犬のたわ言
ある日のことだ。
俺は見た!
決定的な現場を!
簡単なお使いを頼んだ忍犬たちが中々、帰って来なかった。
頼んだのは知り合いに巻物とかの荷物を届けるとか、そんな感じのもの。
届けた後、もしかして自主的に訓練しているのか、はたまた寄り道でもしているのか。
もしかして何か問題でもあ起きたのかなあ。
ちょっと心配になった俺は忍犬たちを探しに行くことにした。
忍犬たちが心配って他にも、俺の恋のアンテナがビビッときたのだ。
程なくして忍犬たちを発見した。
アカデミーの校庭の片隅で。
・・・アカデミーって届け物を頼んだ先のルートから外れているよね?
どうして、ここに。
忍犬たちは一列に整列してお行儀よくお座りをしている。
そして、そのシッポが千切んばかりに振られていた。
犬たちは皆、にこにことしていて嬉しそうだ。
その忍犬たちの前に立って、更に嬉しそうにしているのが我が愛しきイルカ先生だった。
「みんな〜、よく来たな〜。」
イルカ先生は笑顔を浮かべて犬たちの頭を順ぐりに撫でていく。
その撫で方も柔らかい手付きで優しくて、本当に犬が好きなんだなあって伝わってくるような。
そんな撫で方だった。
あー、俺もイルカ先生に撫でられたい。
それか、俺がイルカ先生を撫でてみたい・・・。
撫でて撫でて撫で回して・・・。
色んなところを。
危うく、想像してしまいそうになって我に返った。
ヤバかった。
その間、イルカ先生はいそいそと腕に持っていた袋から何かを取り出していた。
「ほうら、今日はササミだぞ。しかもチーズが入ったやつ。きっと、美味しいぞ〜。」
イルカ先生が言うと犬たちのシッポは激しく振られた。
どうやら好物らしい。
「はい、どうぞ。」
イルカ先生は一つずつ手の平には乗せると順番に犬たちの前に差し出した。
それを、ぱくっと口にすると忍犬たちは美味そうに食べている。
食べ終わるとイルカ先生は別のものを取り出す。
「ほら、パックンが食べたがっていたパンだよ。」
見た目がロールパンに似た、小さめのパンを今度は与えている。
犬用のパンまであるのかあ。
「パックンのリクエスト通りにミルク味とサツマイモ味にしたよ。」
そんでもって味の種類まであるのか〜。
「イルカ、すまんのう。」
パックンは口をモグモグとさせながら言っている。
他の犬たちも口々に「うまい!」とか「美味しい!」とか喜んでいた。
そしてイルカ先生に、ありがとう、と。
・・・そんなに犬用の菓子って美味しいのか。
うちは必要な食事以外あげていないからなあ。
だって、それが忍犬だから。
お菓子っていうか、おやつを貰った忍犬たちは何やらイルカ先生と話している。
食べ終わってシッポを振りながらイルカ先生の足元に体を擦りつけていて。
とっても楽しそうに。
そして親しそうに。
・・・・・・羨ましい。
すっごくすっごく羨ましい。
俺も、あんな風にイルカ先生にボディタッチしたい。
じゃなくて!
親しくなりたい、無二の親友のように。
そして、それを飛び越える仲に。
暫くすると犬たちはイルカ先生に別れを告げて去って行った。
「じゃあな〜」と忍犬たちに手を降るイルカ先生は少し寂しそうだった。
姿が見えなくなると「行っちゃった・・・」と呟いている。
ああ、俺ならここにいるのに〜。
望むなら、いつでもイルカ先生の傍にいるのになあ。
俺じゃダメかなあ。
こんなに好きなのになあ。
物陰から、じーっとイルカ先生を見つめているとイルカ先生は小さく溜め息をついてアカデミーの職員室に戻って行ってしまった。
家に帰ると忍犬たちが既に帰宅していて俺にお使い完了の報告をしてきた。
「あのさあ、君たち。」
俺は羨ましさ半分、妬ましさ半分で言った。
「どっか寄り道してこなかった?」
「寄り道?」
忍犬たちは一斉に首を傾げる。
・・・こんな時だけど、犬が首を傾げる仕草って可愛いよね。
「真っ直ぐ帰って来なかったでしょ。」
イルカ先生のところにいたのは知っているけど、どこで油を売っていたの?と訊いてみた。
すると忍犬たちは俺の顔を食い入るように見始めた。
「お使いの帰りに。」
「ちょっとだけイルカ殿のところに寄ってきたのだが。」
「頼まれたものは急ぎではなかったようなのでな。」
「ほんの少し、四半時ばかりイルカのところに散歩がてら寄ったのじゃ。」
「それだけだ。」
そうそう、と忍犬たちは言うけれど。
お前ら、イルカ先生にお菓子貰って撫でられていたじゃないか。
ずるい!とは、さすがに言えなかった。
それよりも俺の顔を見ていた忍犬たちは、ひそひそと話を始めた。
「やっぱり、イルカは目が悪いのではないかのう。」
「そうかもしれん。」
「今度、会ったら視力検査をするように勧めるか。」
「イルカ殿も若いのに目が悪いなんて気の毒に。」
「本当だな。」
何やら話しているが。
「ちょっと待て!」
俺は無理矢理、話に割り込んだ。
「イルカ先生がどうしたって!」
イルカ先生のことなら俺も知っておきたい。
だってイルカ先生のことだから。
「言いなさい。」
強めの口調で言うと忍犬たちは渋々と話し出した。
「イルカがなあ。」
「カカシのことを。」
「格好良いと言うんだ。」
「いつも、いかがわしい本を読んでいるカカシのことを。」
「いつも覆面で顔を半分を隠している胡散臭いカカシのことを。」
「いつも朝は起きれずに寝坊して遅刻を常習としているカカシのことを。」
「いつも・・・。」
「あー、もういい。」
いつまでも続く俺の話を俺は遮った。
忍犬たちが俺のことを日頃、どう思っているのか、よっく分かった!
でも、今は。
「イルカ先生、俺のこと格好良いって言っていたのか?」
事実確認が先だ。
忍犬たちは不承不承頷く。
「なんでも本を読んでいる眼差しがアンニュイで憂いを帯びているんだとか。」
「覆面がミステリアスな感じでドキドキするとか。」
「大人なのに、子供みたいに朝、起きれないところがアンバランスで可愛いとか。」
「それらを纏めて格好良いと言っていた。」
「そっかそっか。」
俺は、それを聞いて頬が緩んだ。
そっか、イルカ先生、俺のことをそんな風に思っていたのか〜。
嬉しすぎて顔が、にやけてしまう。
にやにやするのが止まらない。
あー、嬉しい。
そんな主人のにけやた顔を忍犬たちから隠す為に俺は。
いかがわしい本を開いて読む振りをして顔を覆い隠したのであった。
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