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来たるべき日



四月も終わりの何でもない日。
イルカが家に帰宅すると既にカカシが家に居た。
「ただいま」
「おかえりなさい」
イルカをカカシが出迎えてくれる。
家に誰かが居て自分の帰りを待っていてくれる。
素直に嬉しい。
それがカカシとくれば尚更だ。
「今日は早かったんですね」
部屋に上がりながらカカシに話しかけるとカカシは頷いた。
「今日は任務がスムーズに進みましてね。あいつらも精進していますよ」
「そうですか」
現在、カカシは上忍師として下忍の子供達の指導をしている。
その子供達はイルカが、かつてアカデミーで教えていた生徒だ。
カカシが時折、あれやこれやと子供達のことについて話してくれることはイルカとしては聞き甲斐があり楽しくもあった。
「子供達は日々、着実に成長しているんですね」
「まあ」
「カカシさんの指導の賜物ですね」
「いやあ」
照れくさそうな顔をしてカカシは頭を掻く。
頭を掻くのはカカシの癖だ。
この癖をイルカは密かに可愛いと思っているのは秘密だ。
カカシとイルカは子供達が切っ掛けで出会ったのだが、お互いに直感が働いたのかピンときたのか何となく・・・。
何となく二人で一緒にいる時間が多くなり、二人でいるのが居心地が良くなり、家を行き来するようになって今に至る。
何となくなのでイルカからは告白はしていない。
カカシからは、それとなく言われているけれど。



それからカカシが作っていてくれた夕飯を二人で食べる。
食べ終わるとカカシが、にこにことして言った。
「ねえイルカ先生」
「はい」
「デザート食べませんか」
カカシがこんなことを言うなんて珍しい。
カカシは甘いものが嫌いではないが得意ではない。
イルカが買ってくれば食べるが自分で用意することはない。
「デザートって?」
なんだろう。
幸いなことに夕飯を食べても甘いものは別腹のイルカはデザートを余裕で食べることが出来る。
そうを言うとカカシは嬉しそうに頷いた。
「それなら良かったです」
夕飯を食べた後のテーブルを片付けてカカシは冷蔵庫から何やらいそいそと持ってきた。
四角い白い箱のそれは見たことがある。
漂う甘い匂いにも。
「じゃーん!」
効果音を自分で言いながらカカシは白い箱を開けて中身を取り出した。
「ケーキ」
「そうです!」
小さいけれど丸いケーキ。
たっぷりの白いクリームの上の赤い苺が眩しい。
「美味しそうですね」
「でしょう?」
カカシは得意げだ。
ケーキの中央には板チョコレートが乗っていた。
文字が書かれている。
「え・・・。何ですか、これ」
チョコレートの上には、こう書かれていた。
『ハッピーバースデー!イルカ!』
イルカの誕生日ケーキだった。



「イルカ先生、誕生日おめでとう!」
「はあ・・・」
誕生日を祝われて嬉しくないこともない。
というよりも嬉しい。
だが、しかし。
「カカシさん、あの」
もしかしてカカシは知らないのかもしれない。
カカシと付き合ってから初めてイルカの誕生日だし。
「俺の誕生日って」
来月ですけど。
祝ってくれるカカシを前にしてイルカは申し訳ない気持ちで切り出した。
「五月の二十六日が俺の誕生日なんです」
「もちろん、知っていますよ」
うんうんとカカシは頷いている。
「来月も、ちゃああんとお祝いします」
「では今日は?」
何でケーキがあるのだろう。
首を傾げたイルカにカカシは説明した。
「前月際ですよ!」
「え?」
「前夜祭があるのなら前月際があったっていいじゃないですか!」
「はあ、まあ」
よく解らない理屈だ。
だけども───。
「大好きなイルカ先生の誕生日を『誕生日にだけ』祝うのが、もったいなくて」
帰って来るときにケーキ屋さんの前を通って思ったんです。
「今日も祝えばいいって」
そして来月も祝うんです。
「まあ、どちらかというと」
カカシはイルカを見つめて優しく笑う。
「イルカ先生の誕生日を俺が待てなかったというのが本当ですけどね」
「カカシさん・・・」
じんわりと胸が熱くなってくる。
こんなにも祝われる自分の誕生日はいつ振りだろう。
こんなにも誕生日を待ち遠しいと思うのは。



「さ、ケーキ食べましょう」
カカシが丸いケーキにナイフを入れる。
「結婚式のナイフ入刀みたいですね」と言うカカシの顔は、にやけていたのだが。
「ああっ!しまった!」
ケーキを切り分けてからカカシは顔を顰めた。
「蝋燭を立てるのを忘れました」
年齢の数だけの蝋燭に火を灯してイルカ先生に消してもらうはずだったのに。
悔しそうにしている。
「それに」と頭を抱えている。
「結婚式のケーキ入刀なら二人でやらないと意味がないのに〜」
変なところに拘っていた。
「まあまあ」
取り分けてもらったケーキを口に入れてイルカは笑みを浮かべた。
「ケーキが美味しいからいいじゃないですか」
「そういう問題ですか」
「そういう問題です」
イルカは自分の皿のケーキをフォークで切り分けるとカカシの口元に持っていく。
「カカシさんも食べてください」
どうぞと。
ニヤリとカカシの口角が上がった気がした。
「あーんしてって言ってください」
そしたら食べます。
妙に真面目な顔で言うカカシにイルカの笑みに朱が加わる。
「・・・・・・あーん、して・・・・・・」
照れながら小さい声で、それでもカカシのためにイルカは言ってしまった。
もぐとケーキを咀嚼したカカシは目を細めた。
「美味しいです、イルカ先生の味がしますね」
「そんな味のケーキなんてありません」
「イルカ先生の愛を感じます。もっと食べさせてください」
「・・・自分の分を自分で食べてください」
既に真っ赤になってしまったイルカは黙々とケーキを口に運ぶ。
ちらとカカシを見て思った。
───今日のケーキにはカカシさんの愛を感じます。
そんなことは口に出さないけれど。
───ちょっとまだ早いけど。
誕生日を祝ってくれてありがとう。
カカシさん大好き。
今は言葉に出さないけれど。
自分の誕生日にはちゃんと口に出して思いを伝えようとイルカは心に決めたのだった。



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