AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
ハイスペック専用サーバー
39周年!BIGサンクスキャンペーン


優しい人の起こし方



遠くの方で声がする。
低く静かで落ち着いた、俺を寛がせる大好きな声。
声と共に、優しい仕草で髪や肩や体を撫で摩る。
なんと心地よい。
安心する手だ。
自分の顔に笑みが浮かぶのが分かる。
ああ、ずっと、こうしていたい。
このままでいたい。
今日は仕事に行かないでいいなら、どんなにいいだろう。


仕事!
俺は電気のスイッチが入ったように、ぱっちりと目を見開いた。
がばっと、すごい勢いで起き上がると時計を見て時間を確認する。
「えええっ。もう、こんな時間じゃないかーっ。」
アカデミーの始業時間の十五分前。
な、何でこんなことにっ。
「イルカ先生、おはよう。」
大慌ての大急ぎで支度をする俺の横にカカシさんはいた。
挨拶されても返せる余裕がない。
カカシさんは、「ほらほら。」と俺の着替えを手伝ってくれる。
「急がないと遅刻だよ〜。」
にこにこして機嫌がいいのは何でなんだ・・・。
「何で起こしてくれないんですか?」
俺が恨みがましく言うと「起こしたよ〜。」と返事が返ってきた。
「一時間くらい前から、イルカ先生のこと撫で撫でしていたんだけどねえ。」



あの心地よい声と手はカカシさんだったのか。
でもさ。
「あれは起こすって言いませんよ。」
「そうなの?」
「おまけにカカシさんは今日休みなのに、何で俺より早く起きてるんですか?しかも忍服に着替えてるし。」
喚くように言う俺にカカシさんは、用意していたのであろう朝飯を俺の口に押し込んできた。
「まあまあ、食べてよ、時間ないし。」
楽しそうにしているカカシさんが解せない。
そんなことをしている間に時間は刻一刻と過ぎて。
「ああっ、残り十分切った。どうしよう。」

俺の足では、自宅からアカデミーまで最速で走って十一分は掛かる。
完全に遅刻じゃないか。
真っ白になる俺にカカシさんが言ってきた。
「イルカ先生、早く乗ってよ。」
「え?」
既にカカシさんは玄関で履物を履いて俺に背中を見せている。
「送って行ってあげるから。イルカ先生を背負っても俺なら五分くらいで着くよ。」
カカシさんは、にこやかにしている。
なんて余裕の発言なんだ。
背負われるのは恥ずかしいけど、でも背には腹は変えられない。
遅刻するよりましだ。
なので俺はカカシさんに背負われて、瞬く間に職場に着いた。



「ああ、間に合ったねえ。」
カカシさんはアカデミーの玄関先で俺を下ろしてくれた。
始業時間三分前で、ぎりぎりの十歩手前のセーフだ。
「ありがとうございました、カカシさん。じゃ、行って来ます。」
挨拶もそこそこにアカデミーに飛び込んで行く俺の後ろで声がした。
「お昼になったら、お弁当持ってきますね。」
え?と振り向くと「お昼に、また来ます。お弁当、一緒に食べましょうね。」とカカシさんが手を振っていた。
とりあえず急ぎ頷いて、職員室で自分の席に着いて、ほっとした俺はふと思った。



カカシさん、暇なのかな?
休みなんだから、休めばいいのに。
俺に構ってばっかりいて、楽しそうにしているし。
優しい人だなあ。
そして朝の心地よい手を思い出して、俺は一人で赤くなってしまったのだった。










text top
top