感謝の気持ち
イルカは休日、カカシの家に向かっていた。
招かれたので、遊びに行こうというわけだ。
カカシの家に向かう途中に、ふと花屋の前で足を止めた。
花屋には色鮮やかな大量のカーネーションが置いてあり、傍には『母の日に感謝をこめて贈りましょう!』と、のぼりに書いてあった。
今日は母の日であったので、花屋さんがカーネーションを買ってほしいな〜という宣伝文句だったのだが、イルカの目が釘付けになったのは『感謝をこめて』の部分である。
「感謝か。」
思い当たる人がいたので、イルカはカーネーションを一本だけ買ってみた。
花を買ったのは久しぶりだ。
なんだか楽しくなってきた。
イルカはカーネーションを手にすると、うきうきとカカシの家に向かって歩き出した。
「はい、どうぞ。」
カカシの家に着いてカーネーションを渡すと、カカシは変な顔をした。
眉を顰めてイルカとカーネーションを交互に見る。
「なぜ、カーネーションを俺に?」
苦い口調で聞いてきた。
「俺、イルカ先生のお母さんじゃありませんよ。」
きっぱりと宣言した。
「分かってますって。」
必要以上に過剰な反応をするカカシにイルカは面白くなる。
「日頃、お世話になっていますから、その感謝をこめて、カカシさんに花を贈ろうと思っただけですから。」
「そう?」
カカシは安心したように肩を竦めた。
「なら、いいけど。」
「あ、そうだ。これ、昨日の立て替えてもらった飯代です。」
イルカがお金を差し出すとカカシは口の中で「そんなのいいのに。」と言いつつ受け取る。
律儀なイルカは断っても、お金に関しては頑固な一面があるからだ。
そして、どこからか一輪挿しを探し出してきてイルカから貰ったカーネーションを飾った。
「綺麗ですね。」
イルカは素直に感想を述べた。
「カカシさんに、ぴったりの花ですよね。」
にこにことしながら褒め言葉として言ったのだが、またしてもカカシは眉を顰めた。
「俺は、イルカ先生のお母さんじゃないですから!」
「ええ、はい。」
カカシの、ちょっとした迫力に押されながらイルカは目を瞬かせた。
もしかして怒っているのだろうか?
「俺はね。」
イルカの目の前にカカシの顔が迫ってきた。
額も鼻先もくっ付きそうだ。
「俺は、イルカ先生の恋人なんですからね!」
「・・・ああ。」
カカシがやたら、イルカのお母さんじゃないと否定していたのはこういうことだったのか。
イルカは肩の力を抜いて微笑んだ。
「大丈夫、ちゃあんと分かっていますよ。」
それからイルカは目の前のカカシの頬に、ちゅっと口付けて、お礼にカカシはイルカの唇に口付けをしたのだった。
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