AIで普通の動画を3D動画に変換する


お見合い大作戦



カカシが火影に命じられた単独任務を終わらせ、夜遅く帰ってきたときだ。
報告をしようと、まだ居るはずの火影の執務室の扉の前に立つと中から声が聞こえてきた。
火影の声と、もう一人。
その一人はカカシが、よく知る人物、うみのイルカの声だった。
二人は仲良さそうに話している。
なぜ、イルカが夜遅く火影の元にいるのか。
理由は容易に想像がついた。
おそらく、執務の手伝いに違いない。
新しく就任した五代目火影は、まだ火影の仕事に慣れていない面もあり、時々イルカが手伝っていたりする。
・・・イルカ先生も夜遅くまで、よく付き合うなあ。
イルカの本来の仕事は別にある。
アカデミーの教師という本職が。
それとは別に受付所での仕事もしている。
真面目すぎるのも考えものだ。
イルカに関して、常にカカシは、そのように思っていた。
真面目に働きすぎて、体を壊しやしないかと心配していたのだ。
なぜって、カカシとイルカは恋仲であったから。
男同士ではあったが、すったもんだの末に、その問題はクリアしていて、今では人も羨むくらいの仲になっていた。
やっと手に入れた最愛の人をカカシは、それはそれは大事にしていた。
目に入れても痛くないほどの可愛がり方で。
イルカも、人前では控えめではあったがカカシを大切に思っているということを、カカシは知っていたし分かっていた。
だから、火影の執務室から会話を聞いてカカシは愕然としてから呆然としてしまう。
驚愕のあまり、真っ白になって燃え尽きてしまうほどに。



「カカシにお見合いの話があるんだが」
「えっ、お見合い?」
火影の声がして、戸惑うようなイルカの声がした。
「そうだ。ほら、写真もあるぞ」
かさこそと紙のような音がする。
「見てみろ、可愛いぞ〜」
「・・・わあ、可愛いですねえ」
イルカの弾んだ声。
「だろう?可愛いだろう」
「可愛いです!目が、くりっとしていて美人ですね」
「私も一度、会ったことがあるが、性格は優しく穏やかで、賢くて人懐こいんだ」
「性格も良くて、可愛いなんて。百点満点ですね!」
「ぜひ、カカシに勧めてみたいんだが」
「そうですね!カカシさんも、きっと喜ぶと思います」
やたら火影に賛同している。
「だったら、この写真、イルカからカカシに渡しておいてくれないか?カカシがオッケーしたら、話を進めるから」
お見合いの場所や日にちを設定するよ、と火影は積極的だ。
「分かりました」
きっとイルカはお見合いの写真を受け取ったのだろう。
「カカシさんに話してみます。カカシさん、喜んでくれるといいですね!」
カカシのお見合いに乗り気の発言だ。
そこまで聞いて、カカシは我に返った。
正気に戻る。
こんなところで燃え尽きている場合ではない。
緊急事態である。
イルカが恋人である自分にお見合いの話を持ってこようとするなど。
いったい、どうしたことだろう。
二人の愛は永遠じゃなかったのか・・・。
とにかく、カカシは自分のお見合いを絶対に阻止すべく扉を開いた。
火影の執務室の扉を開けると、そこには五代目火影とイルカが勿論おり、突然に現れたカカシにびっくりしていた。



「なんだい、カカシ。ノックもなしに」
火影が文句を言ってくる。
「たった今、カカシさんの話をしていたんですよ。噂をすれば影、って本当だったんですね」
イルカが、のんびりと言ってカカシに微笑んできた。
その微笑に微笑み返し、ああ幸せ〜なんて思ったカカシだったが、本来の目的を思い出す。
「あのですね、扉の外で話を聞いてしまったんですが・・・」
「立ち聞きかい?」
顔を顰める火影。
「申し訳ありません。立ち聞きする気はなかったのですが、お二人が話している内容が聞こえてしまって」
「え、聞こえてしまったんですか?」
何故か、イルカが恥ずかしそうな顔になる。
「後で話して驚かそうと思っていたのに」
「いえ、もう充分すぎるほど驚きましたから」
お見合いの話をどうするかなんて、もう決まっている。
お断りだ。
しかし、火影は「なら、話が早い」とイルカに手を出した。
「さっきの写真、今、ここでカカシに見せておやりよ」
イルカは白い封筒を手にしている。
「はい、では」
白い封筒を火影に手渡す。
「カカシ、お見合いの話があるんだが・・・」
「お断りします」
きっぱりと男らしく断り、カカシはイルカを見た。
その目は哀しげで。
「イルカ先生」
「あ、はい」
呼ばれたイルカもカカシを見る。
「どうして」
カカシの声は哀しげであった。
「どうして、俺にお見合いなんて勧めようとするんですか?」
目を瞬かせたイルカは困ったように眉を潜めた。
「・・・もしかして嫌でしたか?」
カカシは頷く。
「それに傷つきました、お見合いを否定しないなんて」
本来ならイルカはカカシのお見合いを拒否する立場にある。
だって、恋人なのだから。
「そうでしたか。カカシさん、すみません。勝手に話を進めてしまって」
「そうかー」
カカシとイルカの会話を聞いていた火影が残念そうな顔になる。
「そんなに嫌なら仕方がないな。いい話だと思ったんだがな」
「そうですね。しかし、カカシさんの意思を尊重しなければなりませんし、こればっかりはどうしようも・・・」
火影は、がさこそを封筒から何枚かの写真を取り出した。
「可愛いのになあ」
ほら見てみろ、とカカシに示された写真には・・・。
「・・・ワンコ?」
人間ではなく、犬が写っていた。
柔らかそうな毛並みで素直そうな顔をした犬が、尻尾を振っている写真。
数枚ある写真は総て、犬の写真だったのである。



