スパイシー&スウィート
夕方、家に帰る道すがら、夕飯を食べて帰ろうとイルカ先生とラーメン屋に寄った。
もちろん、それは一楽だ。
俺もイルカ先生もお気に入りのラーメン屋さん。
ラーメンを食べに一楽に来るのは久しぶりだった。
俺もイルカ先生も最近、忙しかったからなあ。
ふとメニューを見ると新メニューが幾つかあった。
それを見てイルカ先生が目を輝かす。
新し物好きだからねえ。
「すごーい。たくさん、新しいメニューがある!カカシさん、何か新しいのに挑戦しますか?」
「うーん、いや、俺はいつもので。」
いつもの醤油ラーメンが食べたい。
そう言うとイルカ先生は「じゃ、俺は新メニューのやつ、食べてみますね。」と注文していた。
注文して、間もなくラーメンがやってきた。
ほかほかの湯気が立ち上って、いーい匂いが食欲をそそる。
「いただきまーす。」
手を合わせて言うと、一口スープを飲んだ。
「うまい!」
いつ来ても、ここのラーメンは旨いなあ。
俺が感動している横で、イルカ先生は何故か無言だった。
「イルカ先生?」
不思議にも思って、覗き込むとイルカ先生は難しい顔をしている。
「食べないの?」
ここのラーメン大好きだよねえ。
するとイルカ先生は大好きなラーメンを前にして情けない声を出した。
「・・・辛くて食べれないんです。」とラーメンを指差す。
「辛いの?」
そういや新メニューのラーメンの中でイルカ先生、辛味があるやつ頼んでいたねえ。
「そんなに辛いの?」
「一口、スープを飲んでみましたが。・・・ちょっと苦手かも。」
そう言いながらも「自分で頼んだものなので、ちゃんと食べますから大丈夫です。」と水の入ったグラスとポットを用意して脇に用意していた。
辛さの備えているようだ。
水飲みながら食べるつもりらしい。
「ねえ、イルカ先生。」
ちょっと可哀想になって提案してみた。
「交換する?」
俺の醤油ラーメンと?
「え?でも。」とイルカ先生は躊躇っている。
俺はイルカ先生の辛いラーメンスープを試しに一口飲んでみた。
「あ、美味しいですよ〜。俺は全然、辛くないです。」
そう言うとイルカ先生は、ちょっと、ほっとした顔になって「ごめんなさい。」と自分のラーメンと俺のラーメンを交換して食べたのだった。
で、美味しくラーメンを食べ終えて店を出て、家に向かう帰り道、イルカ先生が首を傾げていた。
「俺、辛いの、そんなに苦手じゃなかったのになあ。」
不思議そうにしている。
「いつも食べてないと、お酒と同じで弱くなってしまうんでしょうかねえ?」
そんなことを言っていた。
「さあ、どうでしょうねえ。」
お酒も普段から飲んでないと弱くなるって言うけれど。
でもさあ。
「甘いものばかり口にしていると辛いのが苦手になるんじゃないですかねえ。」
「甘いもの?」
そんなに食べていたかなあ、とイルカ先生は頭を捻っている。
「ふふふ。」
そんなイルカ先生を見て俺は笑って、こう言った。
「いっつも、キスしているでしょう。」
イルカ先生の耳元で囁く。
「すっごく甘いキス。」
それを聞いたイルカ先生は、かーっと赤くなって、だーっと走って、少し離れて、立ち止まって俺を振り返って叫んだ。
「これからは甘さ控えめでお願いします!」
それはできない。
だって甘いの、好きだもん。
それにねえ。
「イルカ先生だって、すっごく甘いの好きでしょう!」
俺が叫び返すとイルカ先生は今度こそ振り返らずに、だーっと走って行ってしまった。
行き先は二人の家だ。
今頃、イルカ先生の顔は照れて真っ赤になっているに違いない。
そんな楽しい想像をして、俺は笑いながらイルカ先生の後を追いかけたのだった。
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