エディブルフラワー
「エディブルフラワー?」
耳慣れない単語を耳にして俺はサクラに聞き返した。
「何、それ?」
サクラは肩を竦めると「知らないんですか?」と言って「カカシ先生、おじさんだから〜。」と余計な一言を付け足した。
・・・・・・まあ、十代のサクラから見れば『もうすぐ三十路』の俺なんて、おじさんかも知れないけれど。
「一言多い。」と軽く、でこピンするとサクラは「ごめんなさーい。」と舌を出して続きを話し出した。
今は七班での任務の休憩時間なんだけど、サクラが何かを話したそうにうずうずしていたので、俺が話しかけたのだ。
「エディブルフラワーってのは『食用花』のことで食べられる花のことですよ。」
「野草?」
アザミとかタンポポのことかな?
そう言うと「違いますって。」と首を振る。
「それも食べられるかもしれませんけど、私が言ってるのは、ランや薔薇、スイトピーとかパンジーとかの可愛い花のことです。」
可愛い花を強調している。
「ふーん。」
「今の季節だと、カーネーションとかデージー、カレンジュラ、ナスターチウム、ダイアンサスが食べ頃なんですよ。」
「・・・ふーん。」
知らない花の名前がたくさん出てきて、さっぱり分からん。
「で?」
サクラは何が言いたいんだ・・・。
「昨日、いの達と初めて、そのエディブルフラワー食べに、お店に行ったんです!」
ああ、それが言いたかったのね。
サクラは楽しそうに話す。
「サラダを食べたんですけど、すごく綺麗に盛り付けてあって、食べるのもったいなかったんですよー。」
どんな色の花を食べて、どんな栄養素が含まれていて、その食べた花言葉のことなどを延々と話した。
女の子は花が好きなんだなあ〜。
でも俺は一番気になることを聞いてみた。
「それで味は?美味しかったの?」
「え・・・?」
俺の質問にサクラは一瞬、黙る。
「それは、まあ、なんていうか・・・。」
表情が少し曇ったのを見て、なんとなく分かった。
それほど、美味しくはなかったんだな〜。
俺が苦笑しているとサクラは、きっぱりと言い切った。
「きっと毎日食べて、食べ慣れたら美味しいはずです!」
そんな話をして、夕方、任務が終わり報告書を出しての帰り道、イルカ先生に出会った。
俺の意中の人だ。
まだ、告白はしていない。
イルカ先生も今日はもう仕事が終わって帰るだけらしい。
夕飯でも食べて行こうかということになって、ラーメン屋さんに寄った。
食べながら、今日、サクラから聞いた花の話をするとイルカ先生は面白しろそうに笑う。
「女の子は花が好きなんですねえ。」
俺と同じ感想を持ったらしい。
「俺は食べるより見ている方がいいですね。」と言っていた。
「ですよね、戦場なら兎も角、里にいるのに薔薇を食べたりするのは、ちょっとねえ。」
「そうですね。」と相槌を打ったイルカ先生と目が合って二人して微笑んだ。
ラーメン屋さんを出て道すがら話をする。
「カカシさんと会うと子供達の話しが聞けるので楽しいです。」
「そう?」
俺はイルカ先生と話しをするのが楽しい。
肩を並べて歩いていると恋人同士のようだ。
いつか、こんな日がきたらいいなあ。
なのに、楽しい時間は直ぐ終わってしまう。
別れ道に着いて、ここから別々に帰る。
「では、これで失礼します。」とイルカ先生は礼儀正しく挨拶をすると自分の家に向かって歩いて行ってしまった。
俺は姿が見えなくなるまで見送ってから、ふうと溜め息をついた。
イルカ先生に告白して好い関係にいくようにするには、どうしたらいいんだろ?
ふとサクラが昼間に言った『食用花』という言葉に関連して、ある言葉が浮かんだ。
『食虫花』っていう花。
確か虫を食べる花もなんだよな。
もしも、それが俺がそんな花だったらだったら、真っ先にイルカ先生を食べちゃうのになあ。
そしたら告白も必要ないかなあ、なんて考えて・・・。
俺は頭を、ぶんぶんと振った。
駄目だ駄目だ!
いつか、ちゃんと告白するんだ。
イルカ先生に好きですって。
頑張ろう!
きっと、いつか、告白できるはずさ。
そして想いが伝わるに違いない。
・・・・・・多分ね。
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