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構ってほしいの



普段は何でもないんだけど、無性に構ってほしい時がある。
構ってほしくて堪らない、我慢できない。
俺のことを撫でて触って抱きしめて、そんでもって好きだと言ってほしい時が俺にもあるのだ、恥ずかしながら。
そんなことをしてほしい人は、この世にたった一人だけ。
最愛の人、カカシさんだ。
カカシさんは俺の大好きな人で俺のことが大好きな人で。
つまり相思相愛ってやつだ。
その人に構ってほしい。
俺を際限なく構ってほしくなる時があって、今がその時だった。
でも、そういう時に限ってカカシさんは不在だったり用事があったりして。
今だって難しそうな顔で何やら巻物を読んでいた。



知っている。
カカシさん、もうすぐ任務だから、その下調べとして色々調べ物をしているのだ。
それを邪魔してはいけない。
十二分に解っている。
だからカカシさんの邪魔をしてはいけない。
俺は真剣な顔で巻物を読むカカシさんの背中を背後から、じっと見つめた。
ちなみに、ここはカカシさんの家なので俺がカカシさんを見ていても支障はない。
俺の家は別にある。
今日は二人とも休みだった。
で、じーっと穴があくほど、さっきから見ているんだけど。
これって邪魔だよな・・・。
寂しい・・・。
でも、しょうがない。
任務だから。
俺は音を立てずに、すっと立ち上がった。
集中しているカカシさんの邪魔をしないように。
カカシさんに構ってほしいのに構ってもらえない時は。
こういう時は、あそこに行くしかない。
そっと家を出た俺は、ある場所に向かって歩き出した。



ある場所とはカカシさんの、もう一つの家。
普段、寝食している家とは別にカカシさんの隠れ家的な家がある。
俺は、そこに自由に出入りしてもいいとカカシさんから許可を貰っていたので、そこに向かっているのだ。
だって、そこには俺を構ってくれる八人、いや八匹の犬がいるから。
八匹の犬とはカカシさんの忍犬で。
隠れ家的な家とはカカシさんの忍犬がいる家なのだ。
大きな庭のある家だった。
その家が見えてくると俺は印を結び、とんぼを切ってくるんと空中で一回転した。
ぽんと地上に降り立った時は俺は一匹の子犬になっていた。
手足が短くて、体の毛は茶色の短毛で、耳は垂れ下がっている。
そんでもって両耳の先と前足、後ろ足の先が白くなっていた。
小さい頃に絵本で見た子犬に俺は変化していたのだ。
カカシさんの忍犬がいる家の前まで来ると俺は「わん」と鳴いた。
俺が来たことを知らせて、扉を開けてって意味で。
家の庭は塀で囲まれていて扉があって、その扉には犬専用に潜り戸があるのだ。
その潜り戸が、ぎっと音を立てて開いた。
俺は大喜びで、そこから家の庭に入ってカカシさんの忍犬たちに飛びついた。



忍犬たちは飛びついてきた俺を軽くいなして口々に言った。
「おー。また来たのか!」
「暇なのか?」
「遊ばれたいんだな!」
しょうがないな〜と言いながら子犬の俺を遊んでくれる。
頭に黒い毛のあるシバって犬と包帯を頭にぐるぐると巻きつけたウーヘイって犬は俺の首を柔らかく噛むと、ぶらりと宙に持ち上げた。
そんで二匹で俺のことを空中から空中へ、放り投げて遊ぶのだ。
これはスリルがあって、すっごい楽しい。
俺は興奮して、きゃっきゃっと笑い声を上げる、子犬のだけど。
空中で投げられて、最後は一番、体の大きい忍犬ブルの上に、ぼすんと落ちるのがお決まりコースだ。
俺はブルの上で、ぽんぽんとジャンプして遊ぶ。
ブルは苦笑いをしながらも俺が遊ぶのを許してくれている。
とっても優しい。
カカシさんの忍犬は勇敢で賢いけれど、とっても優しいんだよなあ。
いっつも構ってくれるから忍犬の名前も総て覚えてしまった。
俺は子犬になると人の言葉が話せなくなるので適当に呼ばれているけど。



一頻り、遊ぶと俺は眠くなってきた。
子犬の体は余り、体力がない。
カカシさんの忍犬はみんな、それぞれ構ってくれて、たくさん遊んでくれるんだ。
俺のことなんて知らないはずなのに。
どうしてだろう。
うとうとしていると瞼が落ちてきた。
遊んでくれた犬たちも疲れたのか地面に寝そべっている。
俺は、その忍犬たちの体の間に潜り込んだ。
あったかくて、寝心地最高だ〜。
それに安心するなあ。
・・・カカシさんは、もう調べ物終わったかな。
思い切り遊んだので構ってほしい欲求は大分なくなっていたが。
帰ったら俺のこと構ってくれるかな〜と思いながら俺は眠りに落ちていった。



ぱちっと目が開くと見慣れた天井が見えた。
え、ここ、どこ?
寝ていた場所から起き上がり、周囲を見渡すとカカシさんの家だった。
ついでに俺は人間に戻っている。
あれ、俺、どうしてここに・・・。
腕を組んで首を捻って考えた。
確か、子犬に変化してカカシさんの忍犬たちに遊んでもらっていたはず。
そして遊びつかれて寝ちゃったはずなのに、なんでここに?
分からないことだらけだ。
もしかして、あれは夢?
それが言葉に出ていたようだ。
「夢じゃないです〜よ」
奥から、てくてく歩いてきた。
コーヒーカップを二つ持っていて、一つを俺に渡してくる。
お茶が入っていた。
「あ、どうも」
コーヒーカップを受け取り、お茶を飲んでいるとカカシさんが溜め息を吐いていた。



「イルカ先生ねえ」
「はい」
「変化したまま外で寝るっていうのは、どうかと思いますよ」
眉を顰めている。
「え、えーと」
背中に冷や汗が流れる。
もーしかしてー、カカシさん・・・。
嫌な予感がした。
「俺の忍犬たちのところで寝ていたから良かったものの」
・・・ばれている。
俺が子犬に変化してカカシさんの忍犬たちと遊んでいたことが。
「それにねえ」
コーヒーカップを傍らに置いてカカシさんが俺の方へと、ずいっと身を乗り出してきた。
「はい?」
俺は反射的に後ろへと下がる。
カカシさんは俺のコーヒーカップも取り上げた。



「俺が忙しいときに限って、イルカ先生って」
顔が、ぶつかりそうなほど近い。
「構ってちょうだいってオーラを出すんだよね」
「そうですか?」
「そうです」
カカシさんは深く頷いた。
「タイミングが悪いっていうか、狙っているというか」
焦らすタイプですか、イルカ先生はって言われたけれど、そんなつもりは一切ない。
「でも」とカカシさんは妖しげな笑みを浮かべた。
「調べ物はひと段落したので、これで」
カカシさんの腕が俺の体に絡まってくる。
「イルカ先生を構えます、充分に」
にやーっと笑ったカカシさんは、ちょっと怖い。
「あの〜」
俺は一応、言ってみた。
「カカシさんの忍犬たちにたくさん構ってもらえたので、俺の構ってほしい熱は治まりました」
勿論、答えはノーだった。
「だめで〜す」
カカシさんは首を振る。
「今度は俺がイルカ先生を構いたいから」
そうして俺は、存分に心行くまでカカシさんに構われたのであった。




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