恋の法則
風呂から上がると先にベッドに入っていたイルカ先生が熱心に本を読んでいた。
本のページを捲りながら、難しい顔をしている。
俺的には難しい顔をしているイルカ先生にも萌えてしまう。
眉間に寄せた皺とか、指で触ってキスしたくなるよねえ〜。
熱心に読んでいる本は、職場の同僚から借りてきた本らしい。
「その本、面白いですか?」
声を掛けながら近寄るとイルカ先生が本から目を離して俺を見た。
「面白いというより難解です」
「どんな本なの?」
「ミステリーっていうかサスペンスっていうか・・・。推理小説ですかね」
俺が余り読まない類の本だった。
俺の読む本は専ら決っている。
恋愛小説だ、ただし大人向けの。
「謎解きが難しくて」
「ふーん」
「読み進めているんですけど、さっぱり解りません」
「そうなんだ」
再び、本に目を戻したイルカ先生の頬に素早くキスをして俺もベッドに潜り込んだ。
キスした頬を押さえたイルカ先生が軽く睨んできたけど、そんなことしても可愛いだけだ。
もっとキスをしたくなる。
ま、キスはちょっと我慢して。
俺も自分の本を読む。
イルカ先生は、まだ起きているみたいだしね。
しばらく読んでいるとイルカ先生が「あ!」と声を出した。
「どうしました?」
「謎が解けたんです!」
少々、興奮気味。
顔が紅潮している。
「ミッシツのコイだったんですよ!」
そこがキーポイントで謎は解けました、と言っている。
「へえ、密室の恋ねえ」
この際、謎は置いといて。
密室の恋ってのが俺的には多いに興味がある分野だ。
密室の恋。
なんか憧れるなあ。
イルカ先生と密室で二人きり。
密室でイルカ先生と二人きり。
叫んでも喚いても誰も来ない。
誰にも邪魔されない。
二人だけの世界。
そんな状況になったら、恋に落ちないわけがない。
イルカ先生と密室で恋に落ちたら・・・。
いい!
運命の二人みたいな感じで。
秘密の恋みたいで。
すっごくわくわくするなあ。
でも、とふと思った。
イルカ先生となら密室でなくても恋に落ちるよなあ。
うん、絶対。
現に恋に落ちたのは大草原の大空の下だったし。
もっと若かりし日、俺が尖りまくって傍若無人に振舞っていた頃の話になる。
長くなるのでイルカ先生との初めての出会いの経緯は割愛するが。
まあイルカ先生となら・・・。
いつでも出会っても、どこで出会っても、どんな状況でも恋に落ちるなあ。
何しろイルカ先生だから。
あの時も一目で恋に落ちたっけなあ。
あの時のイルカ先生も可愛かったなあ。
思い出すと顔が、にやけてくるので読んでいた本で顔を隠す。
それにプラスして密室の恋というワードで、つらつらと妄想をしてにやにやしていたらイルカ先生が俺を見た。
「カカシさん」
「はい」
見透かしたように言われる。
「『ミッシツのコイ』とは『密室の恋』ではなくて、『未必の故意』ですからね」
それに「ミッシツじゃなくて、ミヒツです」と聞き違いも指摘される。
イルカ先生は俺の考えなんてお見通しだった。
さすが、俺の好きな人。
「あははは〜」
俺は笑って誤魔化してイルカ先生に抱きついた。
抱きつかれたイルカ先生は「ちょっとカカシさん」とか言って、怒っているが。
それは怒った振り。
照れているだけ。
「もう寝ましょ」
額にキスするとイルカ先生は読んでいた本を渋々と閉じた。
ベッドの脇の小さなテーブルにに置く。
俺も、その上に自分の本を重ねる。
「おやすみなさい、イルカ先生」
「おやすみなさい、カカシさん」
電気を消すと、途端に部屋は暗くなった。
暗闇でキスをするのって、ドキドキする。
イルカ先生を抱き寄せると胸が合わさって、イルカ先生もドキドキしているのが分かった。
「ふふ、ドキドキしている」
このドキドキが堪らない。
とっても愛しくなる。
イルカ先生に、おやすみのキスをして。
抱き合ってイルカ先生と眠る。
イルカ先生となら密室じゃなくても。
どこでだって、きっと恋に落ちるだろう。
それは間違いない。
いつだって、大好きな人だから。
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