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一口食べてよ



任務が終わっての七班と一緒の帰り道。
今日は三人とも報告書を出しに受付けまで着いてくると言う。
どういう風の吹き回しかと思いつつも、イルカ先生に会いたいんだなと推測する。
時々、思い出したようにイルカ先生に会いに行くんだよね〜、この三人。
はしゃぐ三人と商店街を通り抜けて、受付けへ行くことに。
ある一軒の店の前でナルトが止まった。
他の二人も立ち止まる。
そして視線は店先へ。
食欲をそそられる旨そうな匂いが漂ってくる。
ああ、コロッケを店先で揚げて売っているんだね、ふーん。
そう思って見ていたら、視線がちくちくと刺さってきた。
「ん?」
ナルト、サスケ、サクラが、じーっと俺の方を見ている。
しばらく見てから、視線をまたコロッケに戻す。
・・・育ち盛りだもんね、任務の後は腹減るよね、夕方だしね。



「おいしー。」
三人が口を揃えてコロッケを頬張っている。
俺も一緒にコロッケを齧る。
なかなか美味しい。
結局、三人の熱意に負けた俺がコロッケを買い、行儀悪いが食べながら歩いていた。
たまにはね、買い食いもいいだろう。
ちょっと楽しいし。
「お、いいもの食べてるな〜。」 突然の後ろからの声に振り向くと、そこには両手に荷物を持ったイルカ先生がいた。
にこやかな顔で俺達を見ている。
食べながら歩いていたので、少し恥ずかしい。
「あはは〜。イルカ先生、えーと。」
俺が必死に言い訳しようとしている横で子供達は素直にイルカ先生に駆け寄って行った。
「このコロッケ、すっごく旨いってば。」とか「カカシ先生が買ってくれたの。」とか「腹減っていたから。」とか報告している。
イルカ先生は「そうか、良かったな。」と相槌を打って、にこにこしていた。
別に食べ歩きのことは怒ってないみたいだ。



安心する俺の前でナルトが「はい。」とイルカ先生にコロッケを差し出した。
「一口食べていいってば。」
ナルトが言うと、サスケもサクラもコロッケを差し出す。
「イルカ先生、一口食べて。」
「俺のも一口いいぞ。」
「ええ?いいのか?」
戸惑っているものの、イルカ先生は三人に言われて、とても嬉しそう。
この人、子供に弱いからなぁ。
照れ笑いを浮かべながら、三人から小さく一口貰っていた。
「旨いなぁ、熱々で。」
イルカ先生が感想を述べると子供達は「そうでしょう?」「そうだろ?」「おいしいだろ?」と口々に言っている。
でもさ、買ったのは俺なんですけど。



それに。
俺の差し出しているコロッケをイルカ先生は食べてくれない。
子供達のを食べた後は自然の流れで俺のを食べてくれてもいいんじゃないの?
イルカ先生は子供達からコロッケを一口ずつ貰って食べた後「じゃあ、まだ、お使いがあるから。」と行ってしまった。
そんなぁ。
コロッケを手に持って固まっている俺を見て、ナルトが「食べないんなら貰うけど。」なんて言ってくる。
俺は、ばくっとコロッケを一口で口に押し込み食べ終えた。
旨い、でも、ちょっと悲しい。
イルカ先生が食べてくれたら、もっと美味しかったのにな、なんて思っていると。
子供達が言った。



「じゃあな、カカシ先生。」
「明日は遅刻すんなよ。」
「ご馳走様でした。」
そして帰ろうとする。
「えっ?受付けまで行かないの?」
驚く俺にナルトが軽く言う。
「だって今日はイルカ先生受付けにいないもん。」
「そうねえ、今からお使いじゃ受付けにいないわね。」
「会えないんなら行きたくない。」
なんてストレートに意見を言うんだ。
俺が心の中で涙していると、三人はあっさりと「さようなら。」と去って行ってしまった。



子供って、よく言えば素直だけど、時にはそれが厳しいよ。
イルカ先生は俺のだけ食べてくれないし。
何だか悲しくなって黄昏てしまった夕方だったけれども。
お使いから戻ってきたイルカ先生と偶然会うことができて。
そんで二人で夕飯を食べに行った。
コロッケの一件を話したら、イルカ先生は「大人から一口貰って食べるなんて変でしょ?」だって。
そうかなあ、別にいいじゃん。



その時は、食べてくれるのが普通だと感じたんだけど後になってから気づいた。
イルカ先生のことが実は好きだったんだなあって。
だから俺のも食べて欲しかったんだなって。
自分でも気づかなかったけど。
そういうことって、よくあるのかな。

好きなのに好きだと気づかないことが。



でもまあ、今は。
俺は好きな人と一緒にいることができて、とても幸せだ。




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