癒し
風呂から上がったカカシが腰にタオルを巻いて体重計に乗っていた。
「あれ?」
体重計のメーターの針を見てカカシは首を傾げる。
「体重が増えてる?」
特に体型には変わりはないと思うのだが、どうしたのだろう?
「イルカ先生ー。」
カカシはイルカを呼んだ。
居間にいたイルカは、呼ばれてカカシのいる脱衣所へと姿を見せる。
「どうしました、カカシさん。」
「うん。ねえ、俺、太ったかなあ?」
聞いてみた。
自分では分からない部分が太ったのかもしれない。
イルカは「えー、そうは見えませんけど。」と言いながらカカシの周りを一周した。
「特に、体つきに変化はありませんよ。強いて言えば、逞しくなったというか。」
「逞しいねえ。」
カカシは自分で、腕や肩を触ってみる。
前より、硬くなったような気がした。
「うーん、筋肉が増えたのかな?」
「そういえば、上半身が更に逆三角ぽくなっていますよ。」
イルカにすれば羨ましい話だ。
「そうですか?最近、任務続きで鍛えられたのかな?筋肉って重いって言いますもんね。」
「あー、そうですね。」
なんとなく、イルカの言い方は棒読みに近くなった。
カカシが嫌味で言っているのでないことは、よく分かっていたのだが同じ忍者として、多少は悔しくなったのだ。
カカシさんと俺は違うし、別に羨ましくないんだからな、と心の中で自分に言い訳する。
「そうか、なるほどね。」
カカシは一人で納得して、何気なくイルカに言った。
「イルカ先生も体重、量ってみたら?」
「・・・え?」
「最近、量ってないでしょう?」
「そうですけど。」
カカシが量った後では、とても量りにくい。
万が一、体重が増えていたら、と思うと怖くて体重計に乗れない。
カカシのように筋肉が増えたという体裁のいい理由ならともかく、イルカの体重が増えれば、その理由はどちらかというと生活の乱れとか不摂生とか、そんな理由だからだ。
「はい。どうぞ。」
カカシは丁寧にイルカに場所を譲った。
追い詰められて、イルカはカカシの前で体重計に乗らざるを得なくなる。
ベスト体重より増えていたら、どうしよう?
増えていたとしても、せめて一キロくらいでありますように!
イルカは様様な願いをしながら体重計に、そっと乗っかった。
どうやら願いは届いたようだ。
「あー!減ってる!」
イルカは歓喜の声を上げた。
「しかも二キロも減っている!」
何故、減ったのかは原因は不明だったがイルカの体重は明らかに減っていた。
体重計の故障というわけでもない。
「良かった〜。」
イルカは、心底、ほっとしてカカシを見た。
「カカシさん、俺、体重減りました!」
勇んで報告したのだがカカシは、きつく眉根を寄せて険しい表情をしていた。
そして次にカカシの言った言葉に唖然となる。
「ショックです。イルカ先生の体重が減っているなんて!」
「・・・へ?」
「だから、このところ抱き心地が悪かったんですね。」
「あの・・・。」
「俺はイルカ先生の、ぷにっとして、ぽよっとして、ふわふわした、お腹が大好きなのに〜。」
「もしもし、カカシさん。」
カカシは、全くイルカが想像もしないようなことで嘆いているらしい。
「あの、お腹が俺の癒しなのに。」
「ちょっと、カカシさん!」
イルカは少しだけ声を大きくしてカカシを睨んだ。
「さっきから聞いていれば。俺のお腹に変な癒しを求めないでくださいよ。」
「だって、里に帰ってきてイルカ先生のお腹に触ると、帰ってきたなあって実感するんですもん。」
「あのねえ。」
カカシは、イルカのお腹を大事そうに撫でた。
「こんなになちゃって、俺のイルカ先生のお腹が。」
悲しげである。
「いいんです、これで。」
腰に両手を当てたイルカは胸を、いや、お腹を反らした。
「えー。」
なのにカカシは不満げだ。
「俺のために、元のお腹に戻ってくださいよ。」
「そんなこと言われても。」
「お願いですから。そしたら、辛い任務でもイルカ先生のところに必ず帰ってきますから。」
そこまで言われてはイルカも頷かざるを得ない。
理不尽な、と思いながらもイルカは不承不承頷いた。
「もう。じゃあ、必ず帰ってくるって約束ですよ。」
結局は、カカシのいいように事が運ぶ。
それが癪に障ったりするのだが。
「はい、約束です。」
にににこするカカシの顔を見るとイルカは、まあ、俺のお腹が役に立つのなら、と諦めた。
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