かつてのあの人
俺は、ふと、あることを思い出した。
それはカカシ先生との夕ご飯中のこと。
何が切っ掛けかというとカカシ先生の白い髪を何気なく見ていたら思い出したのだ。
因みにカカシ先生は何故か最近、食事を共にすることが多い。
今日は俺の家で夕飯を食べている。
「どうしたんですか?」
俺の様子を見てカカシ先生が話しかけてきた。
「え?あー、いやあ、あのですねえ。」
あることを思い出したのだけど、それは恥ずかしい部類のことだったので俺は話すのを躊躇った。
「えーと、話しても笑いません?」
確認を取るとカカシ先生は頷く。
「絶対に笑いません。」
カカシ先生が、そう言ったので俺は話すことにした。
「昔、といっても十二、三の頃、俺、暗部に会ったんですよね。」
「へええ。」
「今思えば、その時に初めて暗部というものを見たんですが、でも俺、名前は知っていても実際、どんなものか知らなくて・・・。」
自分で話していて恥ずかしくなる。
暗部が何か正確に知っていたらよかったのに。
話すのをやめようかと思ったのだがカカシ先生に続きを促された。
「ふーん、それで。」
「・・・それで、俺の前に暗部が現れた時、俺は『変なお面をつけた人がいるなあ。』って思って。一人で森の中を散策していて、つまらなかったから一緒に遊んでくれないかなあ、と。」
俺と遊ばない?と誘ったのだ。
その暗部は明らかに戸惑っていた。
だって少し狼狽えて『俺と遊ぶの?森で道に迷っていたんじゃないの?』とか言っていたから。
どうやら暗部の人は森の中を、うろうろしていた俺を道に迷ったと思って道案内に出てきてくれたらしい。
「その暗部の人は俺と、ちょっとだけ遊んでくれました。」
「よかったね、優しい暗部で。」
「そうですよね。」
「それだけ?その暗部の名前とか訊かなかったの?」
カカシ先生は何故か、詳しく訊いてくる。
「えっと訊きました・・・。」
ここが一番、恥ずかしいところなんだよな・・・。
「名前を聞いたら『暗部だから』と言われたんですが俺は『アンブ』が名前なのか勘違いしてしまって。」
忍者の中には『アンコ』とか『アンズ』とかアンのつく名前をつくものがいたので普通に、そう思ってしまったのだ。
俺は『へえ、アンブって名前なんだ?名字は?』と更に恥を上塗りするようなことを聞いてしまった。
「そしたら、暗部の人は『いや、木の葉の暗部なんだけど・・・。』と言っていたんですけど俺は『このはアンブ』って名前なんだと頭にインプットしてしまって・・・。」
その暗部とカカシ先生の髪の色が同じだったから、今更ながら思い出してしまったんだよな〜。
子供の時の俺って馬鹿だな・・・、ホント・・・。
「まあ、それだけです。」
やっぱり言わなきゃ良かった、と恥ずかしさで胸いっぱいになった俺は、それを誤魔化すためにご飯を食べることを再開した。
カカシ先生は既にご飯を食べ終えて俺を、じっと見ている。
「何ですか?」
「あのさあ、その『このはアンブ』に会いたくない?」
「え?」
「きっと相手は会いたいと思っているんじゃないかなあ。」
何だか嫌な予感がした。
カカシ先生は両肘を突き組んだ手の平の上に顎を乗せて、目を細めて俺を見る。
「いつ思い出すかなあ、と再会してから、わくわくどきどき毎日毎日、期待して待っていたら、こんなに時間がかかるなんてねえ。」
口の中のご飯を俺は、ごくりと嚥下した。
・・・ま、まさかね。
「『このはアンブ』は初めて会った時から、ずっと好きみたいなんだけど。」
カカシ先生は、にやりと笑う。
「イルカ先生のことがね。」
かつての『このはアンブ』は、目の前にいたのだった。
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