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虹色パラダイス



アカデミーの授業の休み時間。
俺は、こっそり溜め息を吐いていた。
運動場での訓練が続くので、まだ外にいる。
子どもたちは休み時間だというのに休むことなく運動場内を走り回って遊んでいる。
元気だなあ。
その元気、俺にも分けてほしい・・・。
はあ、と続けて溜め息が出た。
運動場の隅で膝を抱えて座っている俺って暗い。
俺の周りの空気だけ、どんよりとしていると思う。
こんな事態に陥っているのは他でもない。
カカシ先生の所為だった。



正確にはカカシ先生が昨日、言ったことが原因だった。
何が原因だったかと言うと・・・。
思い出したくないのだが、つまり・・・。
ふと顔を上げると運動場の片隅に人が集まっているのが見えた。
もしかして誰か怪我でもしたのか?
心配になって大急ぎで駆け寄ると人だかりから歓声が上がっていた。
主に女の子の。
「ほんとにしたの?」
「ロマンチック〜」
「いいなあ」
夢見るような言葉が聞こえてくる。
あとは、きゃーきゃーという黄色い声。
それから、とっても聞き覚えのある声が。
こちらの声は、どちらかというと悪夢を連想させる・・・。
「いいでしょ?俺、とっても幸せなんだよねえ」
「どんな風にキスしたの?」
「教えて教えて〜」
「ふふ、内緒」
「ええ〜」
女の子たちは一斉に抗議している。
「どうして知りたい〜」
「だーめ。恋人とのことは二人だけのひ、み、つ」
初めてのことなら尚更ね〜、って得意げに話している、その人物は・・・。
「カカシ先生!」
見まごうことなきカカシ先生だった。
「あ、イルカ先生」
しゃがみこんで子どもたちと話していたカカシ先生は、ひらひらと手を振ってきた。
にこにこと笑っている。
「俺に会いに来てくれたの?」
見当違いの返事を返された。
「違います!」
俺は子どもたちをかき分けてカカシ先生の傍に行く。
「子ども相手に何を話しているんですか!」
「えー。何って、それはですねえ、イルカ先生との恋の・・・」
やばいことを話しそうなカカシ先生の口を慌てて手で塞いだ。
「だ、だめです!」
これ以上、余計なことをぺらぺらぺらぺら話されては適わない。
カカシ先生の口を押さえながら俺は集まっていた子どもたちに言った。
「さ、あっちに行きなさい。もうすぐ休み時間は終わりだろ」
授業の用意をしなさい、と。
「はーい」
子どもたちは揃って頷くとカカシ先生に「バイバイ〜」と手を振る。
カカシ先生も手を振っていた。
・・・いつの間に子どもたちと仲良くなったんだ?
不思議な人だなあ。



そんなことより。
子どもたちが行ってしまったのを確認して俺はカカシ先生の口から手を離した。
カカシ先生を睨む。
「こんなとこで何をやっているんですか?」
「えーとですねえ」
にやっとするカカシ先生。
はっと思った時には俺はカカシ先生の捕獲されていた。
っていうか腰に回った手が、がっちり俺を押さえて逃げられなくなっている。
この手が一度狙った獲物を逃がさないということは昨日、いやっというほど理解した。
身に沁みている。
「ちょ、ちょっと離してください。俺、これから授業があって・・・」
焦って訴えるとカカシ先生が余裕の笑みを浮かべた。
「もちろん、授業があるのは分かっていますから、それまでには離してあげますよ」
俺は今、離して解放してほしい。
「まあまあ、そんな顔しないで」
カカシ先生の顔が俺に顔に触れるほど近づいた。
「昨日はあんなに仲良くしたじゃないですか」
思わせぶりな口調で。
「な、何を言い出すんですか!」
俺は必死で抵抗した。
「な、仲良くなんてしてないです」
「へー、そんなこと言うんですか・・・」
すっとカカシ先生の目が細まる。
「ひどいなあ、イルカ先生」
責められると罪悪感が押し寄せてきた、別に俺は悪くないはずなのに。
カカシ先生の黒い瞳が俺を、じっと見詰めてきて吸い込まれそうな感覚に陥ってしまう。



