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LoveFlower



イルカの誕生日の次の日。
夕方近くになり、仕事の合い間にイルカは昨日のカカシの言葉が心配になって、火影の部屋を訪ねてみた。
扉をノックして、そろっと顔を出すと部屋の中は、どこも壊れていない。
半壊も全壊もしていなかった。
「あれ?」
きょろきょろと見回しても、いつもの火影室に変わりはない。
「おお、イルカじゃないかい」
イルカに気がついた五代目火影の綱手がイルカを手招きした。
「こっちにおいで」
扉を閉めて部屋の中に入る。
「カカシの件では済まなかったね」
ストレートに謝られた。
「いえ、そんな・・・」
イルカは慌てる。
木の葉の里の一番偉い人に謝罪されているのだ。
しかも、どちらかというとワザとやったわけではないことで。
両手を顔の前で横に振って、ついでに首も横に振る。
「火影さま、謝らないでください」
そんなことをされたら本気で困ってしまう。
もう、カカシの記憶は元に戻っているのだから。
イルカの知っているカカシに戻ったのだから。
これ以上は望まない。



「そうか、本当にすまなかった」
言って、綱手は手を合わせて苦笑いをする。
「面目ない、次からはこんなことがないように肝に銘じるよ」
「しかし、難解な術でしたね」
傍にいた綱手の付き人をしているシズネが言った。
「記憶喪失と見せかけて、本当は単に数日間、記憶を失くす術だったなんて」
「まあ、術者のチャクラが足りなくて、記憶喪失までは出来なかったんだろうな」
「それにしても複雑怪奇な、それでもって歪みまくった術でした」
「確かに」
綱手も頷いた。
「あのおかしな術は術者の性格を反映しているかもしれないな。近年、稀に見るほど歪で捻じ曲がって底意地の悪い術だった」
綱手とシズネが、そこまで言うなんて。
術者は、いったい、どんな人物なのだろう。
少し、興味がそそられるが・・・。
「あのですね」
昨日のカカシの発言は何だったのか、気になって訊いてみた。
「実はカカシさんが火影さまの部屋を壊したとか言っていたのですが・・・。それと雷切を発動したって」
「ああ、それか」
はあ、と綱手は息を吐いた。
「雷切を発動させたのは本当だよ。昨日は危なかったなあ」
「ですね、間近で見る雷切は迫力ありましたね」
「発動させただけで、放ちはしなかったが」
「それでも、ギリギリセーフって感じでした」
うむ、そうだ、と綱手は頷いた。
「部屋を壊した云々は、それくらいしたいというカカシの心意気だったのではないか?」
この場合、心意気というのは正しいのだろうか?
勢いで言ってしまったとか?と綱手に指摘される。
「まあ、カカシなら言いそうだな」
言って、一人でうんうんと納得している綱手。
言いたい放題の感もある。



「そうでしたか」
とりあえず、イルカは安心した。
火影の部屋は半壊も全壊もしていなかったのだから。
「ところで」
イルカは何気なく言った。
「カカシさんは、どうやって記憶が蘇ったんでしょう?」
どうやって、記憶が戻ったのか?
それは昨日の時点でカカシは語っていない。
「どうやってって」
綱手とシズネは顔を見合わせた。
「普通に、じゃないかい?」
「自然に、ですよね?」
普通、自然・・・。
引っ掛かる言葉だ。
「昨日の朝っていうか、早朝にカカシさんがこの部屋に駆け込んで来まして」
「そうそう、徹夜で仕事をしていて頭が、ぼーっとなっているところへだな」
「手に何かを抱えていて、これは何だ?と私たちに訊くんです」
何かって何だろう?
イルカは嫌な予感がする。
「持ってきたのはアルバムだったな」
「はい、それも何冊も。ご自宅には、まだまだあるって言ってましたね」
「そうだ、あれはなあ」
渋い顔で綱手はイルカを見る。
シズネも眉根を寄せている。
「イルカ、困ったことがあったら、いつでも相談に乗るぞ」
「そうですよ、身辺には気をつけてくださいね」
なぜか、二人に心配された。
「・・・どういうことでしょう?」
訳が解らずに不安だけが胸に募る。
「カカシさんが持ってきたのってアルバムだったんですよね、イルカさんの」
「イルカの写真ばっかりのだ。あの写真のアングルは、どう見ても隠し撮りだな」
「上忍の力をフルに発揮して撮った感じでしたよね」
綱手とシズネはどんな写真を見たのだろう。
考えると恥ずかしさで体が燃えるように熱くなってくる。
・・・いったい、いつの間に。
「過激な写真は家に置いてきたって言ってましたよね」
「昨日のアレだけでも、十分に過激のような気がするが」
ひどい言われようだ。
もはや、イルカは顔まで熱い。
もう!カカシさんのバカ〜・・・。
心の中で文句を言う。



