AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する




ライトな男



イルカと偶然会って立ち話をしていたカカシは何かの流れでイルカに言われた。
「カカシさんて軽そうですよね」
軽そう・・・。
軽い・・・。
一般的には性格や素行が軽いというのを指すと思う。
約束事を守らないとか時間にルーズだとか。
もしかしたら男女関係も含むのかもしれない。
俺って軽いって思われてる?
そんな風にイルカに見られてるとしたらショックだった。
何しろカカシは同性だけれども、同性であってもイルカのことが好きだったから。
好きになりかけていて、それが恋という形に変化して。
イルカに自分をアピールしようとしていた、正にその時。
そんなイルカの衝撃発言だった。



上忍控え室で待機するカカシは、どんよりとしている。
暗く、じめーっとした空気を辺りに撒き散らしていた。
そのお陰でカカシの周りには人が寄り付かない。
いるのは馴染みの上忍夕日紅くらいだ。
カカシは鬱陶しいこと、この上ない。
いつも読んでいる愛読書も持っているだけ。
「はあ〜」
溜め息も何回目か解らない。
「はあああ〜」
あっち向いては溜め息、こっち向いては溜め息の連続だ。
そんなカカシを鬱陶しい目で見るのは紅だ。
「いったい何よ、鬱陶しいわね」
さらりと髪をかき上げて本当のことをはっきりと言う。
「さっきから目茶苦茶鬱陶しくてしょうがないわ」
「だってさ〜」
カカシの眉が下がる。
「イルカ先生がさ〜」
「イルカ先生?」
「そう」
カカシからイルカの名が時点で紅はカカシと関わったのを少し後悔した。
どういう案件か大方の予想がついてしまったから。
カカシがイルカに密かに思いを寄せているのは女性ならでは勘の良さで紅は気がついていた。
「・・・イルカ先生がどうかしたの?」
気は乗らなかった紅はおざなりに訊く。
好奇心には勝てなかったということもあるが。
「うん、それがさあ」
がくっとカカシは肩を落とした。
「イルカ先生に軽そうですねって言われちゃって」
「軽そう?」
「うん」
「カカシが?」
「うん」
「カカシが軽いですって?」
「だから、うんって言っているでしょ」
苛立ったようにカカシが頷く。
「へえ、カカシが軽いって言われるなんてねえ」
あのイルカ先生に。
乗らない気分はどこへやらで俄然、紅は面白そうだと言わんばかりに瞳を輝かせた。



「軽いって言われて、すっごいショック」
本を置くとカカシは上忍控え室のソファーの上で膝を抱えた。
独り言でも言うように吐き出す。
「物心ついたときから任務任務で仕事一筋、恋愛やら遊びやらと無縁の生活していて、ようやく運命の人に出会えたと思ったら・・・」
軽いなんて言われるなんて。
「そりゃあまあショックよねえ」
やっぱり勘は当たっていたわ、と紅は心の中で呟く。
カカシはイルカのことが好きだったのねえと。
「ショックもショック、大ショックだーよ」
打ちのめされたように言うカカシに少しだけ紅は同情した。
同情して少しだけアドバイスする。
「イルカ先生に確かめてみたらどう?」
「え?」
「好きになった人にそんなこと言われたらショックでしょうけど、好きになったくらいなんだから何の根拠も理由もなく、そんなこと言わない人ってことくらい解っているんでしょ」
はっとしたようにカカシは顔を上げて紅を凝視する。
「好きな人は信じてあげなきゃ。カカシの誤解かもしれないじゃない」
「確かに・・・」
なにやらカカシは開眼したようだ。
「イルカ先生は何もなくそんなこと言わないよね」
すくっと立ち上がった。
「ちょっと発言の真意を聞いてみるよ!」
すっかり、やる気になっている。
恋する男は強い。
「そうそう、その意気よ」
紅は応援してみた。
面白さもあったが、純粋にカカシの恋を応援する気もあったから。
恋は実る方がいいに決まっている。
「ちょっと行ってくる!」
善は急げとばかりにカカシは控え室を飛び出していった。



「あ、イルカ先生!」
カカシはすぐにイルカを見つけた。
片手に書類を持って、てくてくと歩いている。 声を掛けると振り返りカカシを見ると笑みを浮かべた。
「カカシさん!」
自分を見て、とっても嬉しそうにしているのは気のせいだろうか。
「こんにちは。どうかしましたか?」
「ええ、実はちょっとお聞きしたいことがありまして」
「聞きたいこと?俺に?」
「はい」
カカシはイルカと並んで歩き始める。
「えーっと。この前、イルカ先生にお会いしたときに話したこと覚えていますか」
「色々話しましたよね、カカシさん聞き上手だから」
「それほどでも」
思わず照れて頭をかいたが、そうじゃないだろと自分を叱咤する。
「それで」
ごくりと唾を飲み込みカカシは核心をつく。
考えていても仕方がない。
覚悟を決めたのだ。
「それでイルカ先生が話の中で俺のことを軽そうだって言いましたよね?」
「軽そう・・・。ああ、そういえば」
イルカは思い出したようだ。
「アカデミーで子供たちに体術を教えていると話したときに、カカシさんは身のこなしが軽そうですねって言ったかと」
「・・・・・・・・・は?」
「子供たちも早くカカシさんのように身のこなしが軽くなればいいのになあって思ったんですけど」
「そ・・・、そうでしたか・・・」
何のことはない。
別にイルカはカカシの性格や素行を揶揄して「軽そう」と発言したわけではないのだ。
前後の話を聞いていなかったカカシが悪いといえば悪い。
心から、ほとした。
だけどさ。
ちらりとイルカを見ると、それに気づいたイルカに微笑み返される。
イルカ先生といると・・・。
イルカといると、ついつい見入ってしまう。
一挙手一投足を逃さずにはいられない。
優しくて穏やかな表情にも惹きつけられてしまうのだ。
急に立ち止まったイルカに呼ばれる。
「カカシさん」
反応が遅れた。
今だってそうだ、イルカの顔を見てしまっていた。
「あ、はい」
急いで返事をしたカカシにイルカは言った。
「あの、もしよかったら今度食事にでも行きませんか・・・。前からお誘いしたいなって思っていたんです」
自信なさげな声で誘われた。
「俺でよかったらですけど」
イルカの頬がほんのり赤い。
これはもしかして、もしかすると。
カカシは予感する。
予感が当たっていたらいいなと切望する。
「行きます行きます!俺の方こそ誘ってもらって嬉しいです」
急に心臓がどきどきしてきた。
どきどきが止まらない。
そして無意識のうちにイルカの手を握っていたのだが。
カカシの手をイルカは振り払うことはしなかった。




text top
top