AIで普通の動画を3D動画に変換する


LONG



七班での任務の最中、サクラがしきりに髪の毛を気にしていた。
髪の毛の先を触っては溜め息、触っては溜め息を繰り返している。
髪型が気になるようだ。
あんまり髪の毛を気にして任務に集中できないようので注意を兼ねて訊いてみた。
「どーしたの、サクラ。任務に集中してないみたいだけど、そんなに髪の毛が気になるの?」
あ、サクラっては俺が指導している下忍の女の子。
桃色の長い髪の毛が自慢らしい。
「え、ああ。そうですねえ」
サクラは、ちょっと笑って肩を竦めた。
「この前の休みに美容院に行くの忘れちゃって。髪の長さとか揃っているかと気になるんです」
「ふーん」
「今日の任務が終わったら美容院に行ってきます」
任務もちゃんとします、と聡いサクラは俺が任務を真面目にするように言おうとしていたことを察したらしい。
しかし。
ふむ、と俺はサクラを見た。
サクラは、まだ子供だ。
俺の目から見ても子供しか見えないのだが。
美容院ねえ。
女の子は違うねえ、と俺は横目で任務中に喧嘩している男子二人を見た。
男子二人は髪型なんてものに対して欠片も関心がないようで。
それなりに整えてはあるもののサクラのように美容関係に関心はないらしい。
まあ、そんなもんだよね、男子なんて。
俺は肩を竦めて子供たちが任務を遂行するのを眺めていた。



休憩時間にサクラが思い出したように訊いてきた。
「カカシ先生は髪は、いつもどこで切っているの?」
「え、髪」
「そうです」
サクラは、したり顔で頷いた。
「だって髪って伸びるでしょう。カカシ先生は髪が伸びたら、どうするんですか?」
「あー、そうだねえ」
髪が伸びたら・・・。
「鏡を見て髪が伸びたなあって思ったら、普通に床屋さんに行って切っているよ」
「そうなんですか」
俺の答えにサクラは、がっかりしたようだ。
「カカシ先生なら、もっとすごい髪の切り方していると思ったのに」
あのね・・・。
すごい髪の切り方って何なんだ、と突っ込もうとしたけれど。
とんでもない答えが返ってきそうだったので俺は辛うじて堪えた。
女の子は怖いからねえ。



夕方、報告書を出しに受付所に行くと混んでいた。
混んでいたが俺が報告書を出す人は決めているので長くても、その人の列に並ぶ。
ついに俺の順番が回ってきた。
「お疲れ様です」
その人は俺を見上げて微笑んでくれた。
いつも人懐こい笑みを絶やさない、その人はイルカ先生だ。
俺が指導している下忍の子供たちの元アカデミーの先生。
下忍の子供たちが縁で知り合った。
今、現在、目下、俺がとても気になる人だ。
「どうも〜」
俺も、にこにこと微笑み返す。
差し出した報告書を渡すとイルカ先生は熱心にチェックを始めた。
視線が左から右へと流れていく。
それを上から見ていると、はらりとイルカ先生の髪が落ちてきた。
イルカ先生は頭の天辺で髪を一つに結っているのだが、その髪の先が肩に落ちてきたのだ。
イルカ先生の髪・・・。
出会った頃より伸びて長くなったんだなあ。
見蕩れているとイルカ先生は髪を払って俺に向かって頷いてきた。
「報告書は大丈夫です、受領しますね」
「あ、はい」
髪に見蕩れたまま俺は生返事をしてしまう。
だってイルカ先生の髪が気に掛かる。
あの結っている髪を解いたら、どのくらいの長さになるのだろう。
そしてイルカ先生は髪を下ろしたら、どんな感じなるのだろうか、と想像してしまったのだ。



