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恋愛相談



「愛って難しいですよね」
イルカの隣に座ったカカシが、わざとらしく溜め息を吐いた。
二人は木の葉の里の公園のベンチに座っている。
なんで、こんなところで二人して座っているのかというと仕事帰り、公園でぼんやりとしていたイルカのところへ何故かカカシが現れたからに他ならない。
最近、この上忍を見かけることが多い。
「はあ」
カカシの呟きにイルカは生返事を返した。
愛、ねえ・・・。
ふと、その字を思い浮かべる。
画数が多くてバランスが取りにくい、その字を。
中忍試験で見た砂の里の少年に額には愛の字がある。
書を嗜む火影さまは愛の字は難しいと言っていた。
アカデミーの子供の中には名前に愛の字を持つ子供もいる。
愛は割と身近にあった。
なのにカカシは愛は難しいと溜め息を吐いている。
これは何だ?



「何かお悩みなんですか?」
隣に座っているカカシを放っておくことも出来なくて、やむを得ずイルカは話しかけた。
イルカの性格からして困った人は放っておけない。
そこを漬け込まれるのが世の常だ。
話しかけられたカカシは、にっこりと笑ってイルカに顔を傾けた。
「実は悩んでいるんです」
ちっとも悩んでいるようには見えない。
「愛について」
言われた事柄に対してイルカは沈黙で応えた。
とうとうとカカシは語る。
「ある日ある時ある場所で、ある人を見かけて、それからその人のことが頭から離れなくて」
姿を見かければ動悸が激しくなり、声を聞けば頭がくらくらして。
「寝ても覚めても、その人のことばかり考えていて」
そのうちに。
カカシの顔がきらきらと輝く。
「これが恋だと気がついたんです。正真正銘の愛だと」
だけど、とカカシが沈んだ声を出した。
「その人への愛に気がついてからというもの俺は最初はさり気なく、それから少し大胆に気持ちを伝えて言ったんですけどさっぱり欠片も気がついてもらえなくて」
がくりと肩を落としている。
「最近は、もーうこれでもかってくらい、あからさまにやっているんですけど全然っ駄目で」
もうどうしたらいいのか解らないんです。
カカシは、また溜め息を吐く。
「愛の迷宮に迷い込んでしまって抜け出せません」
どうしたらいいでしょう、イルカ先生と水を向けられる。
どうしたらって言われても気がついてもらえないなら、どうにもならないんじゃないかと心の中で非情にも考えたイルカだが口には出さなかった。
代わりに、ぽんとカカシの肩を叩く。
元気付けるように笑ってみせた。
「カカシさん」
「はい」
どこかカカシが期待するようにイルカを見つめる。
「きっと」
イルカは慎重に言葉を選んだ。
「お疲れなんですよ。そんなことを考えるってことは」
疲れがとれればいい考えも浮かびます。
「疲れているときは、どうしたってマイナス思考になりますからね」
なんの解決にもならない慰めだった。



カカシから重苦しい空気が漂ってくる。
そのカカシが重い口を開いた。
「・・・・・・そうですね」
言葉自体は同意を表しているが、口調は同意していない。
「いつか」
いつか報われると思いますか?
「俺の愛は?」
訊かれてイルカは眉を寄せる。
「それは一概には言えませんが」
だいたいにしてイルカは、カカシのその人ではない。
愛を寄せる、その人では。
ふと好奇心で聞いてしまった。
「その人って、どんな人なんですか?」
カカシほどの上忍が愛を唄おうとしているのはどんな人間なのか、少しばかり興味がある。
「ああ、その人は」
その人を思い出したのか、カカシの頬が緩む。
「とても可愛らしい人なんです。何事にも一生懸命で、自分のことより人のことを思いやる人です。いつも元気な顔を見せてくれますが時折、寂しそうな顔をするので寄り添えたらと思いますね」
「へー」
べた褒めだ。
「子供が好きみたいで子供にとても優しいんです。・・・俺にも優しくしてくれますけどね」
照れたのか、カカシが頭をがしがしと掻く。
「仕事も真面目で周囲の信頼も厚いです。意地っ張りで怒ると怖くて頑固なところもありますが、それも俺にとっては好ましいです」
愛があれば多少のことも好ましく映るらしい。
「カカシさん、その人のことよく知っているんですね」
「まあ、毎日のように話して顔を合わせていますからね」
「じゃあ、その人はカカシさんのことを嫌ってないのでは?」
カカシに脈があるように思える。
「ところがですね」
肩を竦める。
「その人、実は俺と同じ男性なんです」
「・・・男の人」
「なので、告白するにしてもそこがネックで」
あっさり振られそうで。
「確かに」
イルカは頷いた。
「それは、あっさり振られそうですね。同性同士って難しそうですよね、色々と・・・」
素直な感想を述べると何度目かになる溜め息を吐いた。
「でしょう?愛って難しいですよね」
冒頭の台詞に戻ってしまった。
暫くカカシの話の終わりそうにない。
終わりのない話の中でカカシの、その人が自分だということにイルカが気がつくのはいつなのか。
気がつくのが話の終わりに違いないのだが。
まだまだ気が遠くなるような時間が掛かりそうであった。



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