お届け物
イルカがカカシの家で留守番していると、呼び鈴が鳴り誰かが来た。
留守番しているのはカカシも承知しているし、誰かが来たら出てもよいと言われている。
「もし、宅急便が来たら受け取っておいてほしい。」と言付かっていたのでイルカは玄関のドアを開けた。
果たして、そこいたのは宅急便の人だった。
にっこりと営業スマイルをした宅急便の人は「お届け物です。」と荷物を差し出してくる。
宛名は確かに「畑カカシ」とあったのでイルカは判子を押して受け取った。
判子は宅急便の受け取り用にカカシが置いていった三文判だ。
「何だろう?」
中味は何か分からない。
宛名のところを、もう一度見たイルカは、ぎょっとなった。
「何だ、これ?」
宛名の所には確かに「畑カカシ」と書いてある。
しかし、続きがあった。
宛名には「畑カカシ様方、海野イルカ様」と自分の名も記されていたのだ。
差出人の名前には心当たりがないし、イルカは自分宛の荷物をカカシの家に宅配するように頼んだ覚えもない。
カカシが頼んだ物なのだろうか?
不思議に思いながらも、カカシの家に届いたものなので勝手に開封することもできず、カカシが帰ってきてから事情を聞くことにした。
夕方になり任務を終えたカカシが帰ってきた。
「ただいま〜。」
嬉しそうな声がしてカカシが家に入ってくる。
「あー、いい匂いがする。」
夕飯の匂いにカカシが「お腹がペコペコ〜。」とか言っている。
「お帰りなさい、カカシさん。」
台所からイルカが顔を出すとカカシが更に嬉しそうな声を出した。
「ただいま、イルカ先生。今日は一日、俺の家にいてくれたんだね。」
「ええ、まあ。休みでしたし。」
留守番と称してカカシは、休みのイルカを自分の家に足止めしていたのだ。
「ああ、イルカ先生が俺の家にいてくれるなんて幸せ〜。」
カカシが余りに嬉しそうにするのでイルカは何だか恥ずかしくなってきた。
「はいはい、手を洗ってきてください。ご飯にしましょう。」
カカシは大人しく「はーい。」と返事をして手を洗いに行く。
そういえば、と手を洗ってきたカカシにイルカは尋ねた。
「今日、荷物が届いたんですけど。どうして、宛名にカカシさんの名前の他に俺の名前が書かれていたんでしょう?」
「え、本当?」
カカシが荷物を改める。
「ふふ、畑カカシ様方海野イルカ様だって。」
宛名のところを見て若気ている。
「いいねえ。」
「あの、何か知っているんですか?」
イルカが再度尋ねるとカカシは、しれっとして言った。
「うん、俺がね、この名前で懸賞に応募したの。で、それが当たったんだと思う。」
「勝手に人の名前を使ったんですか?」
イルカの眉がぴくりと跳ね上がった。
「何でそんなことするんです?」
駄目でしょう?とイルカが怖い目で睨むとカカシは、ちょっとだけ怯んだ。
「ええ、だってさあ。」
「だってじゃありません。」
「だって、こういう書き方すると何だか同棲しているみたいじゃないですか。」
「同棲・・・。」
カカシの言葉にイルカは無言になる。
「まだ、俺たち一緒に住んでないから、せめて気分だけでも味わいたかったんです。」
付き合って日が浅いのでお互いの家を行き来するだけでイルカは充分だと思っていたのだが。
そんなイルカを見てカカシは畳み掛けた。
「ねえねえねえ、これを機会に一緒に住みましょ、イルカ先生。」
いいでしょ?いいでしょ?とぐいぐいと迫ってくる。
危うく、流されそうになったイルカだが問題が摩り替えられていることに、はっと気がついた。
「ちょっと、カカシさん。今は人の名前を勝手に使ったことについて話しているんです。」
正気づいたイルカに、ちっとカカシは心の中だけで舌打ちする。
残念、もう少しだったのに。
何とか、この場は誤魔化して同棲計画は次に持ち越すか、などと考えていた。
カカシは怒りかけているイルカに届いた荷物を差し出した。
「ごめんね、イルカ先生。俺、名前を使いたかっただけだから、届いた荷物はイルカ先生にあげます。」
「え、でも。」
「まあまあ、開けてみてくださいよ。」
巧みにカカシは話題をずらす。
「きっと、好い物が当たっていますから。」
荷物の中味の誘惑に勝てずイルカは荷物を開封した。
「わ。」
荷物を開封したイルカの目が輝く。
「すごい!蟹缶だ!」
中味はずらりと並んだ蟹の缶詰。
イルカはさっき、怒りかけていたことなどすっかり忘れてしまった。
「これ、いいんですか?」
「勿論。」
カカシが頷くとイルカは大喜びする。
「嬉しいです。ありがとう、カカシさん。後で一緒に食べましょうね。」
浮き浮きするイルカを見てカカシは内心考えた。
次は、どんな手で同棲しようと持ちかけるか。
早くイルカ先生と一緒に住んで、いつも一緒にいたいなあ。
カカシは、そう思う。
願いは、それだけなんだけど。
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