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メリット



「ただいま〜」
自分の家なのに仕事から帰って来たイルカは静かに扉を開けた。
声も聞こえるか聞こえないくらいの。
それには訳があった。
カカシさん、帰っているかな? 数週間の任務に出ていた同居人の帰りが今日だったのだ。
今日は一日、アカデミーで受付所には行ってないのでカカシが帰ってきたかどうか知らないのが。
きっと帰ってきているよな。
期待して部屋に入ると果たして同居人はベッドで寝ていた。
肩まで布団を掛けて、すやすやと眠っている。
ベッドの近くまでイルカが行っても起きる気配がない。
疲れているんだなあ。
それでも無事に帰ってきてくれたことに感謝する。
よかった。
眠れるカカシを見つめるイルカの顔は穏やかで安堵していた。



とりあえず寝ているカカシを起こさぬようにして台所へ行く。
台所のテーブルにはメモが置いてあった。
見てみるとカカシの字だった。
「えーと、なになに」
読んでみる。
「帰ってきてから作ったおかずが冷蔵庫に入っています、ご飯も炊けています。飯はちゃんと食べるように・・・」
見に覚えがあるのかイルカは苦笑いを浮かべた。
「カカシさんがいない間の食生活がばれているな、こりゃ」
罰の悪そうな顔になる。
「カカシさんがいないと飯とか、どーでもよくなるもんなあ」
一人だと、どうしても食事は簡単になる。
簡単になって適当に済ませてしまうのだ。
冷蔵庫を開けてみるとラップの掛かった皿が何皿かあった。
美味しそうな料理がのっている。
「うまそ〜」
見るだけ見てイルカは冷蔵庫を閉めた。
「風呂に入ってから飯、食おう」
まずは風呂であったまりたい。
風呂を沸かそうと風呂場に行くと、お誂え向きに風呂の湯はちょうどいい温度に沸かされていた。
おそらくカカシの仕業だろう。



「何から何まで至れり尽くせりだな〜」
風呂から出たイルカは、ほかほかと体から湯気を昇らせている。
タオルで髪を拭きながらベッドにいるカカシを見ると固く目は閉じてられていた。
熟睡している。
音を立てないように台所に舞い戻ったイルカは冷蔵庫からカカシが作ったと思われる料理の乗った皿を出し、白米を装って夕飯を食べ始める。
ただし静かにだ。
「あ、うまい」
カカシの料理を口に入れてイルカは呟いた。
「これも絶妙な味付け。おいしー」
あっという間に二杯目のご飯に突入した。
「カカシさんて」
口をもぐもぐとさせながらイルカは独り言を言う。
「料理、上手だよなあ。ってか上手になったよなあ、最初は何も出来なかったのに」
最初とはカカシとイルカが付き合い始めた当時だ。
付き合ってから三年目になっている。
「最初は俺が料理を作って教えていたのに、いつの間にか俺より料理が上手くなって。しかも美味いっていう」
皿の料理は、ほぼ無くなりつつあった。
「家事全般もスキルアップしちゃって完璧だし、オレの出番はほぼないよなあ」
全部、食べて「ご馳走様でした」とイルカは手を合わせる。
食べた食器を流しに運んで音を立てないようにして素早く洗う。
その間も独り言は続いていた。
「今日だって疲れて帰ってきてるはずなのにオレのために飯まで作ってくれているなんて」
カカシさん凄すぎ、と。
「何でも自分で出来るのにオレといるメリットってカカシさんにあるのかな?」
不毛な疑問が首を擡げてくる。
「俺はカカシさんが好きだから、ずっと一緒にいたいけど」



風呂に入り夕飯も食べて、やることもないのでイルカは足を忍ばせてカカシの寝ているベッドの傍に行った。
久しぶりに会ったカカシの傍にいたい。
テレビを見る気にも本を読む気にもならなかった。
ベッドに、そっと座ってカカシの寝顔を覗き込む。
安心している寝ているカカシは子供みたいな無邪気な顔をしている。
「かわいいよなあ」
寝ているときのカカシは起きているときとは別の魅力を感じた。
いつもは冷静沈着、精悍な感じで誰の助けも必要としないような人だけど。
寝ているカカシは守ってあげたいという欲求が涌いてくる。
オレより強い人なんだけどね。
カカシは上忍で中忍のイルカより名実ともにイルカより上だ。
とても尊敬している。
無意識のうちにカカシの頭に手を伸ばしていた。
髪を指で、つんつんと突っついてみるがカカシは一向に目を覚まさない。
起きたカカシにも会って声を聞きたかったけれど。
明日の朝になれば、さすがに起きるだろう。
そのときにでも話をすればいい。
イルカの口から欠伸が出た。
「オレも寝ようかな」
「それがいいです、一緒に寝ましょう」
え、と思う暇もなく腕が伸びてきて布団の中に引きずり込まれた。



布団の中で、くぐもった笑い声が聞こえた。
「あー、イルカ先生だ」
腕の中に抱きこまれる。
「イルカ先生を抱きしめると家に帰ってきたんだなあって実感します」
カカシの声がすぐ傍でした。
ただいま、と額にキスされる。
「カカシさん、寝ていたんじゃ・・・」
「途中までね」
しらっとカカシは、とぼけた。
「途中までって」
「イルカ先生がオレを好きで好きで愛してるって言って、ずっと一緒だって言ったところから起きていました」
「なっ、あれは!」
かっとイルカの顔が赤くなる。
「好きだとは言いましたけど愛してるとは・・・」
「オレのこと愛してないの?」
「あ、愛してます」
「ん、オレも」
今度は額にではなく唇にキスを贈る。
「イルカ先生のこと愛してます」
「ど、どうも・・・」
カカシの愛の告白にイルカは照れてしまっていた。
もう何回も言われているが慣れることはない。
そんなイルカをカカシは愛しげに見つめる。
「あのねえ、イルカ先生」
「はい」
「オレがイルカ先生といるのはメリットとかそんなの全く関係なくて、ただ好きだからってだけですよ」
イルカの独り言、オレといるメリット云々のくだりを聞かれていた。
「好きな人とは一緒にいたいでしょ?オレも同じです」
「カカシさん」
にこ、とカカシに微笑まれるとイルカに勝ち目はなかった。
同棲同士で同居、つまりは同棲なのだが、そんな関係を続けてこれたのはカカシの海より深い愛と優しさがイルカを包み込んでいるからだ。
イルカも表現は控えめではあったがカカシの対しては誰にも負けない愛情を常に身の内に置いている。
「さ、じゃあ」
カカシは欠伸をした。
「もう寝ましょうか、話は明日の朝、またってことで」
「そうですね」
カカシに抱きしめられたイルカは、カカシの体を抱きしめ返す。
二人で寝るベッドの中は、とても暖かく満ち足りていたのだった。





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