「ま、とにかく」
綱手が話の筋を修正した。
「イルカの写真を切っ掛けに普通に自然に、術に解れが出たんだな。そして、解術に至ったわけだ」
「そういう訳なんですよ、イルカさん」
「そ、そうでしたか」
もしかして、聞かなきゃよかったかもしれない。
「隠し撮りには用心してくださいね」
「写真には気をつけろ」
二人に変なアドバイスをされた。
「で、記憶の戻ったカカシは絶叫したわけだな、カレンダーで日付を見て」
火影の部屋にもカレンダーが貼ってある。
「そうです、叫んでいました。イルカ先生の誕生日だあああって!」
「そ、そうですか」
真っ赤な顔になったイルカは俯いてしまった。
女性二人の顔が、まともに見れない。
「約束したのにイルカ先生、怒っているだろうなあって、がっくり膝を突いて絶望してましたよね」
「それから、あれもこれも総て私の所為だと雷切を発動させたんだ」
私が悪いのは事実だがな、と素直に自分の否を認める綱手は、やはり火影である。
「本気で部屋を破壊しようとしていましたけど、時間がないって、足音荒く部屋を出て行ってしまって」
その足で、朝の受付をしているイルカのところへと来て、誕生日に贈る花を選んでくれたのだろう。
「解りました」
イルカは深く頭を下げた。
「ご迷惑をお掛けしました」
「なんの、こちらこそだ」
火影は寛大だ。
最後に丁寧に礼を述べて、イルカは火影の部屋を退出した。
真っ赤になった顔が火照っている。



「暑いなあ〜」
手で、ぱたぱたしながら廊下を歩いていると誰かに呼び止められた。
妙齢の女性である、前にカカシと歩いていた。
その女性は、にこやかにイルカに近づいてきた。
何だろう?とイルカは身構える。
「こんにちは」
女性は友好的だった。
「お話したいことがあるんです」
「はあ」
「お時間いただけますか?」
何と応えればいいのか、戸惑っているとイルカと女性の間に強引に割り込んでくる者がいた。
「ストーップ!」
カカシだ。
「その話は前に俺が断ったはずでしょうが。勝手に俺の許可なく、俺のイルカ先生に話しかけないでよ」
女性に向かって、それだけ言うとカカシはイルカの手を引いて、ずんずんと歩き出す。
少しでも女性から遠ざかるように。



