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fever Halloween!



「まだ、帰ってないのか・・・」
夕方、カカシは明かりの点いてない家に帰ってきた。
イルカの家だが、家主のイルカはまだ帰って来ていない。
「今日は任務じゃなくて、修行するとか言っていたなあ」
とすると、もうすぐ帰ってくるだろう。
言いながら、カカシは着ていた服を、ぽんぽんと脱ぎ捨てた。
暗部の装備も暗部仕様の忍服も床に投げ捨てる。
ぽふん、とベッドに転がった。
「あー、気持ちいい」
目を閉じていると睡魔が襲ってくる。
本格的に寝てしまう前にカカシは布団に潜り込む。
「うーん、イルカの匂いがする」
すごく気持ちが落ち着いた。
「ほんとは本人の匂いが一番いいんだけどなあ」
イルカを抱き締めるのが一番好き。
「でも、しょうがない」
帰ってこないのだから。
「ふわあ〜」
大きな欠伸をしたカカシは目を閉じる。
「ハードな任務から帰ってきたのに、また夜から任務だなんて」
人使い荒いよ、全く。
文句が出てしまう。
少しでも眠っておこう。
目を閉じると、あっという間に眠りに就いた。



「たっだいま〜」
カカシが寝付いて程なくしてイルカが帰ってきた。
「あー、疲れた〜。へとへとだ〜」
一人でしゃべっている。
「あの鬼教官、人間が出来ることさせろっての」
イルカは上から下まで泥だらけだ。
汚れた服を玄関先で脱いで洗濯機の中に入れ、そのまま風呂場に突入した。
汚れた髪や体を洗っている。
「ったく、もう」
シャンプーをしゃわしゃわを泡立てて髪を荒い、石鹸もモコモコと泡立てて体を洗う。
「気持ちいー」
熱いシャワーを浴びて風呂場を出ると、ほかほかイルカの完成だ。
髪や体から湯気を立ち上らせて、いい匂いをさせている。
「ふー、すっきり」
タオルで髪を拭きながらイルカは冷蔵庫を開けて冷たい飲み物を取り出した。
コップに注ぐと、ごくごくと一気に飲み干す。
「あ、そういえば」
イルカは思い出した。
「今日、面白いこと聞いたなあ」
修行を一緒にしていた仲間から聞いた話。
「今日は異国では、お菓子が貰えるとか。お化けの格好して、お菓子くれなきゃ悪戯するぞって言って、お菓子をおねだりするって」
十月の末日は、そんなお祭りがあるという。
初めて聞いたことを誰かに話したい。
話して聞いたもらいたい。
そして、面白いね、と共感してもらいたい。
今のイルカには、そんな相手がいる。
前は一人で住んでいた家だったけど、同居人がいるのだ。
その同居人の気配が隣の部屋からする。
隣の部屋は寝室だ。
「ねえねえ、カカシさん!」 聞いて聞いて!とイルカは隣の部屋へと続く襖を開けた。



帰ってきたイルカが、どたばたしても気にならないほどカカシは寝入っていた。
寝入っていても無意識にイルカの気配を追っている。
イルカの気配に心地良ささえ感じてしまう。
そんなカカシをイルカが揺さぶってきた。
「カカシさん。ねえ、カカシさん」
ゆさゆさを肩を揺さぶられるが重い瞼は開きそうにない。
「聞いて、カカシさん」
声を出すのも億劫だ。
「あのねえ」
返事もしないカカシの耳元にイルカは口を寄せてきた。
ふわり、と風呂上りのイルカの匂いが漂ってくる。
「あのね、今日ね、面白いこと聞いちゃった」
寝ているカカシに構わず、イルカは耳元で囁くように話をする。
「今日ってね、十月の三十一日ってね、異国のお祭りなんだって」
カカシさん、知っていた?と訊いてきた。
そんな話を暗部の仲間もしていたような気がする。
お菓子がどうとか、お化けがどうとか、南瓜がどうとか。
暗部は、そのような情報に結構、詳しい。
独身者が多いので年間行事を仔細に把握していて、あわよくば、それに参加しようという魂胆なのだ。
参加して何をするかというと言わずもがな、独りが寂しいから大勢の中に混じって寂しさを紛らわせたいという、悲しくも儚い独身男性特有の願望がそこに存在する。
カカシとは無縁の願望だ。
今のカカシの願望といえば・・・。
こんなに疲れてなきゃ、風呂上がりのイルカを堪能して・・・。
夜から任務でなきゃ、風呂上りのイルカを可愛がり倒して・・・。
最終的にはキスしたい、という思春期の男の子らしい願望というか欲望を持っていた。
のだが、今のカカシには、それは叶わない。
全部、暗部が悪いんだ!忙しすぎて!
眠りながら魘される。



