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sheep(羊)




五代目火影の執務室で事務処理を手伝っていたイルカは喉に痛みを感じて口に手をあてた。
けほっと小さな咳が出る。
それを聞きとめた五代目が言った。
「イルカ、風邪かい?」
「いえ、風邪というほどではないのですが、喉が痛くて。」
「ふーん、そりゃ大変だ。」
五代目は机の引き出しを開けると中を、がさがさと漁ってポイと何かを投げて寄越した。
「これ、舐めるといいよ。」
キャッチしたイルカが手の中を見ると赤い粒上のものであった。
「何でしょうか?」
「喉の痛みに効く飴だ。炎症止めも入っている。」
医者である五代目がいうのだから本当だろう。
イルカは微塵も疑わずに、その飴を口に入れた。
苦いような甘いような味がする。




しかし飴を舐め終わると、ある変化が訪れた。
喉の痛みは治まったのに、イルカは頭の両横、耳の上辺りが妙に痒くなってきたのである。
思わず指で引っかいてしまう。
かき始めると止まらない。
「どうしたんだい?」
イルカの様子を訝しげに見る五代目。
「いえ、その、なんだか頭が、すごく痒くて。」
痒みは止まらず、更に増した。
「ええ?だいじょぶかい?」
「それが、治まらなくて・・・。」
言いながらイルカは、がしゃがしゃと頭をかき毟った。





そして次の瞬間、イルカの頭に異変は起きた。
にょっきり、とイルカの頭に何かが生えてきていたのだ。
「な、なに、これ?」
驚いたイルカが触ってみると非常に固い感触がする。
頭も妙に重たいしバランスを取るのが難しくなっている。
重心が上の方になっていて、イルカは二、三歩よろめいてしまった。
「五代目、俺、どうなったんでしょうか?」
恐る恐るイルカが聞くと五代目は目を見開き驚いて立ち尽くしている。
「なんてこったい!イルカの頭に角が生えた。」
「角?」
もう一回触ってみると渦巻き状になっている様であった。
「この角って・・・。」
「羊に生える、くるくるとした渦を巻いた角だよ。」
「羊の角?何でそんなものが?」
イルカは不思議そうに聞く。
自分自身に心当たりはない。




「何でって・・・。」
少し考え込んだ五代目は「あ、もしかして!」と先程、イルカに渡した飴が入っていた机の引き出しを開けて、もう一度、がさがさと中を漁った。
そして叫んだ。
「間違えた!」
机の上に、引き出しから出した色とりどり飴を並べる。
「色々あって間違えてしまったんだ。さっきの飴は猫の耳が生える飴だった。」
青い飴を指差し「これはイビキに頼まれた毛が生えるやつ。」、赤い飴を指差して「これはカカシに頼まれた猫の耳が生える薬。」と説明した。
「で、だな。」
五代目が腕組をして言い難そうにする。
「喉の痛みに聞く飴はカカシに頼まれた飴の色と非常に、よく似ていて間違えてしまったんだ。ついでに多分、成分の配合を間違えて羊の角になってしまったんだ。」
「でも、喉の痛みも治まりましたよ?」
「そりゃあ。」
ごほん、と五代目が咳払いをした。




「カカシが喉の痛みに効くとか言えば、相手は何も疑わず舐めてくれるし、猫の耳が生えても原因も分からないだろうから自分がやったことだとばれないって。」
「・・・で、その飴を舐めさせたい相手って誰なんでしょう?」
イルカは、にっこりと笑っていた。
もちろん、カカシとイルカは恋仲であるから、カカシが飴を舐めさせて猫耳にさせたい相手をいうのはイルカの他にはいないであろう。
しかし、イルカの笑顔を見た五代目は背筋に冷たいものがはしった。
「さ、さあねえ、そこまでは私だって知らないよ。」
誰に使うかなんて知ってはいたが五代目は、しらばっくれた。
「だ、だってカカシが猫耳になる飴を作ってくれれば、高額なお金を払いますからって言うからさ〜。」
小遣いが少ないんだもん、、と五代目は言い訳した。
「で、でも猫耳って言われたのに羊の角になちゃったから、もうお金は貰えないかも・・・。」
五代目の声は小さくなる。
「どーしよう、イルカ。」
「そんなの知りませんよ。」
イルカは呆れて少し溜め息をついた。
「だって久しぶりに現金が手に入るからシズネが任務でいない、この隙に賭場にでも行こうと思っていたのに〜。」
「五代目。」
どさり、と執務室の机の上に山のような束の書類が置かれた。
「仕事です。たっぷりとあります。」
優しくイルカは微笑んでいた。
「どこにも行かせません。」
五代目は今更ながらに後悔して、たっぷりとある仕事をする羽目になった。





その夜、任務から帰還したカカシが火影の執務室に訪れた。
羊の角が生えたイルカを見て「可愛い。」と言い「すごく似合う。」なんて宣い、イルカから頭突きならぬ角突きを喰らっていた。
「痛ーい。イルカ先生、ひどーい。」
泣き真似をするカカシにイルカは言った。
「変なこと、五代目に頼まないで下さい。」
イルカが睨んでもカカシは怯む様子はなく、逆に満面の笑みになる。
「いいじゃないですか、恋人の色んな姿を見たいと思うのが男心ですよー。」
ちっとも反省していなかった。
「本当は猫耳が良かったけど、思わぬハプニングでイルカ先生が羊の角が似合うのが分かったし。」
これが所謂、棚ボタってやつですかねえ、と喜んでいる。
カカシに、うんと怒ってやろうと思っていたのに、なんだか気が削がれてしまう。
イルカは、自分が自分の恋人に敵うことは生涯なさそうだ、と静かに悟った。





どんな自分でも好きでいてくれる。
複雑な心境ではあったが、嬉しいことには変わりはない。
こんなに自分のことを好きでいてくれるカカシが好きだ。
そう素直に言えないイルカであったが、これからカカシがくれる物にはちょっと気をつけようとも思うイルカであった。







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