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二年越し



大晦日の夜。
二人きりで過ごしている。
ちなみにカカシとイルカは恋仲だ。
カカシが言い出した。
「ねえ、イルカ先生」
何かを強請るような響きが含まれている。
心なしか目が、にやりとしていた。
「何ですか?」
本能的に身構えながらイルカは聞いてみる。
・・・カカシさん、何か企んでいる?
向かい合わせに座っていたのだがカカシは、にじにじと座ったままで移動してイルカに、にじり寄って来た。
ぴたっとイルカにくっ付く。
「ねえ、イルカ先生」
カカシが、もう一回言った。
「お願いがあるんですけど」
邪気のない笑みなのに、目が何かを狙っている。
・・・何だろう。
イルカは、ちょっとだけ不安になった。
こんなときのカカシは結構は無理難題を言ってくるから。
イルカが断っても、大抵はカカシの希望通りになることが多かった。



「えっと、何ですか?」
警戒しながらイルカが問うとカカシは嬉しそうに、にこーっと笑った。
「俺ですねえ」
「はい」
「夢があってですねえ」
「はい?」
カカシさんの夢って聞いたことがなかったなあ。
どんな夢なんだろう。
興味が沸いてきた。
「どんな夢なんですか?」
更に聞くとカカシは細めた目でイルカを見据えた。
「ええ、実はですね」
さっきまでイルカにくっ付いていただけのカカシの腕がイルカの背に腰に回っている。
いつの間にやら抱きしめられていた。
無論、イルカは口には出さないもののカカシに抱きしめられるのは好きだったので特に抵抗はしなかった。
カカシの腕の中は、いつだって温かで安心できる。
カカシの自分を思ってくれる優しい気持ちが直に伝わってくるような気がした。
また、イルカもカカシを抱きしめることが好きだった。
好きな相手を抱きしめる。
幸福感に包まれた。



カカシはイルカを抱きしめたまま、耳元で囁いてきた。
声は低く甘い。
「俺ね、恋人ができたらキスをして年を越したいなあと、ずっと思っていたんですよ」
キスで年越し!
まさか、こんなことを言われるとはイルカは予想だにしていなかった。
ただ、二人きりで除夜の鐘でも聞きながら年を越せればと思っていたから。
そして年が明けたら一番最初に新年の挨拶を言う。
イルカが思い描いていたのは、そんな年越しだったのだが。
「ねえ、いいでしょう、イルカ先生。恋人になってから初めての年越しですよ」
カカシが甘い声のまま強請った。
「キスをしたまま年を越すんです。一年をキスで終わり、一年をキスで始まるなんて素敵じゃありませんか!」
・・・それって素敵なの、かな?
ちょっとよく分からん、と眉を潜めたイルカにカカシは畳み掛けた。
「俺の夢を叶えてください、イルカ先生」
そう言われるとイルカは、やっぱり断れなかった。
「つまり、そのキスってお参りでいうと二年参りみたいなものですか?」
「そうです、そんな感じです」
間近にあるカカシの顔が縦に振られる。
「二年越しのキスって感じですかね」
「まあ、それなら・・・」
「やった!」
カカシの顔が輝く。
「じゃあ、もうすぐ年越しですからキスをしましょうか」
時計を見ながらカカシが言う。
時計の針が零時を過ぎるまで数分あった。
「イルカ先生、目を閉じて」
言われるまま、イルカは静かに目を閉じた。
心臓がドキドキと早鐘を打っている。
カカシさんて。
目を閉じながらイルカは思った。
本当に格好いいな。
目の前、数センチに距離にあるカカシの顔は凛々しく、きりっとしていて見目麗しいこと、この上ない。
整った顔立ちが際立っている。
・・・あんまり見すぎると、クラクラしてくるんだよな。
それは目眩にも似ていた。
俺ってカカシさんのことが好きすぎる。
そう自覚したイルカは、そっとカカシの背に手を回した。



目を閉じたイルカを前にしてカカシは、その顔に見入っていた。
目を閉じたイルカの顔は無防備で、どこか幼く見えてしまう。
普段は元気いっぱい、強くて逞しいイルカであったが日常の、ちょっとした拍子に意外な一面を出してくる。
今も、その一面を見ている気分だった。
自分の腕の中にイルカは同じ男性だということは分かっていても好きなことに変わりはない。
なんで好きなったのか・・・。
その答えは明確には出せないが気がついたら好きになっていたというか、いつもイルカの傍にいるのが当たり前になってしまったというか、とにかくイルカなしでは生きていけなくなったのだ。
それが恋で愛だということは早くに解ったのでカカシから告白したのだ。
最初、イルカはカカシの告白に対して冗談だと思っていたようであったがカカシの押せ押せ体当たり、当たっても砕けない告白に、ついには折れてくれたのだ。
折れてくれたというのは正しくない。
ついにカカシの情熱に応えてくれたのだ。
ほんと、俺って幸せ者だなあ。
好きな人を手に入れた幸福にカカシは、うっとりとしてしまう。
イルカ先生が恋人になってくれて幸せな一年だった。
イルカの顔に見蕩れていたカカシは、そっとイルカの唇に唇を重ねた。
今年一年、ありがとうイルカ先生。
願いを込める。
来年もよろしくね、イルカ先生。
遠くで、ごーおおんと鐘の音が鳴ったのが聞こえた。
大好きイルカ先生。
そっと唇を離した。
年が明けたのだ。
それからカカシは新年早々、今度は愛情たっぷりのキスをイルカに贈ったのだった。






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