来月
その日の午後、偶々、イルカは里中でナルトに会った。
丁度、空き時間があったイルカはナルトにラーメンを食べないかと誘われて、イルカは中途半端な時間だったので断ろうと思ったのだが、がっしりと肩を組まれて半ば強引に引き摺られるようにしてラーメン屋一楽入った。
結局、イルカはラーメンを食べていた、ナルトと一緒に。
久しぶりに会うナルトは、少し背が高くなったようで顔も精悍さが増していた。
なんというか、若さでキラキラ輝いている、といった表現が似合うような感じだ。
背も伸びたし大きくなったなあ、とナルトを見つめ、イルカは感慨に浸る。
元気そうだし、修行頑張っているんだなと気分は半分、父親だ。
イルカは一緒にラーメンを食べながら、ふと気になっていたことをナルトに聞いてみた。
「そういや、この前、火影様にナルトからだとラーメン券の十枚綴り、貰ったんだけどな。」
「あー、綱手のばあちゃんに?」
「ああ、あれって、どうしてくれたんだ?」
ありがとな、とイルカはお礼を付け加える。
「あれさ。」
ナルトは丼を持ち上げ、ラーメンのスープを飲み干してから答えた。
「イルカ先生の誕生日プレゼント。」
「俺の!」
「そう、少し遅くなっちまったけど。」
イルカの誕生日は五月、今は夏が終わる季節なので遅すぎるような感が否めないが、イルカはナルトの心遣いを嬉しく感じた。
「そっか、嬉しいよ。ありがとう。」
イルカがナルトの頭を撫でると、ナルトは擽ったそうに笑う。
「でも、なんでラーメン屋の券なんだ?」
「だって、俺ってば、一楽のラーメン券貰ったら一番嬉しいもん。」
ナルトは自分を基準にしているらしい。
「そういえば。」とイルカは思い出したように言った。
「誕生日を言えば、来月はカカシ先生の誕生日だったな。」
「え!ほんと?」
ナルトは驚いたように聞き返し、うーんと少し悩んでから何故か、一楽のラーメン券十枚綴りを二つ、買っていた。
食べ終わった二人がラーメン屋を出ると、ナルトはラーメン券の綴りの一つをイルカに手渡した。
「これ、俺からのお祝いって言って、来月のカカシ先生の誕生日にイルカ先生から渡しておいてくれってば。」
「自分で渡せばいいだろう?」
訝しげにイルカが言うとナルトは首を振った。
「俺ってば修行だ任務だって忙しい身の上なの。それにカカシ先生の誕生日、当日、イルカ先生はカカシ先生に会うんだろ?」
「・・・・・・え?」
「だって、カカシ先生とイルカ先生ってば、すっげえ仲いいじゃん。」
「そ、そうだけどな・・・。」
ナルトの言った言葉にイルカは固まった。
特に他意はなくナルトは見たままの事実を語っただけなのだが、イルカは変に狼狽たえてしまう。
まさかナルトに、そんなことを言われる日がくるなんて想像していなかったのもあり心構えが出来ていなかった。
「もう一つの、ラーメン券は敬老の日に綱手のばあちゃんに渡すんだ。」
敬老の日にラーメン券というのは、どうなのだろう。
ナルトは余り深く物事を考えない性質らしい。
「これから修行に行くってば。俺ってば頑張っちゃうもんね。」
きりりとナルトは顔を引き締めると、イルカに「じゃあな、イルカ先生。頼んだってばよ!」と手を振って、あっという間に走り去ってしまう。
その姿は、すぐに小さくなり見えなくなってしまった。
「あいつ・・・。」
ナルトを見送って、イルカは今更ながらに体が熱くなってきた。
「俺とカカシさんって、そんなに仲良さそうに見えるのか・・・。」
実は、すごく仲がいいを通り越して、もう恋仲の間柄なのだけれどナルトに、そんなこと言えやしない。
「イールーカー先生〜。」
突然、背後から呼びかけられ、びくっとしたイルカが振り向くと、そこには件のカカシが立っていた。
恨めしそうな目で、じっとり、絡みつくような視線をイルカに送ってくる。
「カ、カカシさん!」
「ナルトと仲良くラーメン食べていましたね〜。」
