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二年参り



大晦日の夜。
「イルカ先生」
カカシは自分に寄り掛かって、うとうとしていたイルカの肩を揺すった。
「起きてください、そろそろ時間ですよ?」
行きましょうか、と声を掛けたのだが肝心のイルカはカカシの肩に頭を預けたまま、 むにゃむにゃと何事かを言っている。
寝言みたいだ。
辛うじて聞き取れたのは「・・・眠い、でも行く・・・」と片言の単語だった。
カカシとイルカはコタツに一緒に入ってテレビを見たり話をしたりして、のんびりと酒を飲み、 少し贅沢な食事をして年末の雰囲気を満喫していたのだ。
二人が一緒に正月を過ごすことなど初めてであった。
いつも、どちらかが仕事や任務でいなかったから。



カカシと一緒に正月を過ごせると知ったイルカは嬉しそうに言った。
「じゃあ初詣でに行けますね、一緒に」
「ああ、お参りね」
「はい、二年参りに行きましょう!」
イルカは張り切っていた。
「二年越しでお参りするんですよ」
「へえ〜」
「夜の零時前に今年一年ありがとうございましたってお参りして、 年が明けたら今年もよろしくお願いしますって、またお参りするんです」
なんだか面白そうだとカカシは思った。
初詣なんて行った記憶はなかったし、ましてや二年参りなんて特に興味をそそる。
だって、当然・・・。
「それって夜に行くんだよね?」
質問するとイルカは頷いた。
「そうですね、夜に初詣でに行きます」
ぜひ行きたいとカカシは思った。
一年の初めに夜に二人きりで出かける、つまりデートできるなんていい!と思ったのだ。
正しくはデートではなくて初詣であったのだけれど。



そして夜、今に至る。
夜、零時前に家を出ないと二年参りはできない。
しかしイルカは眠そうであった。
行くと言いながら中々、カカシから離れようとしない。
カカシに、ぴったりとくっ付いて気持ち良さそうに目を閉じている。
年末、忙しく働いていたイルカを起こすのが忍びない。
きっと疲れが溜まっているに違いなかった。
だけども一応、起こしてみる。
「イルカ先生・・・」
小声で名を呼ぶとイルカの瞼が、ぴくっと動いて反応した。
「イルカ先生」
耳元で低く囁くように名を呼ぶ。
イルカは、うっとりしたように目を閉じたまま微笑んだ。
そんなイルカの様子に気を良くしたカカシは、もっとイルカに囁いてみる。
今度は甘い口調で。



「好きです、イルカ先生」
甘さに加えて情熱も込める。
「愛しています、ずっとずっと。これからもイルカ先生だけが好きです」
イルカの微笑が、すごく幸せそうなものになる。
安心した、そんな感じだ。
心からカカシに信頼と信用を置いているのが伝わってくるような。
そんなイルカの顔を見ているとカカシの胸も、ぽっとあったかくなり幸せな気分になってしまう。
好きな人がいるっていいことだよなあ。
改めて、しみじみと思った。
好きだという感情が人生を豊かにしてくれるというか。
カカシは一年を振り返る。
イルカ先生がいてくれてよかった、イルカ先生を好きになってよかった。
イルカ先生がいてくれたから辛いことも苦しいことも乗り越えられた。
自分を待っててくれる人がいるから。
自分を好きでいてくれるから。



カカシの肩に乗っていたイルカの頭が、かくっとなってカカシの腕の中にイルカの体が落ちてきた。
そんなイルカを優しく受け止める。
寝ているイルカの体はあたたかった。
腕の中に、しっかりとイルカを抱く。
その時、遠くから鐘の音が聞こえてきた。
ごーんごーん、と聞こえるのは除夜の鐘の音。
年が明けたのだ。
新しい年の幕開けだ。
時計も零時を過ぎている。
気分も一新された。



「イルカ先生」
腕の中で完全に眠ってしまったイルカにカカシは優しい顔を向ける。
「年が明けましたよ。明けましておめでとうございます」
そう言って、そっとキスをした。
ふふふ、と密やかに笑う。
「初キスですね〜」と、にやけてしまうカカシである。
「今年もよろしくお願いしますね、今年だけじゃなくて来年も再来年も、その先もだけど」
二年参りは行けなかったけれど、また行けばいい、とカカシは思った。
これからもイルカ先生と一緒なのだから、したいこともやりたいことも、ゆっくりと時間を掛けて実行すればいい。
急がなくていいのだ。
自分たちに時間はたくさんある。
だって、このイルカ先生への愛が変わることはないと確信しているし、 それ故に離れ離れになることはなく一緒にいることは未来永劫、変わることはないのだから。



そう思ったカカシは眠っているイルカを抱き上げるとベッドに行き一緒に布団に潜る。
イルカを抱きしめ眠りに落ちながら、どんな初夢が見られるだろうと、わくわくする。
願わくば自分とイルカ先生が、いちゃいちゃしている夢がいいなあと思ったりなんかして。
次の日、目が覚めたイルカは自分が眠ってしまい二年参りに行けなかったことを、 カカシに詫びていた。
「ほんと、ごめんなさい。自分から言い出しておいて・・・」
眠ってしまうなんて、と身を縮こまらせている。
「いいんですよ、イルカ先生」
カカシは、にっこりと笑った。
「俺、いいこともありましたから」
無論、初キスのことである。
寝覚めもよく、初夢は幸せ満載の夢であった。
しかしカカシは、そのことは内緒にしておいてイルカに言ってみる。
「だったら俺にキスしてくださいよ」
それでちゃらにしましょう、とおねだりする。
ちょっと赤くなったイルカは少し躊躇ってから、カカシにキスをして。
そして新年の挨拶をした後、はにかみながら言った。
「カカシさん、今年も好きです大好きです」と。
新年初めから今年最大の幸福が訪れたカカシだったのであった。




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