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★オリキャラ注意



ミスった。 敵に追われて万策尽きた。
なんてたって、俺は病み上がり。
普段の実力の半分も出せていない。
僅かに息切れする体が重い。
任務は、どうにか終わったら後は里に帰るだけなのに。
「ちっ」
思わず舌打ちが出てしまう。
こんなところで、やられてしまう訳にはいかない。
だって、あの人に帰る約束をしたから。
あの人・・・。
俺の大事な大事な可愛い恋人。
イルカ先生。
やっと思いが通じて、恋人になれたってのに!
こんなところで死ぬわけにはいかない。
帰ってイルカ先生に会わなけりゃあ。
恋人に成りたての甘い時期を逃してどうする。
まだ、あんなこともこんなことも、天津さえ、あーゆーこともしてないのに。
いやいや、こんなこと考えている場合じゃないって。
敵に追い詰められて、つい欲望が露わになってしまった。
・・・ほら、人間って死に面するとそういうのが出てくるっていうよね、確か。
一番したいこととか、やりたいことが。
なんて雑念、いっぱいの俺は敵を察知するのが半瞬、遅れた。
時間にして一秒の半分。
それでも任務においては、それが命取りになる。
武器を構えた俺は即座に攻撃に移ろうとしたのだが。
そのとき・・・。
ぐいっと後ろに引っ張られた。
と、聞きたくない声がした。
「まったく死んだら、どうするんの〜」
聞きたくない声の持ち主。
それは俺の敵で、この世で最も大嫌いなやつ。
イルカ先生の知り合いの悪魔とかいうやつだった。



「せっかく生き返ったのにさ〜」
引っ張られて、ごろと後ろに転がった。
一回転して、素早く起き上がる。
「死んだらイルカが泣いちゃうじゃーん」
そこには以前に見たことがある黒髪長髪で、傲慢で横暴で軽薄で、いけすかないやつがいた。
見ているだけでムカつく。
イルカ先生と同じ色の髪なんて生意気だ。
それなのに、顔だけはいいのが癪に障る。
俺がムカムカしていると、そいつは「あははは〜」と緊張感の欠片もない笑い方をした。
「あははは〜、怒っているねえ」
笑い方に、むっとしていると、そいつは歩き出した。
歩いたっていうより滑り出した。
すーっと足を動かさずに。
「まあ、ついて来なよ」
ちょいちょいと手招きをする。
俺は不承不承、そいつについていくことにした。
なぜならば、引っ張れて転がり落ちた先は一寸先も闇の中とも言える、真っ暗闇で。
一条の光もなく、悪魔の体だけが光っているわけでもないのに、くっきりと見える。
自家発電?自家発行?
悪魔ってやつは、ほーんとおかしい。
といっても、自称悪魔なので俺はこいつの言っていることを全く信じていなかった。
変な力があるらしいけど、悪魔ってのは存在しないと思っている。
同時に神さまや天使も。
所詮、そんなものはお伽話の存在だ。
あるのは現実、それだけだ。



「ああ、そうだ」
俺はクナイの入っているホルダーから、ある二つのクナイを取り出した。
「コレは返す」
「えー、使いにくかった?」
悪魔が小首を傾げる。
「いい武器だと思うけどー」
「いらない」
この二つのクナイ。
前に、こいつに貰った武器だった。
なにやら細工がしてあるらしく、このクナイを敵に放つと絶対に急所に当たる。
どんな角度、どんなに離れた場所からでも確実に敵を仕留めるのだ。
・・・恐ろしい。
生け捕りにしようとしても急所を外して投げても、投げた人間の意思を無視して急所を突く。
それでは武器とはいえない。
思った通りに使えない。
だから、いらない。
そう言うと悪魔は肩を竦めた。
「大サービスしてあげたのに」なんて恩着せがましく言う。
「いらない、不要だ」
重ねて言うと俺の手にあった二つのクナイが、さらさらと砂になって散っていった。
こいつが、やったのだろう。
どうせ術か何かだろうが、チャクラは感じなかった。