「え?はあ、まあ。」
「ナルトに肩なんて抱かれて、ラーメン屋に誘われちゃって〜。」
「なっ!肩を組んでの間違いです!」
「別れ際に何か貰ってるし〜。一体、何を貰ったんですか〜?」
ナルトが別れ際にイルカに渡したのは、カカシの誕生日に渡すように頼まれたラーメンの券だ。
今、ここで本人に言う訳にはいかない。
「な、内緒です。」
カカシの視線に負けないでイルカは必死に言い返した。
「言えません。」
「俺に隠し事をするなんて〜。」
益々、カカシは恨めしそうな目でイルカを見つめる。
「ひど〜い、イルカ先生。」
往来で、しくしく、と泣き真似を始めた。
「ちょ、ちょっとカカシさん。」
嘘泣きを分かっていても、慌ててしまうイルカは、この場の空気を変えるために別の話題をふった。
「カカシさんも一緒にラーメン食べればよかったのに。」
ナルトも喜びましたよ、と取り繕う。
「いやあ。」とカカシは首を横に振る。
「俺、三時のおやつにラーメンは、ちょっとお腹に入らんかもです。」
「じゃあ、いつから俺とナルトを見ていたんですか?」
「ナルトがイルカ先生に声を掛けたところから。」
どうやらカカシは、ずーっとイルカとナルトを見ていたらしい。
「どっから見ていたんですか。」
少々呆れながらイルカが聞くとカカシは、けろりとして答えた。
「店の入り口から気配消して、顔だけ出して見てたんです。仲良さそうな二人を見て、ハンカチ噛んで悔しがっていました。」
ほらね、とカカシがイルカに噛んでいたハンカチを見せると、ハンカチは見事に歯形が付いて歪んでいた。
しかし、そのハンカチは白いレースのハンカチで男性が持つようなものではない。
この人、どうして、こんなの持ってるんだ?
イルカは、やや疑問に思ったのだがカカシは時々、変なものを持ち歩いているし、聞くと面倒くさくなることもあるので、スルーすることにした。
それよりも、とイルカはカカシを促して、連れ立って歩き始める。
向かう場所は受付け所だった、カカシも向かう途中だったそうなので一緒に行く。
歩きながら、あることを思い出して、うきうきと心が弾んだ。
来月はカカシの誕生日である。
「イルカ先生、どうしたの?楽しそうだよ。」
カカシが不思議そうに聞いてくる。
「ふふふ、秘密です。」
「また、秘密なの?」
眉を八の字にしてカカシは、しょげてしまう。
「まあまあまあ。」とイルカはカカシを宥めた。
大サービスで手を繋ぐ。
途端、カカシは機嫌が良くなり、手を握り返してくる。
「この秘密はね、楽しい秘密です。カカシさんにも直ぐに分かりますよ。」
「そうなの。なら、いいや。」
カカシは「楽しみにしています。」と割かし素直だ。
イルカといれば、それで満足らしい。
それはイルカも同じであった。
お互いを大切に思っている。
だから、とイルカは隣を歩くカカシを横目で、ちらりと見た。
来月、カカシさんの誕生日、どんな風にお祝いしよう。
考えるだけで、どきどきわくわくしてくる。
好きな人の年に一回の誕生日だ。
何をプレゼントして、どういう言葉を贈ろうか。
どうしたらカカシさんは喜んでくれるかな。
考えれば考えるだけ、イルカの胸は期待で膨らみ止まらなくなる。
ああ、どうしよう、こんなことを考えるほどカカシさんが好きだ。
なんてことを考えてイルカは赤くなったりしていた。
「イルカ先生、大丈夫?」
イルカの変化する顔色を見たカカシが心配そうに尋ねてくる。
「だ、大丈夫です!」
「そう?」
「俺、いっつも元気ですから!」
笑って答えて、イルカはカカシの顔を見た。
来月、誕生日のカカシさんって・・・。
素朴な疑問も浮かんだ。
今年で何歳になるのかな?
誕生日にでもカカシに聞いてみようとイルカは思ったのだった。
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