「せーっかく、カカシの忍犬にお見合いの話を持ってきてやったのに」
「忍犬の主であるカカシさんの了承が得られなければ駄目ですね」
「お見合いが上手くいって、子犬が産まれたら見たかったのになあ」
「仕方ありません」
火影とイルカは肩を落としている。
「え・・・。え、ちょっと待ってくださいよ」
頭が混乱したカカシは二人に問い質した。
「これって、俺のお見合いの話じゃなくて・・・。え、俺の忍犬たちのお見合いの話なんですか?」
「そう決まっているだろ」
火影が呆れたようにカカシを見た。
「三十路のカカシにお見合いの話を持ってくるくらいなら、私はイルカにお見合いを勧めるよ」
なんだか、失礼なことを言っている。
「大らかで人が良いイルカなら、お見合いの話はいくらでもあるからね」
火影の爆弾発言を聞いてカカシは慌てた。
「それは困りますってか、駄目です!俺が許可しませんから」
「・・・例えばの話だ」
カカシの抗議にイルカは照れたのか恥かしいのか、顔を赤らめている。
「・・・こんなところで言わなくても」
小さな声でカカシに抗議している。
それを聞き逃すカカシではない。
「ここで言わなくて、いつ言うんですか!俺の知らないところでイルカ先生がお見合いの話が持ちかけられて、間違ってお見合いして、お見合い相手に気に入られて、なんて考えただけで腸がぐつぐつ煮えくり返るというより、煮え滾ります!」
「あの、俺のことは心配しなくて大丈夫ですから」
「大丈夫と思うことと、心配することは違います!」
イルカに歩み寄ったカカシは、ぐっと両手でイルカの両手を包み込むように握った、強く。
「俺はイルカ先生と添い遂げると、生涯を共にすると誓ったんです」
非常に熱の篭った口調だ。
「イルカ先生が俺以外の誰か、となんて考えただけで・・・」
「も、もう解りましたから」
イルカはカカシの暑苦しい熱い視線と、火影の鋭く突き刺さる冷たい視線に耐え切れない。
「火影さまの御前ですから・・・」
「あ、火影さまがいると邪魔ですよね」
「邪魔だなんて、そんな恐れ多いこと・・・」
「早く二人きりになりたいですよね!」
そこで、いい加減、火影が切れた。
「邪魔はカカシだ、お前だお前!」
立ち上がった火影は、びしっとカカシを指差す。
「何で忍犬の見合いの話から、永遠の愛を誓う話になっているんだい?だいたい、どこで愛を誓ったんだ?」
変な箇所に突っ込んでいた。
「木の葉の里に教会なんてないだろう。神前式でもして愛を誓ったのかい?」
結婚してないのに、結婚式のことに妙に詳しい火影だ。
「婚約指輪や結婚指輪は?財布は一緒にしているのかい?」
何やら、話がずれてきている。
「まーさーかー」
カカシがイルカの手を離さずに火影の質問を笑い飛ばす。
「そんなことしなくても俺たちは固く結ばれているんです。ま、火影さまも恋人が出来たら解りますよ」
余裕の笑みだ。
「愛があれば、総てを凌駕するんです。恋人の存在って人生の潤い、癒しの泉ってところですね」
「・・・・・・・・・カカシ」
真夜中。
木の葉の里に雷が落ちた。
それは凄まじい雷で、雷鳴が木の葉の里に響き渡った。
しかし雷の被害があったのは、たった一人であったのが幸いであった。



「すみません」
カカシは一応、殊勝に謝った。
「調子に乗りすぎました。独身の火影さまの前で」
「解ればよし!」
腕を組んだ火影が恐ろしい顔で頷く。
「それよりカカシは任務の報告の来たんだろ」
「はい」
的確にカカシは報告を終える。
「分かった、ご苦労だったな」
労うとカカシとイルカに告げた。
「もう二人とも帰っていいよ。イルカ、遅くまで済まなかったな」
「いえ、私の方こそ、ご迷惑を」
「いいんだいいんだ」
火影は手を振る。
「ちょっと席を外しているシズネが戻って来ないうちに、息抜きしようと犬のお見合いの話をした私が悪かったんだ。今から、真面目に仕事をするよ」
もうすぐシズネも戻ってくるだろうしね、と火影は仕事を続行させるようである。
「お疲れ様です、火影さま」
「んじゃ、火影さま、失礼します」
カカシとイルカは手を繋いで、仲良く火影の執務室を出て行った。
一人になった火影は、ほっと息を吐き出す。
時計を見ると丑三つ時だった。
「・・・夜のテンションで変になっているのかねえ」
昼間だったら、カカシもイルカも言いそうにないことを言っていた。
いや、カカシは昼間でも言うかもしれないが。
「さてと仕事に戻るとするかねえ」
そこで火影は、はっと気がついた。
「・・・全然、進んでない」
イルカが手伝ってくれた分はいい、自分の分が殆ど手付かずで残っている。
「やばい」
ぶるっと火影は身を震わせた。
「シズネが戻ってきたら・・・」
その後。
戻ってきたシズネの行動は、火影の予想通りの展開になり。
真夜中の木の葉の里に二度目の雷が落ちたということであった。





text top
top