以心伝心
「あったかくなってきたなあ。」
イルカは外の日射しに目を細めた。
職員室の窓から外を見ると、溢れんばかり太陽の光が地上を照らしていた。
暖かいというより、暑いくらいだ。
その証拠に職員室の窓は開け放たれて、教員の何人かは腕まくりをして仕事をしている。
イルカも、その一人だ。
昨日、一昨日と雨が降っていて寒いくらいだったのに。
この季節は天気が変わりやすいな。
イルカは額に滲んだ汗を拭き、夜には冷たいビールでも飲みたいな、と思った。
「忘れた・・・。」
仕事が終わって家に着いた途端に、イルカはビールの買い忘れに気がついた。
昼間、冷たいビールを飲みたいと思ったから、仕事の帰りに買ってこようと思っていたのに。
家に着いたのに引き返して買いに行くのは面倒だ、今夜はビールは我慢しよう。
イルカは諦めて家の扉を開けた。
「ただいま。」
家に誰もいないのが分かっていながらも、つい言ってしまう。
ここ最近の習慣になっていた。
「あ、お帰りなさい。イルカ先生。」
誰もいないと思っていたのに声がした。
聞き覚えのある、懐かしい声だ。
カカシが、ひょいと台所から顔を出して自分を、にこにこしながら見ていた。
「え?カカシさん?」
まるで夢の中の出来事のように思える。
「うん、そうだよ。あ、ご飯、もうできるからね。」
「任務の予定では帰還は、まだまだ先じゃ・・・。」
「ああ、それね、予定より早く終わったんだよね〜。」
だから早く帰って来ちゃいました、とカカシはすごく嬉しそうだ。
「そ、そうですか。」
何だか気が抜けたイルカは、玄関先でぺたりと座り込んでしまった。
「俺は、あと二週間は会えないと思っていました。」
「うん、俺も同じ。そう思っていたよ。」
カカシはイルカの前に屈み、顔を覗き込んだ。
「でも帰って来れた。イルカ先生に会えて嬉しいよ。」
ストレートに気持ちを述べてくるカカシに、イルカは暖かい気持ちになる。
嬉しい気持ちも胸に込み上げくる。
「あの、俺も・・・。」
会えて嬉しいです、と伝えたいのに言おうとするが言葉が胸に閊えて出てこなかった。
「えと、カカシさん。あの・・・。」
「うん、何?」
久しぶりに見るカカシの顔に照れてしまう。
ついには、赤くなってしまったイルカを見てカカシは、くすりと笑いを漏らした。
「大丈夫、解ってますって。イルカ先生も俺と同じ気持ちでしょ。」
こくこくとイルカは急いで頷いた。
「当分、会えないと思っていたのに会えたから、すっごい嬉しいよね。」
イルカ先生のことは何でも解るんだよ〜と言ってくれる。
すごい!何でも解るなんて。
イルカが感動しているとカカシが目を細めた。
「今、すごいって思ったでしょ?」
「あ、はい。って何で解るんですか?」
「あとねー、今日は暑いからビールが飲みたいって思ってなかった?だから買っておいたよ。」
「ええ!」
カカシに手を引かれてイルカは立ち上がった。
自然な動作でカカシはイルカを引き寄せて肩に手を回す。
「カカシさんて、何でそんなに解るんですか?」
本当に不思議そうにするイルカにカカシは耳元で囁く。
ちょっとニヤリとしたりして。
「あのね、イルカ先生のこと大好きだから。」
好きな人のことは何でも解っちゃうの、と。
そして、と続ける。
「でね、今、イルカ先生も思ってるでしょ?俺もカカシさんのこと好きですよ〜って。」
カカシの笑みが深くなるに連れてイルカの顔は赤くなっていたのだが。
見られまい、と顔を逸らして逃げようとして失敗して。
結局、見られて。
カカシはそんなイルカが大好きで。
イルカはそんなカカシが大好きで。
そんな感じの二人だった。
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