「ほんとー、人間て頭が固いねえ。貰える物は貰っておけばいいのにー」
へらへらと悪魔は笑う。
「どうでもいいことで泣いたり悲しんだり。面倒くさい生き物だ」
ぶつぶつ言っている。
「まーね、助けてやるのは今回限りだしね」
今回?
もう会わなくて済むのか。
すると俺の心を読んだのか、やつは振り返って、にやっと笑った。
「そうだよ、もう会わないよ。俺は昼寝に入るし、一旦、寝たら何百年か起きないし」
「ふーん」
・・・だとすると、イルカ先生の前にも現れないってことか。
「そうそう、現れないよ、よっぽどのことがない限り。イルカが生きている間は、もう会わない」
・・・ふふふ、なんて重畳。
もう二度と会わなくていいなんて。
せいせいする。
「だけどねー」
はっと前を向くと、そいつが目の前にいた。
にやにやと笑っている。
「俺はイルカが死んでも会えるから、別に問題ないんだーよ」
憎たらしい口調だ。
「イルカの魂がある限り、会うことに不自由はしないからね」
むむっと顔を顰めていると、何故か相手も顔を顰めた。
「でもさー、イルカの魂の遍歴をちょいと調べたら、過去も未来も現在も、必ずお前がイルカの傍にいるんだよねえ」
「邪魔」なんて言われた。
「イルカの魂とお前の魂は付かず離れず、不即不離の関係らしいがね」
これは・・・。
これは喜んでいいのか?
喜んでいいのだろうか。
大嫌いなやつの言葉だけど、俺とイルカ先生が過去も未来も永劫に一緒だなんて。
信じられないけど信じたい思いだ。
「お、そろそろだ」
何が?と思っていると「ほら、着いた」と、どんと胸を押された。
どんと押されて、また転がる俺。
また一回転して起き上がると、そこは・・・。
人がいっぱいの受付所だった。



ぽかーんとして周りは俺を見ている。
俺も呆気にとられて動けない。
何なんだ。
何が、どうして、こうなった?
「カカシさん!」
大好きな声が俺の名を呼んだ。
その声で俺の呪縛は解けて動けるようになった。
「イルカ先生」
声のした方を見ると、そこにはイルカ先生がいた。
びっくりした顔をして俺を見ている。
・・・こんなときだけど、びっくりした顔も可愛いなあ。
写真に撮って額縁に入れて飾っておきたいとか俺は考えてしまった。
「カカシさん、どうしたんですか?」
受付の係りをしていたイルカ先生は俺に駆け寄ってくる。
「突然、空中から現れて・・・。怪我はありませんか?」
心配そうに聞いてくれた。
優しいなあ、イルカ先生。
でれっとしそうになるのと堪えて、俺は、どう説明したもんかと眉根を寄せた。
うーん、あいつのことは極力話したくないしなあ。
口に出すのも嫌だ。
「もしかして」
閃いた!という表情でイルカ先生が俺に訊いてきた。
「時空間忍術を使ったんですか?」
ものすごく期待に満ちた顔だ。
「時空間忍術って物体を違う空間に移動させたりするんですよね?」
それでカカシさんも自らを移動させたんですか?って。
・・・えーと。
なんか違うような気がしたが、まあ、そういうことにしておいた。
詳しい説明は省いて。



で、任務の報告書を出して、受付の仕事が終わったイルカ先生と俺は帰ることになった。
イルカ先生との帰り道。
帰る先は今日は俺の家。
日によってはイルカ先生の家に行ったりもする。
俺としては一つの家で二人で暮らしたいんだけど。
・・・それは、ゆっくり考えるとして。
隣を歩くイルカ先生の手に触れて、俺はそっと握った。
イルカ先生は、とっても照れ屋なので、こういう行為は意図せず避けられたりもしたけれど、最近はそんなことはない。
手を握ると、イルカ先生も握り返してくれるようになった。
最初は少しずつ力を入れてきて、それから、ぎゅっと。
イルカ先生の奥ゆかしい人柄を表すような握り方だ。
そして俺の顔を見て、嬉しそうに微笑んで。
そんなイルカ先生が俺はすごく、とても好きで。
可愛くて、しょうがない。
イルカ先生が可愛いだけじゃないってことは重々、承知しているけれども。
強い人だってことはしているけれども。
やっとのことで思いが実り、手に入れた人だ。
イルカ先生と恋人という関係になった。
ここまでの道のりは艱難辛苦で四苦八苦、山あり谷ありだったけど。
大好きな人。
大切にしたい。
いつまでも。
愛しています、イルカ先生。
微笑を浮かべて俺を見ているイルカ先生の手を、ぐいと引き寄せると。
俺は笑いながらイルカ先生の頬にキスをした。
このくらいはいいだろう、だって恋人だし。
イルカ先生は照れ隠しに怒った振りをしていたけど、それさえも俺には恋人同士のじゃれ合いにみえて。
とってもとっても幸せで。
ああ、生きていてよかったと思ったのだった。







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