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猫鳴き注意報



イルカはアカデミーでの休み時間、校庭で子どもたちと遊んでいた。
子どもたちが安全に遊んでいるか、怪我をしたりしないかという監督も兼ねて。
きゃーきゃー、わーわーと子どもたちは大きな声を上げて校庭を走っていたりする。
元気はつきないようで、あっちで縄跳び、あっちで駆けっこ、あっちでは鬼ごっこ、あっちでは隠れんぼと様々な遊びをしている。
次から次へと遊びが涌き出てきて尽きることがない。
「イルカ先生ー」
生徒の何人かがイルカに駆け寄ってきた。
低学年の小さい子どもたちだ。
「ん、どうした?」
イルカは屈んで、子どもたちと目線を合わせる。
「あのねー、ニャンコがいるの」
「ああ、猫のことか?」
「うん、ネコちゃんがねえ、おうちにいるの」
「カワイイの」
「にゃあって鳴くんだよー」
どうやら、子供たちの何人かは家で猫を飼っているらしく、その話をしていたらしい。
「へえ、そうかー」
イルカは笑みを浮かべて、子供たちの頭を撫でながら話を聞いている。
その顔は実に優しい。
「猫が可愛いのかあ」
「うん!」
子どもたちは、にこにこしている。
無垢な笑顔だ。
無垢ゆえに、時々、とんでもないことを仕出かすこともあったが。
「イルカ先生もネコちゃんに会いたい?」
「声、聞きたい?」
「にゃんって鳴くの聞きたい?」
「ネコ、好き?」
矢継ぎ早に聞かれて、イルカは頷いた。
「そうだな、猫も好きだよ。そんなに可愛い猫なら、ぜひ見てみたいなあ」
声も聞きたいな、とイルカが言ったときだった。
「じゃあ、見せてあげるね!」
張り切った子どもの一人が指で印の形を作る。
指の動きが怪しい。
何かをしようとしているのだが、何をしようとしているのか、さっぱり分からない。
何が起こるか分からない術は危険すぎる。
おまけに怪しいながらも、忍の卵なので妙に印を切る指の動きが早い。
「あ、こら!止めなさい!」
イルカが急いで止めようと子どもの手を押さえたのだが、時既に遅し。
何が、どうなったのか・・・。
ぼふん。
術が発動し、イルカは白い煙に包まれた。



白い煙が晴れたとき、特にイルカに変わったところなかった。
外見もそのまま、体にどこかに痛みがあるわけでもない。
一応、自分で自分の体を点検してみたものの、変化はない。
「あー、ネコちゃん出なかった」
術を発動させようとした子どもが残念そうに言った。
「ネコちゃん、ここに出る術があるんだよ」
どうやら、口寄せをしようとしたらしい。
しかし、それには契約を結ぶ必要もあるし、他にも色々問題がある。
「あー、失敗しちゃった」
「あのなあ」
イルカは口寄せしようとした子どもに注意しようとして口を開いた。
よく知りもしない術を気軽に使おうとしてはいけない。
自分も周りも危険だ。
そのことを言おうとしたのだが・・・。
「術を無闇に使おうとしてはいけない、ちゃんと勉強と修行をして知識を得てからだ」
「はい、ごめんなさい」
子どもは素直に謝る。
「分かればよし」
イルカは子どもの頭を撫でた。
そして次の瞬間、自分でも意識しなかった言葉が出た。
「にゃあ」
にゃあ?
まるで、猫の鳴き声のようだった。



「で?」
綱手は目の前のイルカを見て、眉を潜めつつも面白そうな顔をする。
「なんだって?」
ちなみに綱手は火影で木の葉の里の長を務めていた。
「あのですね」
もじもじとするイルカは実に言い難そうに口を開く。
「今日の受付業務は免除してもらいたいと思いまして・・・」
そこで、ぐっと何かを堪えるように唇を噛む。
油断しないように。
油断すると出てしまうから。
「あのなあ」
綱手は持っていた筆でイルカを指した。
「忙しいから無理だ。今日は特に交代の人員が少ないんだ」
「ですよね・・・」
イルカの肩が、しょぼんと落ちて口から言葉が漏れ出た。
「にゃあん」
慌てて、口を押さえる。
真っ赤になっていた。
「あー、それでか」
にやり、と綱手は人の悪い笑みを浮かべた。
「それで、受け付けに入りたくないのか」
こくこく、とイルカは何回も頷く。
「子どもに中途半端な、おかしな術を掛けられたんだって」
「はい・・・」 「それで、話すと最後に猫の鳴き声が出てしまうと」
止められなかったイルカは面目ないと言った顔だ。
「不徳と致すところです」
また、口から「にゃあ」と出る。
「ふむふむふむ」
「不肖ながら自分で術を解くことができません、もしも火影さまに解術していただけるのなら」
またまた、「にゃああ」とイルカの口から出てしまう。
「そうだねえ」
腕を組んだ綱手はイルカを、じっと見る。
それから首を振った。
「逆に解かない方がいいだろう。子どものやったことなんだから一日もすれば解けると思うしな」
「そうですか、にゃああん」
イルカは明らかに、がっくりとしたようだ。
「こんなんで」
うるっとした黒い瞳で綱手を見ると、手を祈るように胸の上で合わせる。
「こんなんで受付所に入ってしまったら」
恥かしくて死んでしまいます、と必死で訴えた。
訴えたものの、語尾に「にゃあん」と付くので緊迫感はない。
その「にゃあん」や「にゃあ」や「にゃー」は成人男性に不釣合いなほど可愛らしい鳴き声になっている。
しかも可愛い鳴き声がイルカには違和感なく、似合っていた。
「お願いします、火影さま」
一世一代のお願いです、にゃんとイルカはお願いしたのだが。
悲しくもお願いは華麗に却下された。