「恋人の俺を蔑ろにするんですね」
「な、蔑ろって・・・」
そもそも、恋人が前提ってのが間違っているような・・・。
「恋人には、もっと優しくするべきですよ」
宥めるような口調だ。
「恋人だなんて言っても」
俺は眉を顰めた。
成り行きで俺がした発言が発端だけど、まさかカカシ先生とこうなるとは予想だにしなかった。
予想外だった。
でも。
「先に俺を恋人だって言ったのはイルカ先生ですよ」
それを指摘されると、ぐうの音も出ない。
・・・すべては俺の不用意な発言が招いたことなのだ。
「それはそうなんですけど」
困って視線を下に向けると低く声で笑っている。
思わず顔を上げるとカカシ先生は苦笑していた。
「本当に可愛い人ですね、イルカ先生って」
「可愛い、だなんて」
俺は、かーっと顔が熱くなった。
勝手に胸が、どきどきしている。
「男が可愛いなんてあり得ないです」
小さい声で呟くとカカシ先生は否定した。
「いいえ、本当です。だって昨日も可愛かったですよ」
「昨日・・・」
昨日のことを思い出すと顔までか体も熱くなってくる。
昨日のことって、あれのことだよな。
あれしかない。



白状すれば。
結局のところカカシ先生の予言したとおりの結末になってしまったのだ。
一緒に帰ることになって夕飯食べた後に、何故かカカシ先生の家へお邪魔することになって。
この辺の経緯は定かではない。
気がつくとカカシ先生の家へ行くことになっていたのだから。
カカシ先生の話術が巧みというか図られたというか。
・・・罠から逃げられなかったというか。
カカシ先生といて楽しかったというのもある。
今まで、そんなに話したこともなかったし、話してみるとカカシ先生と気が合うというのも発見した。
なのに。
カカシ先生の家へ行ったら雰囲気が一変して、なんというか、その・・・。
上手く表現できないがいわゆる、なんというか、その・・・。
ちゃんと好きだと告白されてキスしてしまった、カカシ先生と。
思い出すと恥かしくて死にそうになる。
今にも倒れそうだ。
・・・カカシ先生の手が腰に回っているから倒れることはないけれど。
しかもカカシ先生にキスされて嫌じゃなかったのが、またショックであった。
男同士なのに、なんで?
キスされて呆然として、そのことを口にするとカカシ先生は嬉しそうな顔になっていた。
「それはイルカ先生も俺のことが好きだからですよ〜」って。
・・・そうなのだろうか。
昨日一日だけで?
「恋に時間は関係ありませんよ」
諭すように言うカカシ先生の口調は大人だった。
「一目会った、その日から俺はイルカ先生に恋したんですから」



カカシ先生の言ったことを思い出すと目眩がする。
すごい、俺には言えない、こんなこと。
言われて、実際に目眩がした俺はカカシ先生の家に泊まることになってしまった。
誤解のないように言うが一応、カカシ先生は宣言したキス以上のことはしなかった。
しかし泊まることは同棲の第一段階になるのだろうか・・・。
俺が心配しているとカカシ先生が俺の腰から手を離した。
「あ、授業が始まりますよ」
すっかり忘れていた。
「行ってらっしゃい、イルカ先生」
カカシ先生が手を振る。
「あ、どうも」
頭を下げるとカカシ先生が、どろんと煙を共にどろんと消えた。
「今日も迎えに行きますからね」って言葉を残して。
カカシ先生に迎えに来られたら絶対に一緒に帰ってしまう。
そしてご飯を食べてカカシ先生の家へ帰ることになるのかなあ。
俺は空を見上げた。
遠くに空に虹が見える。
カカシ先生と俺は恋人でいいのだろうか。
人生初の恋人が男でキスされて、それが嫌じゃなくて。
一緒にいると楽しくて、見つめられるとどきどきしてしまう。
これって、もしかして恋ってやつか!
自分の閃きに、どきりとする。
恋人ができてから恋をするなんて順番が逆じゃないか・・・。
でも、まあ。
俺はカカシ先生の顔を空に思い受かべる。
優しい顔や嬉しそうな顔をするカカシ先生。
嫌いじゃなくて好きだ、きっと。
自分の気持ちが解ったからにはカカシ先生に今日にでも好きだと伝えてみよう。
勇気を出して。
成り行きで恋人になったカカシ先生と俺だけど。
きっと未来は綺麗な虹色になるに違いない。





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