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しあわせいっぱい



今日は五月二十六日。
俺の誕生日だ。
この世に生まれて二十数回目の。
だが、まあ。
俺ももういい大人だし、誕生日は嬉しいけれどそれを大っぴらにするほど子供ではない。
別に誰に祝われなくても気にしないし。
それでも誕生日ってだけでウキウキした気分にはなる。
そんなわけで今日が誕生日の俺は一人で心密かに浮かれて上機嫌だった。



「あ、イルカ先生!」
朝、出勤途中にアカデミーでの教え子三人組に会うと呼び止められた。
三人とも下忍で同じ七班に所属している。
上忍師から現在、指導をされて修行やら任務やらをしている身だ。
その上忍師今は単独任務で里を出ていて今夜帰還予定だけど、今日は七班である三人だけで自主鍛錬するようだ。
「おはよう!」
挨拶をしてから俺は会えた嬉しさで三人の子供の頭を順番に撫でていく。
太陽のような金色の頭、俺と同じ黒髪の頭、最後の桃色の頭は女の子なので髪を乱さないように、そっと。
「みんな、元気そうだなあ」
アカデミーを卒業すると余り会う機会はなくなるから会えると嬉しい。
顔が知らずに綻んだ。
「頑張って修行しているか」
優しく問うと皆頷く。
うんうん、みんな、いい子だなあ。
にこにこしていると三人がすっと手を差し出してきた。
開いた手の平の上には飴玉。
それぞれ違う種類。
・・・・・・何だろう。
「イルカ先生、あげるってば」
「貰ってくれ」
「どうぞ、イルカ先生」
「あー、うん」
何となく腑に落ちないものを感じながら飴玉を受け取る。
「ありがとう」
でも何で?
聞く前に子供たちは行ってしまった。
「修行に行くってば!」
「イルカ先生、またね!」
「・・・じゃあな」
「ああ、頑張ってな!」
飴玉をポケットに仕舞って子供たちを見送ってからアカデミーに出勤した。



アカデミーに出勤すると何故か俺の机の上に飴玉が何個か乗っていた。
・・・なんで?
「あ、俺もやるよ」
隣に机の同僚が俺の机の上に飴玉を一個置く。
「ありがと」
やっぱり腑に落ちない。
何で?とやっぱり訊こうとしたら朝の会議が始まってしまい、飴玉の件はそのままになってしまった。



アカデミーの仕事の合い間に火影さまに決裁を頂く書類を持っていくと、にこにこした火影さまから言われた。
「イルカ、これをやろう」
ぽとっと手の平の上に落とされたのは飴玉一粒。
──また飴?
「これはな」
にやりとした火影さまの口角が上がる。
「一粒食べれば天にも昇った気持ちになれる、所謂、賭け事で大勝ち一人勝ちしたときの気持ちになれる効果がある飴だ」
すっごい怪しげだ・・・。
「私も大負け一人負けしたときにこの飴を舐めて気持ちを慰めている・・・」
ここでしんみりとなる火影さま。
「そして気分を一新して再び」
俯き加減だった火影さまが顔を上げる。
「勝負に挑むのだ!」
拳を握る火影さまの瞳の中の真っ赤な炎がメラメラと燃えていた。
火影さま、一人で盛り上がっている・・・・・・。
「ま、まあまあ、綱手さま落ち着いてください。今まで賭け事で大勝ちしたことも一人勝ちしたことも一度もないじゃないですか」
側にいたシズネさんが何気に火影さまに止めを刺して苦笑いしながらも俺に飴玉を差し出してきた。
「これは私からです。私のは疲労回復、リラックス安眠、家内安全、無病息災に効果あります」
前半は分かるけど後半の家内安全とか無病息災って・・・。
シズネさんの飴玉も充分、怪しげだった。



火影さまの部屋を退室してから上忍控え室に用があったので行ってみる。
数人の上忍の方に伝言を伝えて去ろうとすると顔馴染みの上忍に呼び止められた。
「ちょっと待って、イルカ先生」
紅先生が飴玉をくれた。
「はい、これ、日本酒味よ」
「ありがとうございます」
「あ、私からは甘味味」
これはアンコさん。
アスマさんからも飴玉を貰った。
「ほらよ、俺は蕎麦味だ」
どんな味がするんだろ、食べるの怖い。
他の数人の上忍の方からも飴玉を貰った。
今日はやけに飴玉を貰う。
お陰でポケットの中は飴玉だらけだ。
それが何だか妙に嬉しかった。



それから夕方までアカデミーまで仕事をして帰宅する。
それまでにも誰かかしらから飴玉を貰った。
何で今日は飴玉を貰うんだろう?
もしかして五月二十六日って飴玉の日だったりするのか。
そんなことを考えて歩いていたら家に辿り着いていた。
「ただいまー」
誰もいないことを想定しながらドアを開けたら返事が聞こえた。
「お帰りなさーい」
おまけにいい匂いもする。
これはご飯の匂いだ。
それを合図に応えるようにお腹が鳴って急速にお腹が減ってきた。
「イルカ先生」
部屋の奥から声の主が出てきた。
「カカシさん」
自然と俺の顔は綻んでしまう。
「お帰りなさい、早かったんですね」
帰還は今日の夜だったはずなのに。
「頑張って終わらせて帰ってきました」
だって今日はイルカ先生の誕生日ですから」
「ただいま」
そう言って俺を抱き締めたカカシさんは俺に軽くキスをする。
「誕生日のプレゼントは要らないって言われたので」
せめてご馳走とお酒は用意しました。
「あとケーキもね」
「ありがとうございます」
嬉しいなあ、カカシさんが帰ってきてくれたこともカカシさんが俺のためにしてくれたことも。
「嬉しいです」
言葉に出してカカシさんに抱きつくと笑いながら、もう一回抱き締めてくれた。
「誕生日おめでとう」
心から言われて胸がいっぱいになる。
ああ、幸せだ・・・。
生まれてきてよかった・・・。
カカシさんに会えてよかった・・・。



「ん?これは何です?」
俺を抱き締めていたカカシさんの手が飴玉で膨れていた俺のポケットに当たり不思議そうに訊かれた。 「そうそう」
ポケットから大量の飴玉を取り出す。
「これ、今日、いろんな人から貰ったんです」
七班の子供たち、アカデミーの同僚、火影さまにシズネさん、紅先生にアンコさんにアスマ先生、他にもたくさんの人から。
それを言うとカカシさんの顔が微妙に顰められた。
嫌そうに。
何か知っているのかな?
「今日は飴玉の日か何か何ですかね」
「いえ、それは」
カカシさんが嫌そうに言う。
「俺が」
「カカシさんが?」
「イルカ先生の誕生日にプレゼント渡すなら飴玉一個までって言ったからだと」
・・・だからみんな飴玉一個くれたんだ。
「だってイルカ先生、俺にプレゼント要らないって言ったでしょ。俺が渡せないのに他の誰かからイルカ先生がプレゼント貰うのなんて嫌だから」
・・・プレゼントを要らないって言ったのはカカシさんの気持ちだけで嬉しかったから。
「それに俺が一番にイルカ先生に『誕生日おめでとう』を言いたいから俺より先に言うの禁止だって言い回っておいたんです」
・・・だから誰も誕生日のことには触れなかったのか。
「イルカ先生、ごめんね勝手なことして。だけど」
それくらいイルカ先生のことが好きなんです〜って言われたら俺は嬉しくて幸せで何も言うことは出来ず。
「もう一回『誕生日おめでとう』を言ってください」とカカシさんにオネダリした。
俺にはそれが最高の誕生日プレゼントだったから。





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