「なーに、からかうやつがいたら私が雷を落としてやる」
だから大丈夫だ、と受付でイルカの隣に座る綱手は明らかに面白がっている。
「ぜんぜん平気だから、いつもと変わらずに受け付け業務をしていいぞ、イルカ」
イルカの返事はなく、小さく頷くのみだ。
顔色は非常に悪い。
眉は下がり、ともすれば泣き出す一歩手前みたいな顔になっている。
口を開いては閉じ、閉じては開きを繰り返していた。
頻繁に綱手を見ては目で何かを訴えていたが、その度に綱手は大丈夫だを言っている。
「火影さま・・・」
言って、イルカは唇を噛み締めて。
「あ、ほら。人が来たぞ、イルカ」
ちょうど、来た人物を見てイルカは悪かった顔色を、ますます悪くさせた。
絶対に、このことを知られたくない人物ナンバーワンだったりする。
「はい、報告書お願いします」
その人物はイルカに任務の報告書を提出してきた。
他にも受付する人間はいたのだが、イルカを選んでの提出だ。
「あ、はい・・・」
言葉少なに報告書を受け取ってイルカは、怖い顔をして唇を噛んでいる。
眉根を深く寄せて、意識を保っているような。
「あれー」
報告書を提出した人物はイルカの様子を見て、首を傾げた。
「なんだかイルカ先生、顔色が冴えませんね。体調が悪いんじゃないですか?」
心配そうにしている。
「い、いえ・・・」
イルカは首を、ぶんぶんと振って否定した。
目の前の人物にだけは術が掛かっているのを、ばれてはいけないと細心の注意を払って。
喉まで出掛かっている言葉を死ぬ気で押さえていた。
ばれたらヤバイ・・・。
それだけだ。



「終わり、です・・・」
イルカは目の前の人物と視線を合わせることは勿論、顔を見ることもせずに俯いたまま報告書の受領を終了させた。
「ふーん」
いつもと違うイルカの様子に目の前の人物は、はっきりと不信感を抱いている。
何かが違うと感じたのだろう。
曲がりなりにも里を代表する有名な忍なのだから。
銀色の髪はトレードマークになっている。
じろじろとイルカを眺めると、目の前の人物は普段は隠している右目を露わにした。
写輪眼と呼ばれる、チャクラの流れなどを読み取る便利で万能な眼だ。
「ふ〜ん」
今度の声の響きは先ほどとは違う、楽しそうなものだった。
「なるほど〜、そういう訳だったんですね」
実に愉快そうにして両の口角を上げた。
「俺、聞いてみたいなあ、ぜひとも」
イルカを指差して隣にいる火影に尋ねた。
「でも、そういうのは二人きりじゃないと嫌なんで」
にや〜っと笑った、その顔はどう見ても悪巧みをしている顔にしか見えない。
「写輪眼で視たところ、効力は今日の夜までみたいですし。それまで堪能したいなあ〜」
そして言った。
「お持ち帰りしてもいいですか?火影さま」
「な、なにを言っているんですか!」
余りの内容に、いきり立ってしまったイルカは喋ってしまった。
だもんで、あの言葉も出る。
「にゃああん」
はっとして口を押さえたが、もう遅いのは確実だ。
「あららら」
「あらららじゃありません、にゃ」
「可愛いなあ」
「俺は恥かしいのを我慢して真面目に仕事をしているのに、にゃん」
「もーう、我慢できません」
「我慢できないって何が・・・。わあっ、にゃーん」
我慢できなくなったのか、当の人物はイルカを担ぎ上げた。
「それでは火影さま、俺とイルカ先生は帰りますから」
瞬間移動の術でも使ったのか、二人の姿は消えてしまう。
「あーあ」
綱手は溜め息を吐いた。
「ほどほどにな、カカシ」
イルカを連れ去った忍の名を呟いた。






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