AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


例えば闇鍋





夕方、上忍控え室で暇そうにしていた紅がポツリと呟いた。
「暇だわ。」
やはり暇だったらしい。
紅は、がっと立ち上がり拳を握った。
「こんな時は鍋をやるしかないわ!冬ですもの!明日は休みだし!」
傍にいたアスマとカカシに、きりりと命令する。
「アスマ、カカシ!今日、鍋やるからメンバーに召集かけなさい。」
「鍋って、あの鍋か?」
アスマが嫌そうに聞くと紅は強く頷いた。
「あの鍋よ!盛り上がるには、あれしかないわ!」
あの鍋は紅の気分次第で時々開催されていた。
だから火影邸から大きい鍋を借りてきなさいと紅はアスマに言う。
「あ、会場はアスマの家よ。」
アスマは逆らっても無駄だと分かっているようで不承不承頷いた。
カカシには、召集メンバーの書いた紙を渡して必ず来るように伝えることを厳命した。
「余程の用がない限り、断ったら心底、恐ろしい目に合うと言っておいてね。」
「そのままでも充分怖いよ。」
要らぬことを言ってカカシは紅に拳骨を貰う。
「いいこと、一人一品食べたいものを持ってくるようにも言ってね。」
じゃあ今夜七時決行よ、と言い捨てて、準備があるからと紅は控え室を出て行った。
鍋は飲み会も兼ねているので、お酒の買出しに行くと思われる。
アスマとカカシは溜め息をつきながら言われたとおりに動くしかないと諦めた。
あの鍋、つまり闇鍋決行のために。







召集メンバーに入っていたイルカは仕事が終わってからカカシと一緒に、アスマの家に向かっていた。
「楽しみですね。」
イルカは浮き浮きとしている。
「楽しみ?」
イルカの言葉にカカシはびっくりする。
「あの紅主催の、あの鍋ですよ?」
「人がたくさん集まって、わいわい賑やかで俺、あの雰囲気好きなんです。」
「はあ。」
「それに俺、今日はチョコレート持って来ました。」
イルカは板チョコ三枚を手にしている。
カカシは牛肉を持参していた。
因みにイルカが好きだったからである。
「チョコって・・・。」
カカシは思わぬイルカの行動に絶句する。
「鍋には合わないんじゃ・・・。」
「だって、闇鍋ですもん。」
イルカは楽しそうに答えた。





メンバーは意外に集まっていてアスマの家は大勢の人で、ごった返していた。
「すごいねえ。」
「そうですね。」
何人かは既にお酒を飲み始めている。
「あ、カカシさん、イルカ。いらっしゃい、飲まないと食べられませんよ、今日の鍋は。」
「そうそう、なまじ味覚があると辛いですからね。」
そう言うゲンマとライドウは結構な量を飲んでいるのが見てとれた。
二人は陽気な酔っ払いに変身している。
「あー、そう。」
素っ気無く答えるカカシは、早速ゲンマにお酒を注がれていた。
「まあまあ、不景気な顔してないで飲んで飲んで、カカシさん。」
イルカは自分とカカシの食材を持って台所に行ってしまった。
残されたカカシは、ちょっと寂しかった。





イルカの行ってしまった台所を見ていると、アスマが可愛らしい熊の鍋掴みした手で大きな土鍋を運んできた。
テーブルの上のコンロに置くと美味しそうな匂いが部屋中に漂う。
後ろから付いてきた紅が説明した。
片手には日本酒が入ったグラスを持っている。
「じゃーん!今日は流行のカレー鍋よ!カレーの色と匂いで食材は分からない上に食欲増進間違いなし!」
紅は少し酔っているようだ。
「食べられないものはなかったから大丈夫よ!」
カカシが鍋の中を覗いてみると茶色液体が、ぐつぐつと音を立てて沸騰していた。
カレー鍋というより、煮えたぎるマグマのようだった。
これ、食べたら腹壊すんじゃ・・・。
するとカカシの顔色を読んだのかゲンマが横から言ってきた。
「俺、皆が腹壊さないように液体胃薬持ってきましたぜ。」
「・・・液体胃薬?」
ライドウも言う。
「俺は鯛焼きです。来る途中に買ってきました。」
「お前ら、何持ってきてんだよ。」
聞いたカカシは頭が痛くなってきた。
本当に、この鍋を食べなきゃいけないのか?
来たことを後悔し始めていた。





「じゃあ、上忍から順番に鍋の中のものを取るのよ。取ったら完食すること、鍋の中が空になったらお終いよ。」
紅が勝手にルールを決めている。
「でも特別上忍は三回に一回パスで、中忍は二回に一回パスでいいわ。」
パスの時は鍋の中のものを食べなくてもいいらしい。
「上忍は?」
アスマが情けない顔で聞く。
「パスなしに決まってるじゃないの。」
紅が楽しそうな笑顔で言い、鍋は始まった。





皆、カレーの味と匂いのお蔭か何とか鍋の中味を食べていた。
カカシも苦戦しながら、どうにかクリアしている。
「でもさ、ゲンマ。」
「はい?」
「ちょっと、薬品の匂いがするよ。」
多分、薬品とは液体胃薬のせいだろう。
それに、そこはかとなくチョコや餡子の甘味も加わっている。
「大丈夫大丈夫大丈夫。」
ゲンマは根拠のない自信を掲げた。
そうそう、とライドウも隣で同意している。
二人は、とっくのとうに酔っ払っいだ。
「はあ〜。」
カカシは溜め息付きながら離れて座っているイルカを見遣った。





イルカはハヤテと楽しげにお酒を酌み交わしながら会話している。
「こんな時は中忍でよかったな、ハヤテ。」
「ですねえ、三回に一回だけ食べればいいですから。」
ハヤテは時折、ごほと咳をしているが体調は良さそうだ。
イルカ先生こっちに来ないかな〜。
カカシがじっと見つめると視線を感じたのか、イルカがカカシを見て微笑み軽く手を振った。
釣られてカカシも手を振り返す。
するとイルカが何を思ったのか、ひょいとカカシの傍に来た。
傍に来たイルカはカカシに、にっこりと笑いかけてきた。
また、釣られてカカシもにっこりする。
「カカシさん。次、カカシさんの番ですよね?」
次とは鍋の順番である。
「え?ええ、そうですね。」
「じゃ、俺、食べさせてあげますね。」
「え?」
イルカはカカシの返事も待たず、取り箸になっている菜箸を豪快に鍋に突っ込むと、ある物体をカカシの取り皿に入れた。





カカシの使っている箸で、その物体を突き刺してカカシの目の前に持ってきた。
「はい、どうぞ。」
「あ、あの、イルカ先生?」
普段はこんなことしてくれないのに、どうしちゃったの?
カカシは嬉しいながらも、ちょっとだけ戸惑う。
見ればイルカの目は、とろんとしていた。
仄かに顔も赤みが差している。
「イルカ先生、酔ってますね?」
「酔ってませーん。」
どう見ても酔っていた。
「さあさあさあ。食べてください、カカシさん。」
イルカが迫ってくる。
覚悟を決めてカカシは、その物体を口に入れた。




「美味しいですか?」
イルカが無邪気に聞いてくる。
「ええ、まあ。」
カカシが食べたのは、茶色くなった茹で卵だった。
しかし鍋の中の様々な味な沁みこんで何ともいえない、おつな味になっていた。
酒で流し込んで一息つくとイルカが、にこにこ笑っている。
周りを見ると集まった皆も、とても楽しそうで。




たまにはいいか。
忍者にも休息は必要だしね。




そうして冬の夜は楽しく賑やかに過ぎていった。







text top
top