「でね」
イルカの声が低くなる。
ひそひそと内緒話でもするかのように。
「こう言うんだって」
次にイルカが言った言葉はカカシにとって大変に魅力的な言葉であった。
「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」
・・・悪戯。
悪戯したいし、悪戯されたいと夢の中でカカシは思う。
「カカシさん、お菓子ちょうだい」
出来ることなら、イルカのリクエストには応えたい。
しかし如何せん、眠すぎた。
目が開かない。
「カカシさん?」
イルカがカカシの顔を覗き込んでくるのが気配で解った。
「寝てる・・・」
ちょっと、がっかりしたようなイルカの声。
「疲れてんだなあ」
次に労わるような声。
「なら、しょうがないか・・・」
イルカが、にやりと笑ったような気がする。
「悪戯で我慢してあげる」
右の頬に、ふにゅっと何か柔らかいものが触れた。
二、三回、それに頬を押される。
そして左の頬にも同じことをされた。
「ふふふ〜」
イルカが満足そうに笑う声が耳に響く。
「おやすみなさい、カカシさん」
最後に額を撫でられて、寝ているカカシをそのままにイルカは隣の部屋に行ってしまう。
何だか、ひどく満ち足りた気分になりカカシは夜中の任務まで熟睡してしまった。



「よく寝た〜」
日付の変わる前、真っ暗な中でカカシは起き上がった。
部屋の中は暗いがカカシは夜目が利く。
隣ではイルカが丸くなって眠っていた。
すやすやと寝ているイルカを見て、カカシは微笑ましい気分になる。
自分の隣で安心して眠るイルカに愛しさが募る。
「さてと」 イルカを起こさぬようにベッドを下りて、隣の部屋
に行くとイルカが作ったであろう簡単な夕飯がテーブルの上に乗っていた。
カカシの分らしい。
夕飯を食べていなかったカカシは空腹の為か、あっという間に食べてしまう。
「美味しかった、満腹満腹〜」
食べ終わると、暗部服を身に着けていく。
脱ぎ捨てた暗部服はイルカが洗濯機の中に入れたようで、新しいのが用意してあった。
暗部の装備も装着し、準備は完了だ。
ちなみに、ここまで部屋の明かりは点けていない。
寝ているイルカに配慮していた。
「んじゃ、行ってくるからね」
寝ているイルカの瞼の上に軽く唇で触れる。
「いい子で待っていてね」
暗部の面を被るとカカシは、するりとイルカの家を抜け出して集合場所へと向かった。



集合場所へ到着すると、既に到着して暗部の仲間数人がカカシを見て、ぎょっとする。
「・・・それ、何だ?」
「・・・仮装?」
「・・・変に可愛い」
聞かれても身に覚えがないので解らない。
「って何がよ?」
首を傾げていると面を見るように言われて、面を外す。
暗部の面には・・・。
黒マジックで髭が描かれていた、右左の頬に当たる場所に三本ずつ。
更に、面を外したカカシの顔を見た暗部たちは口元を押さえて笑うのを堪えている。
「いったい、何だっての」
不機嫌そうな声を出したカカシに暗部たちは口々に言う。
「か、顔、顔にも髭が〜」
「顔にも同じのが描いてあるぞ」
「面と同じじゃないか」
とうとう、腹を抱えて笑い出した。
「カカシが顔に落書きされてる〜」
「しかも面と同じのを〜」
「三本髭だなんて可愛いけど似合わない〜」
散々な言われようだ。
「く〜っ」
犯人は誰だか判っている。
イルカだ。
ふにゅっとカカシの頬に押し付けられたのはイルカの唇でなくて、黒マジックだったのだ。
「イルカだな〜」
かん、とカカシは面を地面に叩きつけた。
「悪戯するとか言っていたから、もっとこう胸がときめくような、どきどきするような、天国まで昇れるような悪戯だと思っていたのに〜」
めちゃくちゃ悔しがっている。
「あんのカワイイ俺のイルカめ〜」
悔しがっているが怒ってはいなかった。
むしろ、どこか喜んでいるように思えてならない。
今まで笑っていた暗部たちの顔から笑みが消えた。
カカシの発言から察するに今日という日の異国のお祭りにイルカが乗っかって、お菓子をあげなかったからカカシがイルカに悪戯されたのだと容易に推測できた。
・・・所詮は恋人がいるものが世の中勝ちなのか。
ひゅるるる〜。
冷たい秋の風が十月が終わりを告げていた。




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