「カカシさん?」
「全く、もう。油断も隙もない」
どうやら、カカシは怒っているようで。
でも、何に対して怒っているのか皆目見当がつかない。
「どうかしたんですか」
昨日の今日で心配になったイルカがカカシに聞くと、カカシは溜め息を吐いてイルカを振り返った。
「あいつはね、この前、俺に言ったんですよ。俺とイルカ先生が別れたんだったら、次は私がお付き合いするから邪魔しないでねって」
それだけ言われたもイルカには、さっぱり話が見えてこない。
「俺が術に掛かって記憶が怪しいときに言われたんです。絶対嫌だ、お断り、イルカ先生に近寄るなって、きっぱりすっぱり断ったのに」
「え、俺のことを忘れていたのに?」
「そうですけどね」
カカシは、ぶっきら棒に言う。
忘れた自分に腹が立ちますが、と。
「忘れちゃってましたけどね。でも、イルカ先生が俺のこと『はたけ上忍』って呼ぶのすごく嫌だったし、なんか違うって違和感ありましたし。記憶がないときに初めて会った時から好意というより恋心を持ってしまったし」
意外な事実だった。
「なのに俺とイルカ先生と付き合っていたなんて真実を知ったのなら、黙ってられません」
カカシの言い分を整理してみると、記憶がないときもイルカのことが好きであったということになる。
「あの、カカシさん」
甘酸っぱいような、むず痒いような感覚に襲われたがイルカは尋ねずにはいられなかった。
「記憶がなくて、俺のことを知らなくても、俺のこと・・・」
好きになってくれたんですか?
「あったり前ですよ!」
カカシは大きく首を縦に振る。
「俺がイルカ先生を好きじゃないなんてありえませんから!」
むしろ、好きにならなきゃおかしいとカカシは力説する。
「こんな可愛くて寂しがりで頑張りやで意地っ張りだけど、実はロマンチストで、思いっきり甘えたいけど甘えるのが下手な人を好きにならずにはいられないですよ」
「カ、カカシさん」
聞いている方が恥ずかしくなる。
本日、二度目の恥ずかしくて体が熱くなり、顔が真っ赤になるのをイルカは体験した。



「さあさ」
カカシはイルカを引き寄せた。
イルカの肩を抱く。
記憶が戻ってからのカカシは遠慮をしなくなった。
遠慮というか、公の場でイルカとの関係を堂々とアピールしている。
女性がカカシとイルカの関係を知っていたというのも気に掛かる。
知っているのはイルカが思っているよりも、もっと大勢の人間かもしれない。
推測するに前は堂々とではなく、イルカに分からないようにアピールしていただけで。
「今日は昨日は出来なかった誕生日のお祝いのやり直しですよ」
「え?昨日もお祝いしてくれたじゃないですか」
「昨日のは急ごしらえで俺が納得していないので」
今日は念入りに準備しました、とカカシは自信を持っている。
「イルカ先生の欲しいもの、全部、用意しましたからね」
イルカが食べたいなあと言っていたものや、いいなあと少しでも言ったものをカカシは、よく覚えている。
「欲しいもの、ですか・・・」
「そうですよ」
カカシは目を細めて笑う。
「イルカ先生の心は俺のもの、考えていることは何もかも解ります」
「だったら」
イルカは微笑んだ。
「欲しいものは、もう貰っていますよ」
欲しいものは、もうある。
とっくに貰っている。
「花束のこと?」
「花束も、ですよ」
昨日、貰った薔薇の花束はイルカの家に飾ってある。
見る度に胸が、あったかくなり幸せな気持ちになる。。
生花なので、いずれは枯れてしまうのが残念でならない。
だけど。
枯れない花は胸の内にあるのだ。
カカシとの愛の花が。
そこまで考えて、本日、三度目の体温上昇、顔が真っ赤をイルカは体験してしまう。
「あれ?イルカ先生、顔が赤いですよ」
どうしたの?と聞いてくるカカシに本当のことは言えなくて。
「内緒です」と唇に人差し指を立てる。
「ふーん」
にやりとカカシが笑ったような気がした。
「いいですよー、イルカ先生のことなら何でも解りますから」
耳元で囁かれた。
・・・俺とキスしたいと思ったんでしょ?
「それで赤くなったんでしょう」
「ち、違います!」
だが、否定すればするほど顔は赤くなり、カカシは嬉しそうに、にやけるばかり。
繋いだ手に力が入る。
カカシの顔を見た。
ああ、この人が好きだ。
大好き。
愛している。
なので、写真のことは愛の証として解釈し不問にしておいた。





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