AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する








イルカ先生がにこにこして帰ってきた。
・・・かわいい。
「ただいま〜」
「お帰りなさい」
「はい、ただいまです」
そう言って俺の頬に唇を軽く押し付けてきた。
・・・これは!
ただいまのチューってやつか。
イルカ先生に何があった?
いつもは俺からするのに。
何か良いことでもあったのかなあ。
その理由は夕飯を食べ終えた後に判明した。



「見てください!」
じゃーんとイルカ先生はテーブルの上に本を並べた。
「紅先生に借りてきました!」って本を三冊。
タイトルを見て俺は凍りついた。
だって、そのタイトルって・・・。
『昔の恋人は忘れましょう』
『次の恋へ』
『新しい恋人』
ってやつだった。
紅・・・。
年末になんちゅー不吉な本をイルカ先生に貸すんだ。
後で絶対文句を言ってやる。
俺が心の中で誓いを立てているとイルカ先生が俺の心中、知ってか知らずか、いや知らないと思うんだけど。
嬉しそうに一冊一冊、本を手に取って眺めている。
「この本、女の子の間ですごく流行っているそうなんですよ。どこの本屋さんも売り切れだそうで」
「へ、へー」
「紅先生に今時、恋愛小説の一つや二つは読まないと時代の波に乗れないわよって言われて」
それで貸してもらったらしい。
紅のやつ、余計なことを。
だいたい、時代の波ってなんだそれ。
俺とイルカ先生との間には時代の波なんていらんっての。
いつまでも変わらないんだから。
俺の眉間に皺が寄る。
イルカ先生がそんな俺に気がついて言った。
「とっても面白いそうですよ。カカシさんも読みますか?」
勧められたけど・・・。
俺は恋愛小説はこれって決めているのがあるのでって、やんわり断った。
いつも読んでいる愛読書。
イルカ先生も知っているので、それ以上は俺に勧めることはしなかった。



イルカ先生が借りた本を読み終わって紅に返したのを確認した後。
俺は予定通り、紅に文句を言った。
「イルカ先生に何て本を貸すんだ!」
「あら、イルカ先生喜んでいたけど」
紅はあっさり俺の抗議を交わす。
「おまけに面白いとか言って本を勧めて」
俺はぜんぜん面白くない。
「面白いって私が言ったのはね」
ちらりと紅は俺を見て、にやりとした。
「カカシが、きっと面白い反応するだろうなあって思ったのよ」
「・・・は?」
「本も、まあまあ面白いし、ちょっとした悪戯心でイルカ先生に貸したの。カカシの反応が面白いだろうと思ってね」
「くーっ」
つまり紅に踊らされたわけだ、俺は。
「予想通りというか、そのまんまというか。カカシって本当に面白いわねえ」
俺を見て紅は、しみじみと言った。
「それに」
もっとしみじみと。
「イルカ先生のこと本当に好きなのねえ」
「当たり前だ」
ここはきっぱりはっきりと。
言っておかなきゃならないときもある。
「俺はイルカ先生が好き」
堂々と胸を張る。
「まあ、いいんだけどね」
はあ、と紅は溜め息を吐いた。
「イルカ先生もそんな反応だったわ」
「え?」
「なに、嬉しそうな顔してんのよ」
はああ、と更に深い溜め息を吐いた紅は悔しそうに言った。
「イルカ先生が本を返しにきたときね、聞いてみたの。面白かった?って」
そしたらイルカ先生ね。
「面白かったですよ、非現実的でって言ってたわ」
非現実的。
「つまりイルカ先生は現実と本の中の世界を完全に別々に見ていて、このくらいじゃびくともしないのね」
そういやイルカ先生、変なところで現実的だからな。
「イルカ先生のカカシが好きって気持ちは、こんな本を読んだくらいじゃ揺るがないってことよねえ」
「あ、そう」
俺はもう完全に顔が緩んでいた。
そうなんだ〜。
一気に気分が明るくなる。
「ありがとねえ、紅」
年末に好いこと聞いた。
とっても嬉しい。
嬉しすぎ。
「紅にも好いことあるといいねえ」と言うと控え室を追い出された。



嬉しいなあ。
あったかくて、ほんわかした気持ちが胸をしめる。
この一年イルカ先生を好きで、来年もきっと好き。
再来年もその先もずっと好き。
イルカ先生を好きでよかった。
イルカ先生と好きになってよかった。
この今の俺の気持ちを改めて伝えたいなあ。
そしたらイルカ先生は何て応えてくれるだろう。
俺と同じ気持ちだったらいいな。
多分、同じだと思うけど。
年末に降って湧いた幸せだった。




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