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権利獲得者



ある日のことだ。
イルカは火影の仕事の手伝いに来ていた。
溜まった書類を手早く捌くのはイルカの得意技だ。
火影の秘書のシズネと仲がいいのもあってヘルプを頼まれた。
その仕事が一段落してからのことだ。
「イルカさんって」
シズネが心の底から驚いたように言った。
「綱手さまより弱かったんですね・・・」
綱手というのは火影の名だ。
綱手も驚いている。
「私よりも弱いやつがいたなんて・・・」
二人は声を揃えて言った。
「本当に弱い!」
綱手、シズネ、イルカの三人で仕事終了後に、どういう訳かトランプをやることになりイルカは全敗していた。
それが、つい先日のことだった。



「なあ〜、イルカ」
綱手が猫なで声を出した。
「明日、休みだったな?」
「・・・それが何か?」
嫌な予感がしたのだろう、イルカが警戒心満々で綱手を見る。
綱手は火影の執務室で疲れた顔で仕事をしていた。
答えるイルカも疲労の色が濃い。
机の上は書類の山。
机の上に置ききれなかった書類が机の横の床にまで置かれている。
「明日の休みは先日、火影様の仕事を手伝ったために取れなかった休みが伸びたものですよ」
「それは分かっているがな〜」
「現に今日だって夜勤明けで朝で帰れるところだったのを手伝いに来ているじゃないですか」
「そうは言われてもなあ〜」
「だいたい、火影様がですね」
イルカが言いかけたところでシズネが書類の山の陰から顔を出した。
こちらも疲れている。
「すみません、イルカさん。毎回毎回、お手伝いをさせてしまって。こんなときに限ってコテツさんもイズモさんもいないし」
実にすまなさそうな顔をしていた。
「本来ならイルカさんだって忙しいの火影様の仕事の内容をよく分かっているからと、ついつい頼んでしまって」
「いえ、シズネさんが悪いわけではありません」
イルカは慌てて否定した。
「本来ならば、火影様のお手伝いをすることはやぶさかではないのですが、こう何度も続くと・・・」
「私も分かっています。綱手さまが自主的に仕事をしていけば、こんな風になることはないのですが・・・」
シズネとイルカの二人は深い息を吐き、綱手を見る。
「えー、私の所為かい?」
「そうです」
怖い顔をした二人は声を揃えて言った。



「そこまで言うのなら!息抜きを兼ねて!」
何故か綱手が腕まくりをした。
「勝負しようじゃないかい!仕事も飽きたし!」
「勝負?」
「勝負って何ですか?」
「これだよ!」
ばばーんと綱手が懐から出した愛用のトランプを見せた。
「これでトランプをして勝った者が明日のイルカの休みを獲得できるってやつだ!」
「・・・・・・え?」
「それって」
イルカが、ぎょっとして綱手を見て、シズネは呆れたような声を出した。
「イルカさんが勝った場合はどうなるんです」
「休める!」
「私が勝った場合は?」
「シズネが勝った場合はイルカに私の仕事を手伝ってもらう。私が勝った場合もイルカに私の仕事を手伝ってもらう」
綱手が高らかに宣言する。
「綱手さま!」
さすがにシズネが眉を吊り上げた。
「イルカさんが得する要素が何もないじゃないですか!それに綱手様と私、イルカさんという図は二対一でイルカさんに圧倒的に不利です」
「そうですね〜、ずるいですね〜」
シズネが抗議すると、それに同調する、のんびりとした声が聞こえてきた。
「カカシ!」
いつの間にか、カカシがいた。
「いつから居た?」
「さっきからいましたよ〜」
カカシは手に持っていた報告書を綱手に差し出した。
「単独任務が終わったので報告に来たら、何やら揉めているようですね」
「カカシさん!」
イルカが天の助けとばかりにカカシに訴えた。
「あのですね、火影様が・・・」
「大丈夫です」
カカシは微笑んでイルカの肩を叩いた。
「俺がイルカ先生側につきますから、これで二対二。正々堂々、勝負できますよ」
「いえ、あの・・・」
そういうんじゃないんですけど、とイルカの声は誰にも届かなかった。



「俺の全勝ですね」
カカシが勝ち誇ったように言った。
「ババ抜き、七並べ、神経衰弱、大富豪、スペード、ハーツ、セブンブリッジ、ドボン、ダウト、ページワンも全部、俺が勝ちました」
勝利宣言だ。
「まだ、やりますか?」
「いや、いい・・・」
綱手は力なく首を振る。
「で、ですよね〜」
シズネが苦笑いをしていた。
「綱手様とイルカさんのどちらかが負けてばっかりでしたからね」
ちょっと笑いも堪えている。
「火影様は勝負事、賭け事に向いてないんですよ〜」
「そうですよ。ほら、綱手様、息抜きは終わりにして仕事をしましょう。ね?」
落ち込む綱手をシズネが慰めた。
「これでイルカ先生は自由ですね」
「あ、ありがとうございます、カカシさん!」
イルカは嬉しそうにカカシに手を合わせた。
「カカシさんが来てくれて助かりました」
「そうですか〜」
カカシも嬉しそうだ。
しかし、カカシの次の言葉でイルカは固まった。
「これで明日のイルカ先生の休みは俺のものですね!」
「・・・・・・え?」



カカシは、にこにこと笑っている。
「あ、あの、カカシさん」
聞き間違いかと思い、イルカは聞いてみた。
「えっと、今なんて言いましたか?」
目の前で、にこにこ笑うカカシが変なことを言ったような気がした。
疲れて幻聴が聞こえたのかもしれない。
「明日の俺の休みがどうとか?」
「はい、言いました」
頷いたカカシは、逃げられないようになのかイルカの手首を掴む。
「イルカ先生の明日の休みを自由にする権利を俺は獲得しました」
「ちょ、ちょっと!」
聞き間違いではなかった。
「任務から帰ってきた俺も、ちょうど休みなんです」
笑ったままの顔がカカシはイルカの手を掴んで立ち上がった。
もちろん、イルカも立ち上がることになる。
そして、掴んでいた手を離して肩に手を回す。
がっちりと肩に回った腕は外れそうにない。
「いやあ、良かった良かった」
「え、あの・・・」
「明日はバレンタインでしょ。俺、バレンタインは好きな人と過ごすのが夢だったんですよね!」
「えっ。ええっ!」
「今夜は俺の家に泊まって、明日は一緒に朝ご飯食べてから、一緒に買い物して一緒に映画観て一緒にランチしてディナーして〜。一日、楽しく過ごしましょうね!」
あ、チョコレートあげますからイルカ先生も俺にくださいね、とカカシはうきうき、ふわふわした気持ちを隠そうともせずにイルカを連れて、綱手とシズネの前から去っていった。



カカシとイルカを見送った綱手とシズネ。
「なんだい、あれは?」
「体のいいバレンタインの口実ですかね」
「明日は一緒にって、丸っきりデートだろ、あれじゃ」
「・・・ですよねー」
「それに明日はバレンタインだったのかい?」
「みたいですね」
「すっかり忘れていたよ」
「私もです」
綱手とシズネは顔を見合わせて、肩を落とした。
なんだか、どっと疲れたのだ。
「綱手さま、明日までに仕事を何とか終わらせましょう・・・」
「ああ、そうだな・・・」
明日はバレンタイン。
恋人たちが集う日だ。
カカシとイルカはどうなるのか、と綱手とシズネは密かに心配していたのだが。



バレンタインから数日後。
綱手とシズネは目撃した。
カカシとイルカが微笑みあっているところを。
幸せそうに。




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