その機会は案外、早く巡ってきた。
俺が、とある用事で火影さまの部屋へと行った時だった。
用事を済ませて退室しようとすると火影さまの呟きが聞こえてきた。
「あ、この書類は・・・。急ぎの書類なのに忘れておった、イルカに渡すのを」
渋い声に振り返ると火影さまの困り顔。
「渡すを忘れていたなんて知れたらイルカは怒るじゃろうのう」
火影さまはイルカ先生に怒られるのを怖がっているみたいだった。
里の長なのに。
俺はイルカ先生が怒られたことがないけれど。
怒ると怖いのかなあ。
知り合って、そんなに時間が経ってないから分からないけれど。
「イルカ先生は、どこにいるんですか?」
面白くなってきてしまったので火影さまに声を掛けると火影さまは眉を顰めた。
「今日は夜勤明けで、もう家に帰ってしまったのじゃ」
じろっと睨まれた。
「面白がるな、カカシ」
火影さまには全部、ばれていた。
「暇そうじゃのう」
「ええ、まあ。それほどでも」
「どっちなんじゃ」
火影さまは溜め息を吐いて俺に書類を渡してきた。
「これをイルカの家まで届けてきてくれ」
そう頼まれた。



中忍の家にお遣いにいく上忍。
珍しいかもしれない。
火影さまに聞いたイルカ先生の住所を頼りに道を歩く。
イルカ先生の家は程なくして見つかった。
俺が住んでいるのと同じ感じのアパートで。
その部屋の一角にイルカ先生が住んでいる。
イルカ先生の部屋の前に立つと気配は感じるが物音一つしない。
夜勤明けって火影さまが言っていたから寝ているのかな?
俺は控えめにドアをノックした。
コンコン。
返事はない。
もう一回、今度は強く。
コンコンコン。
暫く待っていると部屋の中の気配が動いた。
ゆっくりと玄関に向かって歩いてくる。
「はーい」
眠そうな声と共にドアが開いた。
そこには・・・。



イルカ先生がいた。
寝間着にしているだろう部屋着を着て目を擦りながら欠伸交じりの声を出す。
「どちらさまですか?」
俺の目は一点に釘付けになった。
イルカ先生の髪。
いつもトレードマークのように結ってある髪は下ろされている。
すんなりとした髪は長いままだった。
黒い髪が艶やかに光っている。
「あ、カカシ先生」
瞼が半分落ちたままのイルカ先生が俺を見た。
「どうしたんですか、なんでここに」
眠そうな顔で微笑むイルカ先生は受付とは違う笑顔だった。
なんていうか無邪気というか無垢というか。
子供みたい。
いつもと全然、感じが違う。
「えーっと、あの、これ」
しどろもどろで俺が火影さまから書類を差し出すとイルカ先生は受け取った。
「あー、これ。すみません、届けていただいて」
ぺこっと頭が下げられた。
黒い髪が揺れる。
思わず、手を伸ばしそうになるのを堪えた。
「大事なものなんです、これ。ありがとうございました」
イルカ先生が嬉しそうにする。
「いえいえいえいえ、どうってことないです」
どきどきする胸を押さえながら俺は首を振った。
「これくらい何でもないです、イルカ先生のためならいつだってお安い御用です」
イルカ先生から目が離せない。
「そうですか・・・」
小首を傾げたイルカ先生は俺が言ったことを分かってないのか分かっているのか、薄っすらと笑みを浮かべる。
「じゃあ、これで。おやすみなさい」
それからイルカ先生のドアは、ぱたんと閉じられた。
部屋の中の気配は、また薄くなる。
眠ってしまったのかな・・・。



俺は、そっとイルカ先生の家の前から歩き出した。
さっき見たイルカ先生と頭の中で思い出す。
なんか惹きつけられる、イルカ先生に。
長い黒髪が綺麗だったし。
・・・・・・男だけど。
受付の笑顔も魅力的だけど、初めて見たイルカ先生の子供みたいな笑顔も好感がもてる。
ええとギャップがあるところに惹かれるのだ。
イルカ先生っていいな、と俺は素直にそう思った。
できれば、もっとお近づきになってイルカ先生のことを色々知りたい。
もっともっと話してみたい。
そんな欲求が生まれてくる。
俺が、はっきりとイルカ先生を意識した瞬間だった。
イルカ先生のことを思うと心が躍る。
が・・・。
それから数日後。
イルカ先生と中忍試験のことで激しい口論となり。
イルカ先生に怒られた俺は。
イルカ先生にお近づきになることも話すこともできなくて。
しばらくの間、悶々とした日々と送るのであった。





text top
top