。
でも帰ってきてくれてよかった・・・。
夜中。
寝ている俺にイルカ先生が、ぴとっと体を寄せてきた。
こんなことは珍しい。
ぴったりと俺に密着している。
ちょっとどきどき・・・。
しかしイルカ先生の顔は見えなかった。
わざと顔を見えないようにして俺にくっ付いているのだ。
いつもは腕枕して寝ているけど、今日はイルカ先生が背を向けて寝ているのでしなかった。
起こしちゃ悪いと思って。
イルカ先生、寝ていなかったのかな〜。
ぴとっと体を寄せてきたイルカ先生は俺の服を、ぎゅっと握っていた。
・・・何かに怖がっているように。
ああ、そうか。
なんとなく分かった。
俺はくっ付いてきたイルカ先生を、もっと引き寄せて腕の中に抱きしめた。
ぎゅっと抱きしめるとイルカ先生は素直に俺に、そのまま抱かれている。
徐々にイルカ先生の体の力が抜けていく。
俺は抱きしめる力を緩めてイルカ先生の背を撫でた。
よしよし、と子供にするみたいに。
元気出して。
怖くないよ。
俺がいるよって。
だってイルカ先生、任務だったんだもんねえ。
任務の内容は知らないが、それ相応の任務だったのだろう。
だから誰かに抱きしめてもらいたくなるのだ。
よく解る。
しばらくするとイルカ先生の小さな声が聞こえた。
「ありがとう、カカシさん・・・」
なんのお安い御用です。
俺は、いつもイルカ先生から、たくさん貰っているから時にはお返ししないとね。
「大好きですよ、イルカ先生」
そう囁くとイルカ先生は顔を上げて俺を見た。
鼻先が触れ合うほど顔が近い。
暗闇で見たイルカ先生の目は潤んでいるようで。
溜まらず俺はキスをしてしまったのだった。
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