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干支



「ふあ〜あ」
年が明け、今年、初めての受付所での仕事の最中、五代目火影の綱手は欠伸をしていた。
「年が明けたねえ」
人が少ないのをいいことに伸びをして、また欠伸をしている。
完全に気が抜けていた。
まだ正月気分から抜け出していないのかもしれない。
受付所も正月休みを延長している者が多いのか、任務を受けている者が少なく人影もまばらだ。
「つまら〜ん」
綱手は片肘を突くと、その手の平に顎を乗せる。
「碌に人も来ないのに私がいても、しょうがないんじゃないのかい?」
明らかに綱手は正月を理由に、まだ休みたがっている。



受付所にいた中忍の面々は心の中で溜め息を吐いた。
だって、しょうがないじゃない、仕事だし、と。
その中にイルカもいた。
正月の休み明け、早々に受付の仕事が割り振られていたのである。
「火影さま」
苦笑を浮かべながらイルカは進言した。
「火影さまなのですから、いてくださらないと困ります」
受付所に火影がいることに意義があると、それとなく告げた。
「ふーん、そんなものかねえ」
「はい、お願い致します」
「分かった分かった」
ちっとも分かってない風な返事を綱手は返す。
頭の中では全く別のことを考えていた。
年末年始の休みで飲んだ酒が美味かったなあとか、なんか面白いことないかなあとか。



「でもさあ」
綱手は人けのない受付所で受付係の中忍相手に話す。
「新年なんだから、こう、ぱあーっと華やかなことないかねえ」
まだ言っている。
暇つぶしをしたくて堪らないらしかった。
「ぱあーっとしたことなら」
火影の隣に座っていたイルカが取り成す。
「確か、明日の晩に火影さま主催の新年会をされるのではないですか?」
「ああ、うん。そうだねえ」
賑やかなのが大好きな五代目火影は今年に入って間もないのに、何回目かの新年会を開いていた。
その度にイルカたちも付き合わされたりしている。
しかも朝までコースだ。
「でも今日は特に何もなくてさあ」
シズネもいないしねえと綱手は、つまらないそうな顔をする。
「夜も一人だしさあ」
側近のシズネは他の用事で留守らしい。



「あーあ」と綱手は受付所の机の上に、ぺたりと頭をくっ付けた。
「まだ正月の三が日が終わったばっかりなんだから」
もっと騒ぎたい、と綱手は、ぽつりと呟く。
綱手の頭の中は、いつまでを正月だとカウントしているだろうか。
ぼーっと受付所の中忍たちを見ていた綱手だったが、突然、ぱっと顔が輝いた。
閃いた!というような顔をしている。
中忍たちは、ものすごく嫌な予感した。
こんな時は、たいてい当たるものだ。
「そーうだ、いいこと思いついた」
綱手は口の両端を吊り上げて、にやっと笑う。
「正月らしくて受付所が華やかになる方法を」
ぱぱっと素早く印を切った綱手は中忍たちに、ある術を掛けた。
その術によって受付所の中忍たちのある、一部分は変化させられてしまっていた。



「これは・・・」
一時経って受付所を訪れたカカシは驚きに目を見開いていた。
「なんですか、いったい」
特にイルカの姿に釘付けだ。
目の焦点がイルカから動かない。
じっと、ただひたすらイルカを見つめている。
もしかしたら写輪眼が発動しイルカの姿を記憶しているかもしれなかった。
「なにって。いいだろ、これ」
綱手は自慢げに中忍たちを指差す。
「可愛くてさ、見ていてほのぼのするだろ」
受付も一風変わって華が咲いた、なんて言っている。
「可愛いも何も蟹もありませんよ」
カカシはイルカの頭でふわふわと揺れている、それに手を伸ばす。
「すっごく可愛いです!」
イルカの頭で揺れていたのは白くて長い耳。
今年の干支の兎の耳が生えていたのだった。



カカシは、もう大喜びだ。
「正月早々にイルカ先生が受付で仕事だって言うから、暇を持て余した俺も任務を受けましたが」
きらきらっと星が飛び散るような瞳でカカシは綱手を見る。
「任務を受けてよかったですよ!こんな好いことあるなんて!」
大感激している。
「あの、カカシさん?」
カカシの喜びようにイルカは少し引いていた。
「俺だけじゃなくて受付のみんなが火影さまの術で兎の耳を生やされたんですよ」
しかしカカシの目にはイルカしか映ってないようで。
それも、そのはずでカカシとイルカは人も羨む好い仲なのだ。
より親密な間柄といってもいい。



「せめて女性の受付係に兎の耳を生やしてくれたら、まだ良かったのに」とイルカは恨めしそうに言う。
幸か不幸か、その時受付所にいたのは全員、男性の中忍たちだった。
不本意に兎の耳を生やされた中忍たちは溜め息交じりに火影に抗議する。
「新年から兎耳を生やす羽目になるなんて・・・」
「ちっとも似合ってないのに」
「こんな姿を知り合いに見られたら、どうしよう」
各々、落ち込んでいる。
「いいじゃないか、偶には。今年の干支は兎なんだし」
火影は悪びれる様子はない。
むしろ楽しんでいた。
「年に一度くらい、こんなのもいいだろ」
自分の術の出来に満足している
「頭に兎の耳がある光景ってのも乙なもんだよ」



「で、火影さま」
カカシは興味深く火影に尋ねた。
「この術の効力は、いつまでなんですか」
「ああ、明日の朝には解けるかな」
「そうですか!」
再び、カカシの目がきらきらと光る。
とっても嬉しそうに。
「明日の朝までイルカ先生には兎の耳があるんですね!」
やったね!と、はっきり顔に書いてあった。
「イルカ先生!」
ものすごく期待を込めてカカシはイルカの手を握った。
「もう受付の仕事、終わりですよね!」
「あ、はい」
カカシはイルカの仕事が終わる時間に合わせて任務を終わらせてきていた。
「だったら家に帰りましょう!」
早く早く、と何故だか浮かれているカカシはイルカを急かす。



「ちょっと待ってください、カカシさん」
確かに受付の仕事が終わる時間だったが仕事が終わったからといって、すぐに帰れるものではない。
「書類を纏めたり、引継ぎをしないといけないので」
イルカが言うと傍にいた、やはり頭に兎の耳を生やし諦めたような雰囲気を漂わせた同僚が言った。
「いいよ、後はやっておくから。」
帰っていいとイルカに勧める。
「え、でも・・・」
躊躇うイルカだったがカカシが手を引っ張った。
「良かったですね、イルカ先生。後でお礼をすればいいですよ〜」
にっこりと笑ったカカシが結局、受付所からイルカを攫って行ってしまった。
攫われたイルカは、どうなるのだろうか・・・。
多分、カカシに優しくされて、めちゃくちゃ甘やかされるに違いない。
兎の耳、可愛い〜とか言われて。



兎の耳を生やして誰も可愛いと言ってくれないイルカの同僚たちは、一斉に深い深い息を吐く。
新しい年になって気分も一新されたはずなのに妙に寂しくなったのだ。
綱手だけは一人、にこにこと「新年からいいことしたな〜」と上機嫌であった。





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