あの人の正体
クリスマスの前日の任務。
昼飯を食べ終えた七班の子供たちは、ある話に盛り上がっていた。
珍しくサスケも加わって三人で、わいわいと輪になって話している。
「ねえねえ、サンタクロースって見たことある?」
「見たことないってば。」
「・・・見たことがないな。」
三人とも目を、きらきらさせて楽しそうだ。
それにしてもサンタクロースがいるとかいないとかじゃなくて、いること前提で話しているんだなあ。
サンタクロースを信じているなんて、まだまだ、子供だ。
無邪気じゃないか、と俺は微笑ましく思って話を聞いていた。
「私も見たことがないのよね。クリスマスイブの夜って、どうして眠くなちゃうのかしら?」
「そうだってば、俺もサンタの正体を突き止めようと眠らないように頑張ったことがあるけど、結局、眠っちゃって・・・。」
「俺も起きれていた試しがないな。」
三人とも腕を組んで、うーんと考え込んでいる。
クリスマスイブに限らず、夜、起きていられないのは、それは君達がお子様だからでしょ。
俺は内心の笑いを堪え切れず読んでいた本の陰で、くすくすと笑ってしまった。
子供って可愛いなあ。
そこへ、ある人が通りかかった。
「よ!元気か?」
通りかかったのは三人の嘗ての恩師、アカデミーで先生をしているイルカ先生だった。
「イルカ先生!」
「先生、どうしたの?」
「・・・お久しぶりです。」
三人はイルカ先生に、あっという間に駆け寄って、順番に頭を撫でてもらっている。
いいな〜。
実は俺、密かにイルカ先生を好いていて、俺なりに好意をアピールしているのだが未だに気づいてもらえない状況だ。
なので大好きなイルカ先生が傍にいると、どきどきしてしまう。
「ああ、実は里内のお使いの帰りなんだ。」
イルカ先生は、そう言って俺に会釈するし三人と一緒に腰を下ろした。
少し時間があるらしい。
「何の話をしていたんだ?」と三人に質問している。
俺は、そんなイルカ先生の横に、さり気なく移動して隣に座った。
「サンタクロースを見たことがあるかどうか話していたんだってば!」
ナルトが元気よく言う。
「へええ、サンタクロースか。」
イルカ先生は興味が惹かれたようだった。
「先生はサンタクロースを見たことがありますか?」
サクラが訊く。
「見たことがあるなら教えてほしい。」
サスケまでリクエストしている。
「そうだなあ。」
記憶を探るようにイルカ先生は目を瞑って考えてから、ぱっちりと目を開けた。
「サンタクロースじゃないかもしれないが、それらしき人は見たことがあるよ。」
「本当?」
「知ってるなら教えてほしいってば!」
「興味がある。」
三人は、それぞれ知りたい、話してほしいと口々に訴える。
「あー、うん。えーとだな・・・。」
イルカ先生は三人に強請られて話し始めた。
「俺が初めて戦場に出た頃、丁度、クリスマスイブでな。」
三人は、わくわくしながらイルカ先生の話を聞いている。
「戦場で仲間が逸れて、一人になってしまって怪我もしていて動けなくなった時のことなんだが・・・。」
ふーん、と俺もイルカ先生の横で、しっかりと聞いていた。
イルカ先生の昔の話は興味がある。
「結構な怪我をしていて動けなくて夜になってしまい、もう里には帰れないかもと悲観的になっていたら、その人が、偶然にも現れて怪我した俺の手当てをしてくれて仲間の元まで運んでくれたんだよな。」
「それがサンタクロースなの?」
再び、サクラが尋ねた。
「そうかもしれない。」
神妙に頷くイルカ先生。
「その人は月の背にして立っていて、月の光で照らされた髪が白い光を放って輝いていたからな。白い髭も風に吹かれて揺れていた。服は黒っぽかったな。」
「サンタクロースは赤い服を着ているって話だけど違うのか?」
サスケが突っ込む。
「まあ、サンタクロースにも色々事情があるんじゃないのか。いつも赤い服ばっかりじゃ飽きるとか。」
イルカ先生の推理にサスケは「なるほど。」と納得していた。
「でも、それだけじゃサンタクロースって思えないけど、何か証拠でもあったの?イルカ先生。」
サクラがサスケより鋭い突込みをしている。
「あー、証拠って言われるとないけどな。でも!」とイルカ先生は、ぎゅっと拳を握り締めた。
「クリスマスイブの夜に現れて命を助けてくれるなんて、すごいじゃないか!あの時、あの人に助けてもらった俺の命が俺のクリスマスプレゼントに違いない。」と断言している。
「そっかー、すごいってば。」
ナルトは、すっかりイルカ先生の話を信じてしまっていた。
サクラも何だかんだ言って「ロマンチックね。」とか言っているし、サスケは「今年こそサンタクロースの正体を確かめる。」と呟いている。
「でも、そのサンタクロースは今思えば。」とイルカ先生が笑いながら言った。
「やけに若かったような気がするなあ。俺より少し年上な感じで。目も左右で色が違っていたし、青い目と赤い目だったぞ。」
やっぱり、とそれを聞いて俺は確信した。
そのイルカ先生を助けたの人は、俺だ。
昔、若かりし頃、冬に通りかかった戦場で偶然、怪我した中忍を助けたことがあったのだ。
黒髪のベビーフェイスで、てっきり幼い下忍の子かと思っていたのだけれど。
あれはイルカ先生だったのか、どうりで可愛かったはずだ。
思い出して俺は、にやっとしてしまう。
子供の頃のイルカ先生に会っていたとは、なんてラッキーなんだ。
イルカ先生が、あの時、見間違えた白い髭は白いマフラーが風に靡いていたものだし、髪は今と同じ色だからイルカ先生の言っていることと符合する。
「じゃ、俺はもう行くな。」
イルカ先生が立ち上がった。
「任務頑張れよ。」と三人に声を掛けて俺に頭を下げる。
「カカシ先生、お邪魔しました。」
「いえいえ、こちらこそ。」
俺も、ぺこりと頭を下げる。
「それでは失礼します。」とイルカ先生は去ってしまった。
それを見送りながら俺は、頬を緩めた。
イルカ先生との意外な出会いがあったって分かったことが俺のクリスマスプレゼントかな。
空を見上げると、雪が降り始めていた。
子供たち三人は雪を見て、はしゃぎ始める。
俺もなんだか、うきうきをしてきた。
今日はクリスマスだからと託けて誘ってみようかな、イルカ先生を。
食事か飲みにか、それとも俺の家にでも。
クリスマスを二人で過ごせたらいいなあ、と思ったのだった。
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