子供の頃の思い出
「何だかさ〜、魂だけ飛ばされちゃったみたいんだよね〜。でも実体があるんだよね〜。」
空から突然降ってきた白い髪の片方の目を額宛で隠している人は言う。
「ふーん。飛ばされちゃって大変だね。」
魂とか実体って何だろう?
俺は分かったような口を聞いたが全く分かっていなかった。
さっきから体はここになくて別の場所にあるんだとか、ぼやいている。
俺はぱりぱりとおやつのお煎餅を食べながら相槌を打っていた。
その人は、はああと深く深く溜め息をつく。
「早く帰らなきゃいけないのに。」
顔が苦しそうだ。
気の毒になってお煎餅を勧めてみた。
「まあまあ、そんなに気を落とさないで。お煎餅でもどう?」
その人は、少し笑って「ありがとう。」と俺の頭を撫でてくれる。
「小さいのに偉いね。」って褒めてくれた。
「さっきは父さんに会えて、今度はイルカ先生の小さい頃に会えて。」
俺の名前を知っていた。
どうしてだろ?
「願望が出ちゃったのかな。」
その人はお煎餅を食べ終わると俺に笑って言った。
「お煎餅ごちそうさま。また、後でね。」
「後で?」
不思議なことを言う人だ。
「うん、後で。ずっと後でね。」
その人は立ち上がり、うーんと伸びをした。
「もう帰れそうだ。」
あっちで頑張ってくるからね、と俺に手を振る。
「うん、頑張ってね。」
何だか知らないけど俺は手を振った。
「じゃあね〜。」
その人は目の前で掻き消える。
「ばいばい。」
消えた人に呟いた。
どこに消えたんだろう、また会えるのかな?
あの優しい目をした、あの人に。
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