淡い期待
イルカ先生と一緒の休みの日。
二人で、ゆっくり寝て、のんびり起きた。
いつもの朝より、少し遅い時間だ。
イルカ先生も俺も、たっぷりの睡眠で身も心も充分休養し、たっぷりと充電できた。
元気溌剌で、気分も爽やかだ。
俺の隣で寝ていたイルカ先生がベッドの上で上半身を起こして気持ち良さそうに、うーんと伸びをしている。
「よく寝ましたねえ。」
そう言いながらも、欠伸をしていた。
まだ、寝足りないのかな。
俺は、そんなイルカ先生を微笑ましく見詰めて、なんだか幸せな気分になってくる。
あー、こうやって恋人と二人だけで過ごす休日。
なんて、いいものなんだろう。
ふふふ〜と笑って、幸せを噛み締めていると隣のイルカ先生がベッドから降りた。
「腹、減りましたねえ。」
自分のお腹を擦っている。
朝ご飯食べてないし、よく寝たからねえ。
お腹、減るよねえ、と思いつつ、そう言われると俺も急に、お腹が空いてきた。
「俺、なんか作りますよ。」
イルカ先生は、とことこと台所の方へ行ってしまう。
台所で、冷蔵庫の材料を確認したイルカ先生は、俺のところへ戻ってきて言った。
「朝スパでいいですか?」
「え!」
俺はベッドに寝転がっていたのだが、思わず起き上がってしまった。
今なんて!
朝スパ?
スパってお風呂のことだよね?
二人で朝から仲良く、一緒にお風呂に入るってこと?
それは、なんていいことなんだろう!
生きていてよかった!
俺は嬉しさを押えきれず顔が緩み、突然、降ってきた喜びを味わっていると、更にイルカ先生が言った。
「朝飯、スパゲッティでいいですか?」
・・・・・・スパゲッティ。
朝ご飯はスパゲッティ、つまり略して朝スパ・・・・・・。
「・・・いいです。」
俺は力なく答えるとベッドに、ぼふっと倒れこんだ。
そうだよね、話の流れからして朝から一緒に風呂ってことじゃないよね。
ご飯のことだよね・・・。
ちょっと涙した。
イルカ先生は「分かりました。」と返事をして傷心の俺を置いて、とっとこ台所へ行ってしまう。
台所の方から、朝ご飯を作る音が聞こえてきた。
イルカ先生〜。
きっと俺がした大きな勘違いに気づいていないだろうな。
いや、気づくはずもないんだけど。
朝ご飯の話だったんだから。
にしても、と俺はイルカ先生のいる台所の方を見た。
朝から、なんて罪な人なんだ。
俺を、あんなに喜ばせて、気分は天国にさせたと思ったら、あっという間に希望を撃ち砕き、地の底へ落とすなんて。
読めない人だと思いながらも、俺は思った。
でも、そんなイルカ先生も大好きなんだよね。
世界で一番大好きな人。
そして心の奥で、いつか朝スパ、朝から一緒に二人でお風呂を実現させようと密かに決心した俺だった。
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