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犬の寝言



久しぶりに川原で忍犬たちに訓練して、一休み。
犬たちは疲れて木陰で昼寝を始めてしまった。
まあ、いっか、と俺も木陰で懐から本を取り出して読み始めた。
少し休憩だ。
しばらく経った時だった。



寝ている忍犬の尾が、ぱたぱたと揺れ始めた。
耳も、ぴくぴくと動いている。
多分、これはあれだ。
寝ながら夢でも見ているのだろう。
割と、こんなことはよくあった。
寝ながらシッポと耳が動くのは可愛らしい。
その仕草に和んで俺が微笑んだ、その時だった。
忍犬の口から思いもよらぬ寝言が聞こえた。



「うーん。イルカ殿、もう食えない・・・。」
一匹が言っている。
なに、その新婚家庭のようなセリフ!
しかもイルカ先生の名が!
「イルカ、いつもすまんのう。」
これはパックン。
すまん、って何が!
「これは美味い!」と、もう一匹が言う。
何が美味いの!
胸が騒めくような羨ましい言葉が次々と聞こえてくる。
むにゃむにゃと犬たちは寝言を言っていた。
他の犬もイルカという言葉を言っている。
なんでだ!



俺だって・・・。
俺だって、そんなセリフを言ってみたいのに〜。
イルカ先生に一目会った、その日から恋の花が咲いた俺は果敢に毎日毎日、せっせとアタックして、やっとのことで一緒に帰れるようになるまでになったばっかりだと言うのに。
羨ましい・・・。
正直、ほんとに羨ましい。
イルカ先生に対して、そんな夢を見ている忍犬たちが・・・。
でも、なんで、そんな夢を見ているのかなあ。
夢って脈絡のないことも多いけど現実の出来事が下地になって夢の中に出てくることもある。
・・・ということは。
忍犬たちはイルカ先生と何らかの接触か繋がりがあるということなのか。
あるとしたら何、繋がりなんだろう?
是非とも真相を確かめたい。



そうこうするうちに忍犬たちが起き出した。
ふあー、と呑気に欠伸をしている。
しかし俺は、それどころではない。
「ねえ、パックン。」
「なんじゃ、カカシ。」
パックンは面倒くさそうに返事をした。
「うん、あのさあ。」
なんと切り出したら、いいものか・・・。
イルカ先生のことなので夢の中で何があったのか、忍犬相手に聞くだけなのに緊張してしまう。
「うーんとねえ。」
「どうしんたんじゃ。」
俺の態度に忍犬たちは不審な目をする。



「変なこと聞くけど。」
「だから、なんじゃ。」
「イルカ先生の夢、とか見た?」
とうとう、訊いてしまった。
ドキドキしながら忍犬の応えを待つ。
「イルカ?」
忍犬たちが一斉に首を傾げた。
「イルカ殿がどうかしたのかのう。」
「寝言でイルカ先生の名前を呼んでいたよ。それに、もう食べられない的なことや美味いとか何とか言っていた。」
「ああ!」
再び、忍犬たちが一斉に頷いた。
「あれじゃな。」
「あれか。」
「あれだな。」
思い当たる事があるようで、うんうんと頷きあっている。



そうじゃなくて〜。
何があったのか教えてよ!
俺が執拗に促すと忍犬たちは口々に説明してくれた。
「カカシのお使いとかで里を歩いていると。」
「偶にイルカ殿と会ったりする。そうするとイルカ殿は。」
「俺たちを撫でてくれたり、お菓子をくれたりするんだぜ。」
「菓子は犬用の菓子を、わざわざ持ち歩いてくれて、それをくれるのだ。」
「なんでもカカシの許可は取ってあると言っていたぞ。」
「そういうことだ。」
「それを夢にみたのだろう。」
・・・ということだった。



イルカ先生が俺の忍犬たちにお菓子を。
しかも犬用。
俺の許可を取ってある、と。
記憶を探ってみる。
えーとえーとええーと。
「あ!」
思い出した!
そうそう、あれはイルカ先生と先日、一緒に帰った時のこと。
イルカ先生が俺に忍犬について尋ねてきた。
以前に数回、何かの拍子でイルカ先生は俺の忍犬たちに会って、忍犬たちと顔見知りになっていたのだ。



イルカ先生は躊躇いがちに俺に言ってきた。
「カカシさんの忍犬たち、可愛いですね。」
あのとき、控えめな笑顔を浮かべてイルカ先生は嬉しそうにしていた。
「そうですか。」
イルカ先生の笑顔に舞い上がっていたのを俺は覚えている。
「はい。俺、動物が、特に犬が大好きなんです。」
「そうですかあ。」
俺はイルカ先生のすきなものを一つ、知って浮かれてしまっていた。
そうか、イルカ先生は犬が好きなのか〜って。
「それで、ですね。」
そっとイルカ先生は訊いてきたのだ。



「もしも、カカシさんのいないところで忍犬に会ったらお菓子とかあげていいですか?」
「お菓子?」
「あ、もちろん、犬用のお菓子です。それにあげると言っても、急いでいる時や任務の時は別で。偶然、会って時間があったらの話ですけど。」
ちょっと照れながらイルカ先生は言っていた。
犬が大好きなんて子供みたいですね、って言って。
その時のイルカ先生、可愛かったな〜。
目に焼き付いている、その時の顔が。
俺は二つ返事で承諾した。
イルカ先生なら間違いはないだろう、と思ってさ。



そして、その後、忍犬たちはイルカ先生に会う度にお菓子を貰っていたようで。
だから夢にイルカ先生が出てきていたのか〜。
寝言も納得!
・・・じゃなくて。
俺は、がくっと肩を落とした。
イルカ先生と仲良く、すごーく仲良くなりたいと思っていたのに。
一生懸命、イルカ先生に話しかけたりして俺なりに努力していたのに。
犬に先を越されるなんて。
しかも自分の忍犬に。
俺も早く夢にイルカ先生が出てくるくらい、イルカ先生と親しくなりたい。
いや、夢でイルカ先生は会えるけど現実の世界では仲良くなりたいんだよねえ。



はあ、と溜め息をついて空を見ると雲が浮かんでいて。
それが俺の溜め息を乗せて風に流れていったのだった。




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